MARVELOUS ACCIDENT 未知の始まり 【訂正前】

闇で歪んだ世界
退会したユーザー ?
退会したユーザー

68

公開日時: 2021年10月2日(土) 07:54
文字数:1,295


「お前の住所を教えてくれ」

 住所を教えるのはまずいんじゃないかと思いながらも、僕は秀に伝える。

「あ……えっと、から市一宝町海部角田◯◯番地◯……です」

「分かった……ありがとう。十一時十分くらいに、お前の家の前に行く。夜遅いし、俺はインターフォンは鳴らさないから、時間になったら外へ出て来てほしい」

「あ、あの……僕……」

「じゃあ、また後で会おう」

秀はそう言って、一方的に電話を切ってしまった。「僕は弱いから戦えません。なので、脱退させて下さい」と、勇気を出して、秀に言おうとしたのに。

ロッキーが怖くてつい、入団する事を決めてしまったが……。スマイル団に入る気は、少しもなかった。


明日は木曜日。戦闘後の勉強はきつい。学校は休んでしまおう。

イナズマ組に手を出すのだから、生きて帰れないかもしれない。僕は今日、死ぬのだろうか。

漫画を描く気にすらなれず、僕はベッドで眠りについた。





いつもならとっくに眠っている時間に、僕はひっそりと自室を出た。

家族を起こさない様に、足を忍ばせ、冷たい階段をそっと下りて行く。


秀との、約束の時間だ !


コートのボタンを留め、首にマフラーを巻き、手袋をつけて寒さ対策は万全だ。

 靴紐を結び、玄関を出ようとしたその時……。

 背後から、何者かに背をツンと突かれた。


「ひゃっ……」

僕は素っ頓狂な声を上げ、猫の様にビクッと飛び上がる。誰だ ? 全く気配を感じられなかった。皆、とっくに眠っているはずなのに……。

恐る恐る振り返ると、そこにはワンダの姿があった。

「ヒル……どこ行くんだ ?」

「うわっ……え ? ワンダ……まだ起きてたの ?」

「どこ行くんだ ?」

「え ? えっと……今からスマイル団に会うんだ」

僕がそう答えると、ワンダは僕の手首を掴んでこう言った。

「俺も行くぞ」

「……駄目だよ。今から僕は、危険な場所に行くんだから」

「ヒル……俺いないと死ぬ。俺、ヒル守る」

「……どうなっても知らないよ ? それでも、一緒に行きたい ?」

「……おう ! 俺、ヒルと一緒だ」

ワンダは即答だった。

ワンダを止める事は出来そうになかったので、僕は仕方なく彼女と共に外へ出た。

すると、暗闇の中、一台の自転車がアスファルトを照らしているのが目に入った。 五分前に家を出たのに、秀は既に僕を待っていたのだ。いつから、秀はここに居たのだろう。

 僕は慌てて、秀の元へ近づいて行く。

「秀さん、遅れてすみません……こんばんは」

「……ああ、こんばんは。俺が早く来すぎただけだから、あまり気にしないでくれ」

「あ……はい。……あの、妹も連れて行って良いですか ?」

僕の質問に、秀は少し考えてから口を開く。

「……悪いという事はないけど……かなり、危険だが大丈夫か ? お前はそんな場所に、妹を連れて行くのは平気なのか ?」

「あ……えっと、その……この子が、どうしてもと言うので、仕方なく……」

僕の言葉に秀はため息をつくと、ワンダに尋ねた。

「俺達に着いて来るのは勝手だが、最悪の場合は命を落とす事になる……。お前に、その覚悟はあるか ?」

「おう ! 俺、死んでもヒルと居る」

ワンダは一切躊躇う事なく、真剣な眼差しでそういった。 なので、秀はワンダを連れて行く事を渋々と許可した。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート