「うふふっ……。あの子は天邪鬼だから、あんな態度を取るだけだよ。飛華流の帰りを、素直に喜ばないからね」
ママは、面白そうに笑った。
真誠以外にも、こちらを覗く顔がもう一つあった。一階の大きな窓ガラスから、鬼の様な形相をしたパパが顔を覗かせている。その恐ろしい表情を、パパは蓮に向けているみたいだ。それに気づいていた蓮も、反応に困っている様だ。
ガラガラガラ……ドンッ !
パパは、勢いよく窓を開く。そして、怒り口調で蓮に言った。
「お前らなー、もう頼むから飛華流と関わらないでくれ。この子は今、大事な時期にいるんだ。今、頑張るか頑張らないかで、この子の人生は大きく変わってしまう。飛華流には、お前達と馬鹿騒ぎしている暇はない !」
「す、すみませんでした……永戸には、俺の方から厳しく叱っておきます」
蓮は即座に、パパにも深々と頭を下げた。
しかし、それではパパの怒りは収まらない。
「お前もだっ ! もう早く帰ってくれ。そして、二度と飛華流に近づくな ! 他の連中にも言っとけ」
「………………」
パパに散々言われ、蓮は黙り込んでしまった。その様子を見ていたママは、パパを慌てて止めようとする。
「ちょ、ちょっと……パパ、言い過ぎだって。この子達は、飛華流の事を良く思ってくれているみたいだから、それで良いでしょ ?」
「いいや、こんな道を外れた連中と、一緒に居るべきじゃない。……お前らも、奇抜な髪型して中途半端に生きないで、自分の将来を考えたらどうなんだ。早く立ち去れ !」
「……俺達は居場所が無いなりに、自分達の生き方を見つけました。常識に囚われない、自分らしい究極の生き方です。……それでは」
蓮はそれだけ言い放ち、足早に去って行った。
「……ふん、そんなのは怠けたい言い訳だ。飛華流……俺は、前から言ってただろ ? あの連中とは、関わらない方が良いって……」
僕は黙って、首を縦に振る。確かに、パパの言う事は間違ってはいない。イナズマ組と関わる事がなければ、僕はこんな目に遭わなかっただろうからな。
僕がイナズマ組のメンバーになっただなんて、口が裂けても言えやしない。
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