MARVELOUS ACCIDENT 未知の始まり 【訂正前】

闇で歪んだ世界
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49

公開日時: 2021年9月21日(火) 06:46
文字数:1,135



菊谷目線



今からおよそ二年前の、雪降る夜……。


 俺はいつもの様に、相棒の蓮と町で盗みを犯していた。


 あれは、食料品の大量に入った買い物カゴを手に、二人でアジトへ向かっていた時の事だった。


 街灯の少ない奥の細道から、かなり細い人影が、一人でゆらゆらと揺れているのが見えた。


「なあ、蓮……あれは何だろうなー」

「さあな……酔っ払いとかだと思うけど。こっちに近づいて来る」

 蓮の言う通り、あれはただの飲んだくれかもしれない。

 けれど、あの影……人間にしては異様な細さだ。まるで、棒人間の様に、薄っぺらいシルエットをしている。人だとしたら、生きている事が不思議なくらいだ。

 影はだいぶはっきりとしてきて、中学生くらいの少年だと分かる。片目を隠し、黒髪のあどけない顔をした少年。彼の手足は木の枝の様に細く、骸骨が歩いているみたいだった。


「ちょっと……君、大丈夫か ?」

 きっと、何かあったに違いない。俺は、咄嗟に少年の元へ駆け寄り、声をかけた。

 しかし、少年は生気のない顔をしていて、俺と一切、視線が合わない。彼の着ている服は、何故か血が染み付いていて、ところどころに穴が空いている。

「……お、おい。俺達の事、見えてるか ?」

「…………」

 蓮も少年の異様さに気づき、彼に呼びかけるが、彼は一言も返してこない。この子、本当に大丈夫だろうか。


 バタンッ…… !


 少年はフラフラと蹌踉めきながら、冷え切ったアスファルトへ倒れてしまった。


「おい、大丈夫か……しっかりしろ。……菊谷、この子……どうする ?」

「んん……とりあえず、アジトまで運んで様子を見ようか」

 俺は少年をそっと抱きかかえ、蓮とともに走り出す。成長期の男子一人を抱えているにも関わらず、その重みは全く感じられない。


「こ、この子……軽すぎるぞ。ちゃんと、ご飯を食べているのか ?」

「……もしかしたら、食べ物を口にできる状況ではなかったのかもしれないな。何か食べさせてやらないと、死んでしまうかもしれない……急ごう」

 蓮は心配そうに少年を覗き込むと、足を早めた。



 

枯れ木の茂、森の中……。


 俺の暮らす洞窟の中へ、少年を運び入れた。そして、焚き火の側で少年を寝かし、上から落ち葉の山を被せてやった。これで、冷え切った体も温まるだろう。

 少し経ってから陽翔が中へ入って来て、死んだ様な顔の少年を見るなりこう言った。

「菊谷さーん、蓮さーん、このガリガリ骸骨野郎は何なんすかー ? 薄気味悪いですよー」

「陽翔……お前は、このイナズマ組のメンバーなんだぞ ? ……だから、人を思いやる気持ちを持たなければいけない。俺は、いつもそう言ってるじゃないか」

 俺は陽翔に軽く注意をし、静かに眠る少年の様子を見ていた。その間に、陽翔は他のメンバー達に「変な奴が来たぞ」と騒いで、彼らをここへ連れて来た。

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