ドドドッ……ガッシャーーーーン !
何だ何だ ? 何が起きた ?
突然聞こえた大きな音に、僕はビクッと飛び跳ねた。
はあ……びっくりした。おかげで、滝の様に流れていた涙が、ピタッと止まった。何かが、落下した様な物音だったが、どうなっているのだろう。
ガサガサ……カタン !
クローゼットの中で、生き物が動く様な、そんな音がする。誰か居るのだろうか。 多分、ねずみか何かだよな。それとも、泥棒や殺人犯 ?
僕は足を忍ばせ、恐る恐るクローゼットへ近づく。そして、ゆっくりとクローゼットを開けた。その中に居たのは、虫や小動物なんかではなかった。なんと、そこには丸い角の様なものを生やした、小柄な少女の姿があった。
少女は、僕の大事なゲームソフトの山に乗っかっている。そこから、ルビーみたいな輝きのある綺麗な瞳を僕に向けていた。
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーー !」
僕はあまりの恐怖に絶叫し、自室から逃げ出した。足を踏み外しそうになりながら、僕は階段を駆け下りて行く。
「ママー、パパー !」
「ちょっと、静かにしなさい。今、何時だと思ってるの。近所迷惑よ !」
大きな声で叫ぶ僕を、上品な顔を歪ませたママが注意した。
「ママ、あのね……僕の部屋に知らない女の子が居るんだ」
涙目になりながら必死で訴える僕を見て、ママは垂れた目を丸くさせた。
「え、それって……本当に ?」
僕が頷くと、ママは青ざめた顔をして、リビングルームまで走っていった。僕も、その後についていく。
「パパー ! どうしよう。飛華流の部屋に、誰か居るらしいの……ねえ、一緒に来て !」
「えーーっ ! ……うっそー ! まじでー ?」
ママの言葉で、パパは飲んでいたコーヒーをテーブルへ置いた。うるさい顔をこちらに向け、パパは再び口を開く。
「……でも、どうやって飛華流の部屋に侵入して来たのー ?」
「そんな事、ママに聞かれても分かる訳ないでしょー ? ほら、早く来て !」
ママは涙目になりながら、パパの服の袖を引っ張る。そうしたら、パパはソファーから腰を上げ、ママと共にこちらへ歩いてきた。
ゴロゴロと転がり、ゲームをしていた真誠も口をぽかんと開けて、こちらを見ている。
突然の出来事に、皆かなり混乱している。そうなるのも、当然だ。普通ではあり得ない事が、起きているのだから……。
「きゃーー ! ひ、飛華流……後ろー !」
ママは、怯えた目で僕の後ろを見ている。とても嫌な予感がするが、僕はそっと振り返った。
すると、僕の目の前に、さっきの少女が立って居た。い、いつの間にっ ?
「うわーーーー。ママー !」
僕は泣きながら、ママに飛びついた。
「うおっ……二人共、落ち着いて。ほら、小さな女の子だよ」
少女に驚きつつも平静を装い、パパは僕らにそう言った。なので、僕らはゆっくりと少女に目を向ける。
艶のある桜色の長い髪に、透き通った白い肌。お人形の様に童顔で、整った顔立ちをしていて……尻には独特な尻尾の様なアクセサリーを付けていた。アニメの世界から出てきた様な、どこか異質な雰囲気を醸し出す、容姿端麗な美少女。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!