MARVELOUS ACCIDENT 未知の始まり 【訂正前】

闇で歪んだ世界
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公開日時: 2021年10月22日(金) 10:14
文字数:1,392


死神か何か知らないけれど、イナズマ組を殺してくれ。僕が彼らに殺されるよりは、ずっとましだ。こんな事を考えてしまう僕は、最低な人間だろうか。


僕はワンダの手を引き、家へ急いだ。歩く度に、体のいたる所が激しく痛む。今日は、ゲームでもしてゆっくり休もう。

住宅の密集した細い川沿いの道を、一宝中学校の生徒達が自転車で通り過ぎていく。狂った永戸の姿は、どこにもない。これなら、無事に帰宅できそうだ。


赤い屋根の小さな家が姿を現し、徐々に近づいてくる。ママや真誠に、どこへ行っていたかを聞かれたら、なんて答えよう。本当の事を話す訳にはいかないしな……。



「フッハハハハハハハー。安心しな。壊れるまで、僕が遊んであげるからねー」

こ、この狂った気味の悪い声は、エモに取り憑かれた時の永戸の声だ。

僕らの歩く道の先で、彼は男子生徒の首を掴んでいた。血を吸った自転車が、道路に転がっている。

僕らは近くの電柱に隠れ、様子を伺う。よりによって、どうして僕の通学路に現れるんだよ。


「お、お願いします……。何でもしますから、命だけは助けて下さい」

泣きながら必死に命乞いをする、食べカスの様なほくろをつけた少年の顔に、僕はとても見覚えがあった。あいつは、佐鳥黒也じゃないか。

いよいよ、黒也にも呪いがかかるのか。僕はこの時を、強く待ち望んでいた。さあ、僕の目の前から消えてもらおう。散々、僕を虐めたお前は死刑だ。

体中から血を流す黒也を見ると、顔から笑みが溢れてくる。これで、邪魔者が消える。


黒也の苦しむ姿を密かに笑っていると、黒也と目が合ってしまった。

「あっ、飛華流 ? 飛華流……助けてくれ」

黒也は目に涙を浮かべ、僕にそう頼んでくる。こいつの頭は、どうかしている。僕の心に一生消えない傷を刻んでおいて、助けを求めてくるだなんて……。

僕は笑顔を絶やさず、惨めな黒也を黙って見ていた。嫌いな人間を命がけで助けるほど、僕は優しい人間ではない。僕に危害を加える人間は、死んで当然だ。


「ヒル、あいつ知り合いか ? 助けないのか ?」

「うん、僕の同級生だよ。でも、僕は黒也君を助けたくない。……だって、黒也君は僕を虐めるから。僕は、死んだ方が楽だと思うくらい、苦しかった。もう、あんな思いはしたくない。もし、ここで黒也君を助けたら、僕はずっと虐められる。……だから、黒也君にはここで死んでほしい」

僕はわざと黒也にも聞こえるように、声を振り絞る。そして、彼の怯えた瞳から目を離さなかった。


「ひ、飛華流……俺が悪かった。いつも、本当にごめんな。もう、二度とお前を虐めたりしないから、許してくれ。頼む、助けてくれ」

「い、嫌だよ。僕は君を永遠に許さない。……危険を冒してまで、助けるメリットもないからね」

僕は、黒也を救う事をきっぱりと拒否する。どうせ、こいつはもう直ぐ死ぬ。だから、最後くらい本音をぶつけよう。


「俺が死んだって、お前は他の奴に虐められるぞ。……ほら、勢太だっているからな。もし、俺を助けてくれるなら、俺はその恩を必ず返そう。お前を虐める奴がいたら注意して、完全にやめさせる。……だから、頼む」

黒也の表情から、いつもの悪どさは全く感じられない。小学生の純粋だった頃の彼に、戻っている様だった。

そうだ……黒也は、昔は僕に優しかった。僕が困っていたら助けてくれる、とても良い奴だった。それなのに彼はどうして、こんなに変わってしまったんだろう。


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