ツリーハウス全体は炎に包まれ、激しく燃え盛る。まるで、大きな棺だ。なんせ、その中で人が焼かれているからな。
生き残ったメンバーは全焼するアジトを見て、絶望の表情を露わにしていた。あまりにも悲惨な光景に、僕は意識を失いそうだった。
イナズマ組はパニック状態なので、まだ僕の存在に気づいていない。でも、見つかるのは時間の問題だ。
ここで、彼らに見つかれば、僕が裏切った事がバレてしまう。そうなれば、一瞬であの世行きだ。
僕はワンダの手を取り、咄嗟に走り出す。
白煙が僕らを包み込み、ほとんど何も見えやしない。煙をもろに吸ってしまい、僕は息苦しさに襲われた。
「ゴホゴホゴホッ、ワ、ワンダ……息を止めて !」
「うわっ……コンコンッ、これクッセーぞ」
ワンダは可愛らしい咳をして、自分の鼻を摘む。僕も息を止め、真っ白な空間を全力で駆け抜ける。
すると、視界が開け、大きな茂みを発見した。なので、僕らはそこに身を潜めた。
「おい……ヒル、何してるんだぞ」
「ワンダ……今は、僕の言う事を聞いてくれ。しばらくの間、ここに隠れて様子を見よう」
「でも……戦わないと駄目だぞ」
「僕に死んでほしくないなら、生きていてほしいなら……大人しく僕に協力してよ。僕の為に……」
立ち上がろうとするワンダを抑え、僕は必死に説得する。
イナズマ組かスマイル団のどちらかが全滅するまでここに隠れ、生き残った方の味方につくしかない。今の僕には、それくらいしか思いつかない。
白煙の中から、大勢の人影が現れる。
スマイル団とイナズマ組が、ぞろぞろとこちらへ避難してきた。それに、その後ろから、炎の塊が近づいてくる。
あれは何だ ? 炎の中で、大きな何かが燃えている。それをよく見ると、手や足がある事が確認できた。
に、人間が燃えている ?
「あーーーーーーっ ! 助けてっ……助けてくれーーーーーー」
火だるまの男がうめき声を上げながら、ふらふらとイナズマ組に接近する。そして、そのまま力尽きて地面に倒れてしまった。
「……おい、死ぬな……死ぬなよ ! 川で水くんで来てやるから……」
永戸は黒く焦げた男の側へより、彼に呼びかける。
「永戸……こいつは、もう手遅れだ」
永戸の頭に優しく手を置き、蓮はそう言った。
仲間の黒く焦げた遺体を見て、永戸は目を潤わせていた。こんな純粋な人が、世間で恐れられている凶悪殺人犯だなんて……何かがおかしい。
「よし、皆……行くぞ。一致団結 !」
「一致団結 !」
秀の掛け声に続き、スマイル団は声を上げ、動き始める。
「一番蹴るっ !」
「シーッ……ワンダ、静かにして」
ワンダもつられて、茂みの中で声を上げる。僕は慌てて、ワンダの口を塞いだ。
ワンダは、「一致団結」を理解せず、「一番蹴る」と、間違った言葉を発している。それは、可愛らしくはあるが、今はただの迷惑でしかない。それで彼らに見つかったら、僕はワンダを恨むだろう。
「おい、あいつら……誰なんだ ?」
「……もしかして、あいつらが俺達を襲って来たのか ?」
「でも……あんなガキの集団に、そんな事が出来るのかよ」
現状を理解していない彼らに、スマイル団が突撃する。
「俺らにナイフを向けて走って来るって事は、敵に決まってるじゃーねーか。お前ら、ボサッとしてねーで、さっさとあのガキ共を殺せや !」
「はい、陽翔さん……」
「よし、行くか……ぶっ殺してやる !」
陽翔に指示をされ、彼らはスマイル団に立ち向かう。
スマイル団は、麗崇から受け取った魔法の粉を彼らにふりかけた。
「んん、何だ ? なんか、眠くなって……スーピー、スーピー……」
粉をふりかけられた男は数秒も経たないうちに眠りにつき、その場に倒れた。
「これは、お父さんの敵よ ! 死ねーー !」
眠りについた男を縄で拘束し、小柄な女子はナイフで彼の心臓を一突きした。この様に、女子中学生でも簡単に、彼らを殺す事が出来る様だ。
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