死体をバラバラにしていたメンバー達の視線が、一斉にこちらに集中する。
「陽翔さん……あのガキに見られちまいましたが……どうしてやりましょうか ?」
「勿論、いつも通りに殺せ殺せー。それで、今日の晩飯にでもしてやろうじゃーねーのー。クソガキよー、俺様の胃袋に入れる事、光栄に思えやー」
陽翔は躊躇う事なく、紅に染まったハンマーを僕へ振り翳す。それを見た愛羅《てぃあら》も、申し訳なさそうに、こちらへ血を吸ったカッターナイフを向けた。おいおい、何の冗談だよ。勘弁してくれ。
「飛華流君、ごめんね。愛羅《てぃあら》ちゃんも本当は、こんな事をしたくないんだけど……。これも、永戸君の為なの」
「……よし、あいつを殺せー」
愛羅《てぃあら》と共にメンバーらは武器を手に、僕に襲いかかってくる。どうしよう。このままでは、殺されてしまう。
逃げようと引き返しても、永戸が道を塞いでいるせいで外へ出られない。早くしないと、彼らに粉々にされる。
「ご、ごめんなさい……許して下さい。お願いします」
「……せっかく、お前とは遊ぶ仲になったのに…………」
泣きながら謝る僕に、永戸は悲しみと怒りの混じった様な複雑な表情を向ける。
「どうしてだ……どうして見た。ふざけるな……ふざけるなよ。ウッ……ウウウッ……」
永戸は嘆きながら苦しそうにその場にしゃがみ込み、うめき声を上げる。その様子はこの前、永戸がレッドアイへと変貌した時と、よく似ていた。
この状況で永戸が気狂ってしまったら、僕がこの森から生きて帰れる可能性は絶望的になる。
武器を振りかざしたメンバーらが、僕のすぐ側まで迫ってきていた。このまま大人しく殺され、楽になるという選択肢もある。それでも良いんじゃないか ? でもーーーーーーっ !
死にたいという願望はあるけれど、体は自分の命を守ろうとする。勝手に足が動き、気づけば僕は走り出していた。縮こまる永戸を跨ぎ、僕は階段を駆け上がって行く。
「おらー、逃さねーぞー」
「大人しく、俺らの腹に入ってもらうぜー」
彼らの声は、徐々に近づいてくる。まずいな。 このままでは、彼らに捕まってしまうぞ。僕は人一倍、足が遅いんだ。
外へ出て僕なりに全力疾走するが、彼らとの距離はどんどん短くなる。
この辺り一帯は枯れ木が生い茂っていて、どこも同じ様な景色が広がっている。だから、帰る方向も分からない。
けれど、今はただ彼らから逃げ切る事だけを考えろ。急な下り坂に、足が追いつかなくなりそうだが、僕は止まる事なく走り続ける。
すると、足を滑らせ、僕は坂を転がり落ちてしまう。その勢いで、大きな茂みに突っ込み、身体中が土だらけだ。
「……おい、あいつどこに行った ?」
「きっと、まだ近くに居るはずだ……探すぞ ! おーい兄ちゃんよー……どこに居るんだー ? この辺りに居るのは、分かってるんだーぜー ? どうせお前は死ぬ運命なんだから、早く出て来いやー」
陽翔はそう言って、メンバーと共に僕を探し始める。ここからは、僕の姿は見えないようだ。かなり、彼らは僕の近くに居るが、今の所は見つかる気配はない。
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