MARVELOUS ACCIDENT 未知の始まり 【訂正前】

闇で歪んだ世界
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公開日時: 2021年11月6日(土) 08:21
文字数:1,559


「な、菜月……どうしてここに居るんだ」

永戸は菜月を見ると、普段の正常な姿へと戻った。赤い瞳は黒くなり、狂っていた表情はクールになる。そんな彼に安心した様子で、愛羅てぃあらは言う。

「最近、永戸君って菜月ちゃんに全く会ってないよね ? だから、会いたいかなと思って、ここに連れてきたの。永戸君は菜月ちゃんの事が大好きだから、菜月ちゃんなら永戸君を戻せると思ったの。上手くいって良かったよ」

「はっ ? 何でお前が、それを知ってんだ。お前と菜月は、関わった事なんてないだろ ?」

愛羅てぃあらちゃんはよく、永戸君をこっそりと見守ってるからね。その時に、永戸君の彼女である菜月ちゃんの家も知ったんだよ」

つまり、愛羅てぃあらは永戸をストーカーしていたのか。彼女が、永戸の事を異常に好きなのは伝わってくるしな……。


「菜月……お前、どうして俺に寄ってこなくなった。俺達って……その、恋人同士じゃねーのかよ」

「やめて、菜月ちゃんに近づかないでっ !」

近寄る永戸の頬に、菜月は勢いよくビンタをした。それが、よほどショックだったのか、永戸は黙ったまま俯いてしまう。そんな彼に、菜月は容赦なかった。

「あんた、レッドアイだったんでしょ ? 菜月ちゃん、人殺しなんて怖いし嫌いだから、関わりたくないもん」

「な、菜月……違うんだ。お前は俺を分かってない。俺は別に、好きで人を殺してねーし。俺の中には悪魔が潜んでて……」

「やめてよね。犯罪者の言葉なんて、聞きたくないよ。そもそも、菜月ちゃんは最初から、あんたなんか好きじゃなかったんだからね」

永戸の話を遮り、菜月はそう言った。菜月の肩を揺さぶり、永戸は彼女に必死に問う。

「どうしてだ……どうしてなんだ。お前は、俺に好きだとか愛してるとか、言ってくれたじゃねーか。俺と結婚したいって、言ってたじゃねーか。あの言葉も笑顔も、全部嘘だったのかよ」

「うふっ、当たり前でしょ。まさか、本気にしてたの ? こんなに可愛い菜月ちゃんが、あんたみたいな変人を好きになる訳ないでしょ ? 本当にお馬鹿さんだね。そんな汚い手で、菜月ちゃんに触らないでよね」

菜月は永戸の手を払いのけ、再び口を開く。

「菜月ちゃんがあんたと付き合ってあげてたのは、あんたを利用する為だけだからね。あんたの力が強いって事は、中学校でも有名な話だった。あんたの恋人になれば、いつでも守ってもらえる。それに、何でもしてくれるんだろうなって思ってね。屋上に毎日足を運んで、可愛い笑顔で演奏を褒めてあげたら、あんたは簡単に菜月ちゃんに恋をした。笑っちゃうほど、楽勝だったよ。男の子って、ちょろいよね」


「何の冗談だ ? そんなはずねーし。だって、お前は他の男より、俺を選んだじゃねーか」

「だから、あんたはただの使える道具だったんだよ。菜月ちゃんには、ちゃんと自慢のイケメンな彼氏がいるんだから。あんたは、菜月ちゃんの欲しがる物は全てくれてたから、レッドアイじゃなかったら、今でも使ってあげてたんだけどね」

そんな、衝撃的な発言をする菜月を睨みつけ、愛羅てぃあらは彼女に殴りかかった。愛羅てぃあらの拳が、菜月の丸みを帯びた頬にめり込む。

「お前、いい加減にしなよ。永戸君を泣かせるなー」

「あんた、菜月ちゃんに何するのよ。次もし殴ったら、おまわりさんに言いつけてやるんだからね」


「永戸君はね、お前の事が大好きなの。だから、いろんな店で物を盗んでは、お前にプレゼントしてたの。お前の喜ぶ顔が見たくて、永戸君は必死に頑張ってたんだよ。……それなのに、お前は永戸君の思いを踏みにじった。ああ……私だったら、永戸君に一途に尽くせるし、命を懸けて守ってあげられたのにな。……私はね、お前が憎いの。永戸君を悲しませたから、絶対に許さないー」

愛羅てぃあらはガラリと口調を変え、菜月を殴り続けた。その一撃一撃に、彼女の強い怒りが込められている様に感じた。

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