「奴らのアジトへ着いたらまず、俺と麗崇がライターを使って、アジトを燃やす。そうすれば、多くの奴らが焼け死ぬだろう。……しかし、それで全員を殺すのは不可能だ。きっと、火から逃れて外へ出て来る奴らもいるだろうからな。そいつらは、力に自信のあるメンバーで始末する」
秀の言っている事があまりにも過激すぎて、頭の理解が追いつかない。つまり、彼らを焼き殺し、生き残りは撲殺するって事だろ ? それは、あまりにも惨すぎる。
「生き残った奴らが多かった場合……力に自信のない者達も、戦わなければならなくなる。……正直、その可能性はかなり高いだろうさ。そこで、俺はそんなピンチを救う、特別なアイテムを入手した。俺は、どこまでも仲間思いで優しい男だ……そうだろ ?」
麗崇はポケットから、七色に光る謎の粉の入った小さな袋を取り出し、それを皆に見せる。
「お前ら、これが何だか分かるか ? ……聞いて驚くなよ。これはな……なんと、魔女から貰った魔法の粉だ」
麗崇の言葉で、メンバーはザワザワと騒ぎ出す。それは、いきなり魔女だなんて言われたら、驚くのも無理はない。
魔女って言ったら……エミナーだよな。恐らく、彼女以外にそんな特殊な人物は居ないだろう。
「この、魔法の粉を奴らにふりかけると、あら不思議……奴らはぐっすりと眠ってしまうではないかっ ! ……そう、これは魔女の作った眠りの粉だ。これを使えば、相手は眠ってしまうから、こちらへ攻撃してこない。その隙に、殺して仕舞えばこっちの勝ち……と言う訳さ。……まあ、俺は魔法なんかに頼らずとも、勝利を掴み取れるがな」
「魔法 ? 魔女 ? そんな、非科学的な物が、ある訳ないだろ。……麗崇、こんな時に冗談はよしてくれ。……良いか、これはただの眠気を誘う粉だ。これで奴らを眠らせ、そのまま殺してくれ。それでも怖い奴は、縄でしっかりと拘束してから、処分しても良いからな。後でこの粉が欲しい奴は、麗崇から貰ってくれ。少しずつ配るからな」
秀は、麗崇の言葉を全く信じず、皆にそう伝えた。それを聞いた麗崇は、真剣な顔で言った。
「なあ、秀……この正直者の俺が、嘘をつく訳がないだろう ? これは、本当に魔女から貰った、魔法の粉なんだ。……まあ、正確に言えば、魔女から買い取ったんだが……」
「……麗崇、落ち着くんだ。良いか……この世に、魔法なんてものはないし、魔女なんて存在しないんだ」
「そっちこそ、よく聞いてくれ。俺は、イナズマ組をどう殺そうかと悩んでいる最中に、ある夢を見たんだ。洋風でオシャレな屋敷の中で、ショートカットの美女が俺の相談を受けてくれると言ったのさ。彼女の名は、エミナー。エミナーは、自分を魔女だと名乗っていた。俺も、初めは信じられないでいたさ……。でも、紅茶の入ったマグカップが俺の元へ飛んできた時から、少しずつ信じ始めた……」
「……それは、お前の見た夢の話だろ ? 現実じゃない。もう、この話は終わりだ」
呆れる秀に、麗崇は続けてこう言った。
「……最後まで、俺の話を聞いてくれよ。……それで、俺はレッドアイやイナズマ組の事を、エミナーに説明した。そいつらを、殺したいという事もな。そうしたらエミナーは、この眠りの粉を、俺に勧めてきたのさ。誰でも、簡単に人の命を奪える……なんせ、相手を眠らせる事が出来るからな。……まあ、少々と高額だったが、俺はこの粉を購入した。そして……目覚めると、枕元には購入した眠りの粉があり、しっかりとその分の代金は消えていたって訳だ。だから、あれは夢ではあったが、現実でもあったのさ」
麗崇も、エミナーに夢の中で会っていたんだな。
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