サングラスをかけた金髪の男が、タバコを咥えながらブランコにゆらゆらと揺られていた。な、何だこの人……イナズマ組よりも、もっと本格的なヤンキーらしい、怖いオーラを放っている。
「おい、聞いてやがるか ? てめーに話してんだぞ……この、ひわひわ野郎 !」
「あっ……」
サングラス男に怯んで、僕は上手く声が出せない。
「ロッキー、そんな言い方をするな。……ごめんなさい。こいつの事は、気にしなくて大丈夫ですから」
すると、子犬の様な顔の少年は、サングラス男に注意をし、申し訳なさそうに僕に謝る。この二人が、真誠をレッドアイから救ってくれたのか。僕の勝手な予想だけど、サングラス男が活躍したのだと思う。だって、どう見たって、この犬顔君にそんな力はないからな。
それにしても、あのレッドアイに立ち向かうなんて、只者ではなさそうだ。彼らは何者なんだ ?
「弟さんを襲ったレッドアイが許せないとは思いますが、どうか安心して下さい。レッドアイは、僕らスマイル団が必ず殺しますから」
「……え、えっと……何それ」
犬顔君の話が理解出来ず、僕は思わずそう言った。意味が分からない。スマイル団って何だ ? レッドアイを殺すって、正気なのか ?
「……ああ、すみません。いきなり、スマイル団なんて言われても、よく分からないですよね。じゃあ、簡単に説明します。……警察はレッドアイをとても恐れていて、なかなか動いてはくれません。まあ、レッドアイにより、数多くの警察官が犠牲になっているので、無理もないですが……。そこで、その代わりにあいつを処分する団体の事を、スマイル団と呼ぶんです」
なるほど。そんな、命知らずな人達がいるなんて驚きだよ。秀の説明で納得はしたが、よくそこまで出来るなと疑問に思う。どう考えても、かなり危険な行為だ。
僕が首を頷かせると、犬顔君は再び口を開いた。
「スマイル団に所属しているメンバーは皆、レッドアイにより大切な人を亡くした被害者です。そこの、ブランコに乗っている人を除いては……。今は、俺とこいつだけですが、メンバーは他にも数人います。……なので、レッドアイは僕らに任せて下さい」
犬顔君は、僕に真剣な眼差しを向ける。スマイル団ってのは、レッドアイに殺意を持った集団なんだな。それは、よく理解した。
「俺らは日々、どうすればレッドアイに勝てるのかを研究しています。そんな中で、ついにレッドアイの正体が判明したんですよ」
犬顔君は嬉しそうに、僕に一枚の写真を見せてきた。そこには、死体の前で立ち尽くす、三島永戸の姿が写っていた。
「レッドアイの正体は、イナズマ組の三島永戸。これは、写真ですが……それを証明する、決定的な動画もあるんです。それは近々、世の中に広まるでしょう。イナズマ組が、極悪犯罪者の存在を隠している。……と言う事は、奴らは皆、僕らの敵です。なので、僕らはイナズマ組を殺します」
「あ……えっと、頑張って下さい……」
懸命に語る犬顔君に、僕はそんな事しか言えなかった。だって、僕もイナズマ組のメンバーだから、この人達に命を狙われるんだ。
まだ、僕がイナズマ組である事は、彼らに気づかれていない。けれど、知られたら終わりだ。
イナズマ組になんて、入るんじゃなかった。
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