夕食後、家族揃って仲良くテレビの前でゴロゴロとしていた。
僕らは今、大人気の連続殺人ドラマを見ている。昔はこんな危険な出来事は、フィクションの世界でしか起こらないと思っていた。
だが、いろんなイカれた人達と出会い、そうでもないと知らされた。寧ろ、殺人は日常的なものだとさえ感じる。本当に、物騒な世の中だな。
クッキーやチョコなどを口へ含みながらドラマを見ること、およそ一時間。物語が終わり、退屈なニュースが始まる。
「真誠、ゲームの続きをしよっか」
「うん、次は負けねーぞ !」
真誠と共に、リビングルームから出ようとしたその時……。
「ついに、レッドアイの正体が明らかとなりました。名口市の男子中学生が撮影した動画に、その姿がはっきりと映っています。それでは、ご覧下さい」
女性ニュースキャスターの言葉に、僕は足を止める。そして、テレビへ振り返った。そこには、見慣れた道に、気狂った永戸の姿が映っていた。ここって、僕の通学路じゃないか。怖いな。
空は曇ってはいたが辺りは明るかったので、永戸の姿ははっきりと分かる。
モザイクがかけられているが、永戸の足元には死体が転がっている。死体処理が、イナズマ組のメンバーによって、されていなかったんだ。メンバー全員でも、永戸は手に負えなかった様だ。
目を赤々と光らせ、不気味な笑みを浮かべる永戸が、正常に戻る所を動画は捉えていた。これで、永戸の素顔が、世間に明かされてしまったのだ。
動画の撮影者は、恐らく秀だろう。この事は近々、世間に広がると秀は言ってたからな。
皆はテレビを見て、青ざめた顔をする。ワンダを除いては。
ママは両手で口を覆い、声を上げる。
「……え、これって……永戸君じゃん !」
「あいつ……ベランダから入って来た奴だ」
真誠は、画面の中の永戸を睨みつける。
「え……ショックなんだけど。あの子、飛華流と仲良くしてくれていたから、良い子だと思ってたのに……」
「いや、見た目からして悪人だろ。どうせ、飛華流を油断させて、後で殺す気だったに違いないなー」
違う違う !そうじゃない。僕は、真誠の言葉を聞き、事実を説明したくなる。
確かに、永戸は気難しくて、かなりのクセ者だけど、根は優しい人なんだ。僕が虐められていた時も助けてくれたし……それに、僕の事を何かと気にかけてくれているから。
永戸が気狂ってしまうのは何故なのか、僕には全く分からないけれど……。きっと、何か原因があるはずなんだ。きっと、永戸だって好きで暴れてなんかいない。
「うっわー……マジで ? ……だから、俺はあれ程、あいつとは関わるなって言ってたのに……。飛華流は進路を妨害されるし、真誠は殺されかけるし……本当に、碌な事にならないじゃないか。ほら、俺の言った通りになった」
パパの言っている事は正しい。だから、僕は何も言い返せなかった。
「……そもそも、ママがあいつと飛華流が仲良くする事を許しちゃったから……それで、俺の警告を無視したから、こんな事になったんだ」
「……え、どうして私が悪者扱いされないといけないの ? ……でも、永戸君も他のイナズマ組の子も、とても良い子そうだったよ」
「だから、ママがそんな事を言っているから、子供達が危険な目に遭ったんだろ ?」
「……は ? そんな事を言うなら、パパが子供達を見張っていたら良かったんじゃないの ?」
ママとパパは、口喧嘩を始めてしまう。聞くに耐えない。もう、いい加減にしてほしい。
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