「飛華流さんに、夢製造機をお渡しします。こちらの装置を頭に付けて頂き、シナリオを考えて下さい。そうする事で、夢を作る事が出来ます」
ヘルメットの様な謎の道具を、僕はエミナーから受け取った。本当にこんな物で、僕の頭の中の世界を読み取る事が出来るのかな。
「……分かりました。それで、夢を作り終えたら、どうすれば良いですか ?」
「夢の完成が確認出来ましたら、こちらで勝手に頂き、お客様の元へ届けますのでご安心下さい。……それと、お客様の声を脳内に送りますので、そちらをよく聞いて、仕事に取り組んで下さい」
エミナーの説明を聞き、僕は驚いた。今の時代、そんな事が実現可能なのか。いや、魔女にだから出来る事なのだろうな。
「……えっと、お客様の声って……何ですか ?」
「どんな夢を希望するのかという詳しい依頼内容や、夢を体験しての感想等、お客様の率直な思いが、ダイレクトに貴方に聞こえますよと言う事です」
なんだか、それって怖いな。夢を気に入ってもらえないと、文句を言われる可能性があるだろうし。
「……それでは、間も無く朝がやって来ますので、私はここで失礼します。本日から、お仕事を宜しくお願いしますね。さようなら」
エミナーがそう言い終えると、僕は布団の中で目を覚ました。ゆ、夢か……そうだきっと、さっきのは夢に違いない。
まさか、呪いの代金で三十万円も請求されるはずがない。
しかし、枕元に目をやると、あの謎の道具がしっかりと置かれていた。夢だけど、現実だったみたいだ。
「僕は毎日、とても辛い日々を過ごしています。だから、夢の中でくらい、自分の好きな場所へ行きたいです。僕に、宇宙旅行へ行く夢を見せて下さい。宇宙人にも会いたいです」
ボーッと夢製造機を眺めていると、若い少年の声が脳内に流れて来た。うっわ、びっくりした。突然、知らない人の声が聞こえて来るって、かなりホラーだな。この声の主が、どうやら最初の依頼人のようだ。
初めての仕事は不安だらけだけど、さっそく頑張るか。装置を頭に付け、少年が宇宙旅行へ行くシナリオを僕は考え始める。
七色に輝く宇宙船に一人で乗り込んだ少年は、青い地球から飛び出した。星の海へと飛び込み、存分に無数の光を眺め、宇宙を満喫する。
地球から遠ざかってしばらくすると、少し離れた所に複数の謎の飛行物体を発見。謎の飛行物体は、こちらへと近づいて来る。あれは、UFOだ !
少年は、持っていたデジタルカメラで、すかさずUFOを捉える。
すると、UFOは一斉に少年の乗っている宇宙船にビームを放ち、攻撃してきた。攻撃を素早くかわし、少年は追って来るUFOから逃げ出す。
しかし、ビームを何発も食らってしまい、宇宙船は制御不能になってしまった。そして、そのまま墜落して行き、とある惑星に到着する。
少年は、運良く助かった。その惑星では文明が発達していて、地球人によく似た宇宙人が住んでいた。
宇宙人達は「お帰りなさいませ」と、少年を大歓迎する。
そう、少年は記憶を失っていた、この惑星の王だったのだ。
こんな感じで、良いのかな ?
僕は装置を外し、仕事を終えた。
正しく夢を作れているのかも分からず、僕は毎日、十人以上のシナリオを考えていく。
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