MARVELOUS ACCIDENT 未知の始まり 【訂正前】

闇で歪んだ世界
退会したユーザー ?
退会したユーザー

19

公開日時: 2021年9月9日(木) 12:45
文字数:1,590


「ねえ、パパ……これから、この子を私達の子供として、一生育てて行きましょうよ」

「俺は……構わないよ。でも、どうしたいかはこの子に判断してもらおうか」

 パパはすんなりとママに賛成し、少女の答えを待った。

「俺、そうする。でも、記憶モドタラ……帰る」

「分かったわ。いつか、帰るべき場所が分かれば、お別れしましょう。きっと、貴方の帰りを待っている人がいるわ」

「……ありにとう」

「良いのよ。これからも、宜しくね。もう、貴方はうちの家族なんだから、名前で呼びたいの。だから、今から皆で貴方の名前を考えるからね」

 ママの言う通り、これからこの子と家族として暮らしていくなら呼び名を決めないとな。少女の名前か……それなら、ピッタリなものがあるぞ。

 

 僕は気づけば誰よりも先に、少女の名前を提案していた。

「あのさ、ワンダなんてどうかな ? 不思議を英語にすると、ワンダー。それを名前らしくして、ワンダ。この子って、どこか不思議なオーラがあるからさ。」

「……ワンダ ? まあ、可愛らしいんじゃないかしら。でも、私は愛って名前をつけたいの。誰からも愛される、愛の女神の様に美しく育ってほしい……そんな思いを込めて。女の子が生まれたら、この名前にするって決めていたのよ」

 なるほど。僕が女だったら、ママにそんな名前をつけられていたのか。

「ワンダ……俺、ワンダ……する」

 少女は、僕の瞳の奥を見つめた。そして、僕の考えた名前を希望する。なんだか恥ずかしくなり、僕は少女から目を逸らす。


「本当にその名前で良いの ? 焦らず、もっとゆっくり考えたらどうかしら。パパや真誠にも聞いてみて、良かったら……」

「他、嫌。俺、ワンダ !」

 少女はママの話を遮ると、力強く言った。

「それじゃあ……今日から、貴方はワンダちゃんね」

「そうだ。俺、ワンダ !」

 ワンダは、純に満ちた可愛い笑顔を僕らに向けた。そんな彼女に、僕はぎこちなく笑い返すだけ。だけど、本当はかなり嬉しかった。だって、僕の描いている漫画のキャラクターに近い名前を、彼女につける事が出来たのだから。

 

 何故、彼女にワンダと名付けたかって ? それは、直感だ。僕の心が、「これだっ !」って、僕に伝えてきたのさ。なんだか、不思議な感覚だったんだ。




気づけば、12月の中旬だ。今日は、終業式だった。


 よし、これから自由な冬休みが始まるぞっ ! 早く家へ帰ろう。

 僕は、急ぎ足で校門を抜けた。


「なあ、勢太……しばらく、こいつで遊べなくなるから、思いっきり殴っといたらどうだ ?」

「アッハハ……それは、名案だな。飛華流君ー、僕と遊ぼーー」

 すると、背後から聞き慣れた男達の不快な声がした。

 勢太は僕に話しかけ、黒也と共に僕の目の前に立ち、道を塞いでくる。最悪だ。もしかして、これは人を呪った僕へ訪れる、「不幸」なのか ?


 僕はいつもの様に勢太に散々殴られ、アスファルトで転がっていた。涙で顔を濡らす僕を見て、勢太は楽しそうに笑う。こいつは、血も涙もない悪魔だ。

 通行人は見て見ぬ振りをして去ってしまい、誰も僕を助けてくれない。この町は冷たい人間ばかりだ。そう思っていた時だった。


「なあ……そいつを虐めるのが、そんなに楽しいか ?」

 

 突如聞こえたクールな男の声が、勢太の動きを止める。顔を上げると、こちらに鋭い瞳を向ける、三島永戸の姿があった。

 状況が、全く理解出来ない。永戸は何をしに、ここへ来たんだ ? まさか、勢太に加わって僕を痛みつけるのでは ?


「黒也……やばいぞ。三島永戸が出たーー」

 勢太は永戸を目にし、怯えた様子で体を震わす。こんな、間抜けな彼を見るのは初めてだ。いつもの僕の様に、勢太は臆病になっている。

「あ、俺……用事を思い出したー」

 そう言いながら、黒也は僕らに背を向け、永戸から全力で逃げて行く。

「ちょ、待てよ ! アハッ、永戸さん……今日も相変わらず、カッコ良いですねー。さ、さようなら」

 黒也に続き、勢太も焦って走り去って行く。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート