MARVELOUS ACCIDENT 未知の始まり 【訂正前】

闇で歪んだ世界
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65

公開日時: 2021年9月30日(木) 06:58
文字数:1,753


「……えっと、携帯の電話番号で良いですか ?」

「うん、それで良い……」

下に何も敷かないでペンを走らせるのは、かなり難しいな。僕は慎重に、用紙の下側に個人情報を記入した。そして、それを秀に返す。

「……よし、ありがとう。それと、お前に俺の連絡先を渡しておくよ。何かあれば、ここに連絡してくれ」

秀から紙切れを受け取り、僕は小さく会釈した。まあ、僕から秀に電話をかけるなんて事は無いけどな。

「俺も、飛華流に用がある時はさっき記入してくれた番号にかけるから、宜しくな」

「……あ、はい。分かりました。……あの、弟が帰って来ない事を、親がとても心配してるので……僕は、これで失礼します」

「……それなら、その弟を起こさないとな」

秀は真誠の元へ行き、彼に呼びかける。

「おーい、怪我は大丈夫か ? ……お兄ちゃんが、迎えに来てくれたぞ」


真誠は眠そうに目をこすりながら、上体を起こした。

「真誠……大丈夫だった ? 傷は痛くない ?」

「うん……もう少しで、あの化け物に殺される所だった……」

「……無事で本当に良かった。もう、二度と会えないと思ったよー。うわーーーーん」

よろよろと立ち上がった真誠を、僕はギュッと抱きしめる。真誠の温もりを感じ、僕は涙を止められない。


真誠が生きていて、本当に良かった。


「ちょっ……何するんだ ! こんな所でやめろよ。みっともないなー」

「……だって、だってーー。……もう、会えないと思ったあーー」

「……ほらほら、泣くなよ。俺はしっかり生きてるぞ」

真誠は僕を落ち着かせようと、優しく背中をさすってきた。そんな、真誠の目も微かに潤んでいる。一番泣きたいのは、真誠だよな。


「ハハッ……これじゃあ、どっちがお兄さんか分からないなー」

秀も、そんな僕らを見て笑っていた。


僕は兄なんだから、もっと強くならないと駄目だよな。




秀らと別れた後…………。



帰り道を覚えていた真誠のおかげで、家の付近まで戻って来る事が出来た。


暗闇に包まれた町を照らすのは、幾つもの切れかけた街灯だけ。異常な寒さに、身が凍りそうだ。こんな夜は、レッドアイが出現しそうで恐ろしい。

早く家へ帰らなければ、また予期せぬ事態に巻き込まれてしまうかもしれない。


「あ、あれは真誠……。パパ……あれを見て、子供達が帰って来たわ」

こちらを懐中電灯で照らす二つの影が、前から接近してくる。あれは、ママとパパだ。


「真誠……真誠、無事で良かったわ。うわー痛そう……ちょっと、その怪我どうしたの ? あんた、今まで何してたの ?」

真誠を見て、ママは目をウルウルとさせる。そして、真誠の頭に巻かれた血の滲んだ包帯を目にし、混乱していた。そんなママは、血の染み込んだ黄色い帽子を大切そうに抱えていた。

真誠の通学帽子。僕が発見したまま、置き忘れた物だった。これを目にした時、ママとパパは、真誠の死を少しは想像しただろう。


「……俺はレッドアイに襲われて、死にかけた。だから、塾をサボりたくて、家に帰らなかった訳じゃないぞ」

「え……そうだったの ? 怖かったでしょ ? 痛かったでしょ ? ママが、守ってあげられなくてごめんね……。うわーーーーん」

真誠の言葉で、ママは子供の様に号泣する。

静まり返った夜道に、ママの甲高い鳴き声が響き渡る。かなりの、近所迷惑だ。

ママは真誠に抱きつき、しばらく離れなかった。先ほどの僕と似たような事を、ママは真誠にしている。

「……ちょっと、ママ……こんな所でみっともないからやめろよ」

真誠は、泣くのを必死に堪えている様だった。そうだよな。泣きたいよな。だってこいつはまだ、小学二年生なんだから。そこをグッと堪え、平静を装う姿はイケメンだ。


「……あの化け物に命を狙われ、生きて帰って来られたなんて……奇跡としか思えないなー。でも、どうやって奴から逃げ出して来たんだ ?」

パパが不思議そうにしていたので、僕は今までの事を簡単に話した。皆で家へ向かいながら。

スマイル団に真誠が助けられた事。スマイル団についても、一から説明した。

すると、ママとパパはスマイル団にとても感謝し、そんな団体が存在する事に驚いていた。まさか、自分の息子がその団体に所属したとも知らないで。


イナズマ組かスマイル団、どちらかを裏切るような事になれば、僕は必ず殺される。


こんな事になったのも、全ては呪いのせいなのだろうか。


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