MARVELOUS ACCIDENT 未知の始まり 【訂正前】

闇で歪んだ世界
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公開日時: 2021年9月27日(月) 17:42
文字数:1,342


「おい……あれ、マト持ってる」

川沿いを歩いていると、ワンダが突然立ち止まった。ワンダの指差す物を目にし、僕は血の気が引いた。

なんと、男子小学生の通学帽子が川に浮かんでいるのだ。それは、一宝小学校生徒のものだ。その、黄色い帽子には、一宝と書かれたマークがあるから間違いない。ところどころ、赤く染まっているのは血のせいだろう。

あの帽子は、真誠の物か ? そうだとすれば、真誠はレッドアイに襲われた可能性が高いぞ。

帽子の持ち主を確認したいが、こんな深い川へは入れない。どうしよう。

緩やかに流されていく帽子を、僕はじっと目で追っていた。


「メッダーゾー、メッダーゾー」

すると、ワンダが声を発した直後に帽子がゆっくりと宙へ浮かびだす。ワンダに目をやると、彼女は両手を上に伸ばしていた。

帽子は水滴を垂らしながら、僕の元へと近づいてくる。僕は手を伸ばし、それを掴み取った。

「ワンダ……ありがとう。助かったよ」

僕は早速、水分を含んだ帽子を裏返し、誰の物なのかを確かめる。


「う、上野……ま、真誠……」

マイネームぺんで、丁寧に弟の名前が書かれていた。その文字を読み上げ、僕の体から力が抜けていく。

真誠は人肉スープにされ、イナズマ組の食料となってしまったのか ? そ、そんな馬鹿げた事があってたまるか !


帽子をぎゅっと抱いたまま、僕は膝から崩れ落ちる。帽子に染み込んだ血を見て、涙が溢れてきた。

「真誠ーーーー ! うわーーーーーーん」

夜の町中だろうとお構いなく、僕は大声で泣き叫んだ。どうして、真誠がこんな目に遭わなければならないんだよ。もう、二度と真誠に会えないのか。果てしない怒りと悲しみが、脳内で複雑に絡み合う。


「おい……ヒル、大丈夫 ?」

ワンダは、僕の背中をさすってくれた。

だが、僕はワンダに良い返事は出来なかった。

「駄目だ……僕はもう、生きていけないよ」

「……お前、言った。マト、居る……見つかる。そうだろ ?」

「……確かに、僕はそう言ったよ。でも、こんな物を見つけたから……嫌でも、真誠がどうなったのか分かっちゃうよ」

「マトの死体、見つけてない。帽子だけだろ。死んだか分かるか ?」

ワンダの言うように、真誠の亡骸を見つけた訳ではない。なので、真誠の生きている可能性は、少なからずあるだろう。

しかし、この町で行方不明になれば、まず見つからない。それに、イナズマ組の餌食になっていれば、確実に殺されてしまう。この、血の付いた帽子から、最悪の事態になったと、僕は考えた。

「……僕には分かる。僕も、真誠の後を追うよ。生きていたって、良い事は何一つないからね」

僕が、口からそんな言葉を漏らした時だった……。


「飛華流さん、早まらないで下さい。貴方の弟さんは、無事ですよ」


優しく可愛らしい女性の声が、脳内で聞こえた。その声の主は、魔女のエミナーだ。

「エ……エミナーさん。それは、本当ですか ? 真誠はどこに居るんですか ?」

僕は、エミナーに直ぐ質問した。

「弟さんは二人の少年に助けられ、名口市の公園でゆっくりと休んでいます」

「え……それは、名口市のどこですか ?」

「……どこか分からないと思うので、私がその場までお連れ致しましょうか ?」

「はい、あの……お願いしますっ !」

本人が目の前に居る訳でもないのに、僕は深々と頭を下げ、必死に頼んだ。




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