3層目は普通に反対側に下り口があった。
結局スケルトンしか遭遇してない。
弱いって言っても、端から端までだいたい2キロを延々屠り続けてるからヴァルキュリルの疲労がヤバい。
幸いなのは下り口の前も登り坂になっててスケルトンが来られなくなっている。
「あー、しんどい」
グフリアが座り込む。
「流石に数が多すぎるわね」
レブルは膝を付く。
他のメンバーもだいたいそんな感じ。
「セドリック、悪いけど下の様子見てきてくれないか?」
今、体力残ってるのはアタシ達だけだもんね。
「分かった。戻るまで休んでなよ」
「ああ。助かるよ」
下り口入ると直ぐに緩やかな坂になってる。
4層目は2層目に似た感じだけど、下り坂が中心近くまで続いてて坂の両脇は絶壁になってる。
坂の幅は2メートル位。
この階層は下らなくても全体を見渡せる。
「オーガかよ‥‥」
セドが少しうんざりした様に言う。
「下層に行けば行くだけ高レベルモンスターになるのが常だけどね‥‥」
途中でスケルトン挟んだから、数で攻めてくるタイプのダンジョンなのかと思っちゃったわよね。
オーガ達はまだこちらに気付いてなく、各々のんびりしてる。
普段のモンスターってあんな感じなのかしら?
坂を下って先まっすぐ行った壁に入口が見える。
ただ、そこまで行くのに何体のオーガと遭遇するんだろう。
入口付近にも4体は居る。
「探りに行くだけでも厄介ね」
とニコラ。
もし見つかって坂で戦闘にでもなったら転落してしまうかも知れない。
「一旦戻るか」
そうね。帰って対策練った方が良さそうね。
「ちょっと待って?」
戻ろうとみんな振り返った時、リネットが何かを見つけた。
「あっちに階段が見えるわ」
「‥‥あの黒い所?」
坂を下りて左に行った壁際に穴っぽい黒い影が見える。
それが階段なのはリネットにしか見えない。
「そう。あっちが下り口じゃないかな」
「リネット、向こうにも同じ様なの見えるんだけど」
リネットが発見した方と真逆を指しているヴィオラ。
「あ、本当だ‥‥ そっちも階段みたいね」
下り口が2つあるのは珍しい事じゃない。
クロンもそうだったし。
ただ、調査しなきゃならないとなるとダルいわね。
下で繋がってればいいけど。
「他にもないかちょっと見渡して来るね」
とリネット。
あ、アタシも行くわ。
始めに見つけた入口を正面として、リネットが右側半分、アタシが左側半分を上空から見て回った。
明らか階段なのが、さっきの左右2ヶ所と後ろ面の絶壁そば右側。
入口になってて広場なのか下り口なのか不明なのが正面と後ろ面の絶壁そば左側。
その事を3層目に戻ってグフリア達に伝えた。
「とにかくオーガを何とかしないとだわね」
楽に倒せれば悩む事もないのだけれど、強敵だしその先が分からない分、使わなくて済む労力は使いたくないのよね。
「桃の木使うのが妥当じゃない?」
オーガも鬼人種だから桃が有効なのだ。
「まぁな。でもそれには大量に桃の枝かなんかが必要だから、一旦戻ってスジャと相談しなきゃだわね」
「もうまたこいつらと遣り合わなきゃにゃらにゃいのかぁ」
先頭でスケルトンと戦ってた3人はまだ疲れが取れない様子。
「戻りは俺達が先頭に立つよ。体力温存する必要もないし」
「それは助かるにゃ」
と言う事で、セド、ルーシ、ヴィオラが先頭の3列で戻る。
リネットとニコラはまた後方で魔石拾い。
楽な様で大事なお仕事よ。アタシもそっちに参加しよ。
「ルーシ、疲れてない?」
「うん。大丈夫。」
行きに大量に倒して居たから、帰りは半分程の数しかスケルトンは湧いて居なかった。
また2、3層目の間の広場で一旦待機。
セドが上に偵察に行っている。
「リネットさんん、魔石回収してましたよねえ?」
コリティスが首を傾げてる。
「ええ。全部は無理だったけど、大半回収出来てるわよ」
バックを持ち上げながらリネットが答える。
「この中に全部入ってるんですかあ?」
「そうよ。このバック見た目よりもいっぱい入るの。帰ったら見せてあげる」
スムカに貰ったバックの事、みんな知らないもんね。
コリティスは後ろから回収するの見てたから余計不思議なんでしょう。
「ただいま」
「お帰り、セドリック。どうだった?」
「ああ、普通に進んで大丈夫だよ」
帰って来たセドがそう言うので、みんな2層目に上がっる。
目を潰されて足首も切られたサイクロプス達はまだ煙らずにのたうち回ってる。
「なるべく音立てない様に進みましょう」
うめき声とか怖かったけど、おかげで壁沿いを歩いて安全に戻れた。
階段は狭くて全員が直ぐに登れる訳では無いから警戒してたけど、入口から引き離してやっつけといたから危ない事は起きなかった。
グフリアとセドは大きいから1列で、他は2列で登る。レブルとナミルは全員通ったの確認してから最後に登っる。
「やっと着くよ。」
グフリアが息を切らし気味に言う。
知らないダンジョン潜って最後に9メートル分の階段上れば、Aランクだって流石に息切れするわよね。
グフリアが1番に登りきり、アタシから姿が見えなくなった。
「うわ!やば!」
グフリアのそんな声と激しい金属音。
「ミノタウロス復活してるよ!」
叫んで後列に注意を促すグフリア。
その声で状況と彼女が無事なのが分かった。
彼女の直ぐ後を登ってたツインブレスチームが瞬時に走り出す。
1層目にかけ上がると、ミノタウロスはこちらに背を向けていた。
その先にグフリア。大分吹き飛ばされたんだわ。
シールドで攻撃は防いだのでしょう。さっきまで丸かったスパイクシールドが半月型に割れちゃってる。
そうそう割れるもんじゃ無いだろうから、よっぽど強烈な一撃食らったのか、もしかしたらサイクロプスの攻撃も防いでたから疲労が溜まってたのかも知れないわね。
「こいつの事、忘れてたわ」
失敗したって感じは出てるけど、テンパってはいない。
セドがミノタウロスの背後に回ると、振り返って斧を振る。
それを剣で受け止め、ヴィオラが懐に入って喉を1突き。
ミノタウロスは煙る。
「グフリアさん、盾見せて」
ルーシがグフリアに駆け寄った。
「とうとう壊れちまったよ」
ルーシが盾に触れると壊れた部分が黒くもやり出し、それが消えると元通り。
盾は直った。
「おお、すげぇ」
「えへへ。ボクのスキルなんだ」
「便利なスキルだね。いや、助かったよ。ありがと」
「ううん」
グフリアが強めにルーシの頭を撫でる。
「倒せない程じゃないけど、下層攻略後にこいつが居るとなるとちょっとしんどいかもね」
全員上り切るまで、ミノタウロスについて話合う。
「次はワタシが凍らせてみようか?」
とニコラ。
「そんな事出きるのかい?」
「やってみなきゃだけど、たぶん大丈夫。ただ、魔力沢山使うだろうし、常時発動してるとその分消耗するのよね」
「なら、行きに凍らせて、帰りにその氷ごとぶっ飛ばすってのはどうだい?」
「そうね。1度やって見ましょうか」
「それじゃぁ明日やってみよう」
全員上がりきったのを確認して、ダンジョンを出る。
今日はこのまま帰還ね。
「スジャ、桃の木調達出来ないかな。枝でもなんでも」
村に帰り、間髪いれずにグフリアが切り出す。
「どうしてですか?」
スジャは特段驚いた様子もない。
冒険者ってだいたいあんななのかね。
とりあえず、4層目がオーガのたまり場だったのと、下り口らしき所が5ヶ所あった事をスジャに伝える。
「なるほど。ギルドで便宜図れると思いますが、時間と費用が掛かりますよ?」
報酬は払うけど諸経費は自己負担?
世知辛いわね。
「ちなみにどれくらい必要なんですか?」
「どうする?道作るとしたら1ヶ所2000本必要よね。5ヶ所だと1万本?」
「それは流石に簡単には集められないかと思います‥‥」
単純計算でその数だから、実際にはもっと必要かも。
その数は流石に現実的じゃない。
「薪を1500本ならどう? こっちで八等分に割れば1万2千本になるわよ」
「そうですね、それなら2週間ほど頂ければ集まるかと思います」
「グフリアどう?」
「そうだねぇ。費用次第かなぁ」
「それなら今日回収した魔石で賄えないかな。リネット、沢山回収出来てるかい?」
「ええ。山のようにあるわよ」
リネットがバックを出す。
「確かに、今日は大量だったね」
「採集しながら待ってれば、今日分無くなったって痛くもないんじゃない?」
「確かににゃ。で、魔石はどこにゃ?」
「この中よ」
リネットがバックをひっくり返すと、中からそれこそ山のように魔石が出てくる出てくる。
「何処にそんな入ってたの?!」
バックの見た目の要領の何十倍も中から出てきたら、そりゃ皆ビックリするわ。
だからスキルバックの性能について説明してあげる。
「すごくいいな。どこに売ってるんだい?」
「まだ出回って無いのよ。これは非売品貰ったの。もし売り出されるとしたら王都でじゃないかな」
「そうなんだ。帰りにジークリットに支援するよう言おうかな」
「そうね。みんなで懇願してギルドも動けば、早く出回るかも知れないわね」
そうなればみんな幸せね。
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