「あぁ、かったるいにゃ。」
村を出てからは普通の馬が進むスピードで進んでいる。
「ナナチャの速さに馴れちゃったから。」
先に見えるは草原。まだまだ景色が変わらないから飽きちゃう気持ちも分かるわね。
「どうせこんな見晴らしの良い場所で盗賊何かに出会う訳ないんだからもっと早く進みもうにゃ。」
確かにね。アタシの今の視野だったら300度は見えるし、ナミルも目が良い見たいだから何かあったらすぐ分かりそう。
「もう、ナミルは堪え性がないんですからあ。ナナチャさん、お願い出来ますかあ?」
「任せといてだって。」
アタシもダルくなってきた所だったし、全速力で走り出す。
「そうそう。この刺激がたまらないんだにゃ。」
荷台に伝わる衝撃を楽しんでやがる。
ジェットコースターとでも思っているのかしら。
荷馬車が壊れないように常にスキル使ってるルーシの労力に感謝して欲しいものね。
森が見えて来た。その中に道が続く。
「居るとしたら絶対あそこにゃ。」
道の両側すぐ側まで木々が生い茂ってるから、潜みやすそう。
「あそこはゆっくり進む?」
「そうですねえ。お願いしますう。」
半日程掛けて進んだのに何にも現れず、間もなく森が切れる。
「居なくなっちゃったのかな。」
「逃げちゃったかにゃ?」
「まだ気を抜かない方がいいですよお。」
森を抜けると、目の前と遠くの明るさが同じになったので遠くまで良く見える様になった。
馬になっても視力が変わらないのは幸いね。
「結局何も起きなかったにゃ。」
「もう少し様子見ますう?」
「ナナチャが遠くに何か見えた見たい。馬車じゃないかって。」
森の中を通った時と同じスピードで進んで行く。
「確かに馬車にゃ。」
1キロ位の距離まで近づいた。
「私にはまだ見えないですう。」
「何台かあるにゃ。人も降りてる。」
屋根のある大きめな馬車が5台。その側でくつろいでる人が十数人。
「休憩してるのかな。」
「その様にゃ。」
「盗賊の事、教えてあげなきゃ。」
「そうですねえ。私達が出会さなかったからってもう居ないとは言えないですからねえ。」
もう間もなく側に付く。
相手も流石にこちらを認識しているわ。
「何か人数多くにゃい?」
15人。他に馬車に乗ってて見えない人が居るならもっと。
「しかも全員男ですう。」
「武器らしい武器は無さそうだし、防具も着けてはいないにゃ。でも、行商には多すぎるにゃ。何者だろう。」
馬車が停まって居るのは3方向に道が別れる所だった。
「やぁ、こんにちわ。凄く立派な馬だね。」
相手から声を掛けて来た。
「こんにちわ。」
馬車を停めてルーシが対応する。
「君達、森を抜けて来たのかい?」
「うん。そうです。」
「盗賊が出るって聞いたけど。」
「出会さなかったですよ。」
「そうなんだ、出るって聞いてたから遠回りするつもりだったんだよ。」
それで別れ道で一旦休憩してたって事かしらね。
ナミル、コリティスが馬車を下りた。
「大人数ですねえ。」
「男の人しか居ないのかにゃ?」
「え?ああ、俺達旅一座なんだよ。今は巡業中でね、色恋沙汰は揉めるから女は居ないんだ。」
座長だと言う男は2人の口調に少し戸惑って居るみたい。
剣劇とかやっているのかな。みんな役者さんなんだろうけど、目付きが鋭い。悪役か?
「へー、見てみたいなぁ。」
「機会があったら見に来てよ。」
「うん。何処でやるの?」
「色々回ってるよ。。それより、君達は3人で旅してるのかい?」
「そうですよお。」
「女子供だけで旅するなんて危険だよ。」
座長が頭の後ろに手を回す。
「良かったら俺達が送ろうか?」
残りの男達がおもむろに立ち上がり、伸びをしたりしている。
そろそろ出発なのか?
「大丈夫にゃ。」
「大丈夫じゃないでしょう。」
座長が何処からともなく剣を抜いた。背中に隠してたのか?
残りの男共もマジックみたいに剣を出現させてアタシ達を囲んだ。
「貴方達が盗賊だったんですねえ」
「いやいや、俺達はお前達みたいな怪しい女が魔女じゃないかって、教会に連れていって確認して貰おうと思ってるだけだよ。」
「その必要はないにゃ。」
ナミルがネックレスを見せる。
「ちっ、教会の輩だったか。」
「そもそも一般人が怪しいってだけで捕縛したらもうそれは人さらにゃ。普通に犯罪者にゃ!」
「親方ぁ、もうばれてるんだから取り繕わなくて良くないっすか?上玉過ぎてムズムズしますは。」
一際小さな男達がルーシを見ながら股ぐらを握ってる。
うわ、下品。
「そうだなぁ、1人は仕上がってるし2人も育ちそうだな。 引き上げようと思ってた矢先の棚ぼただ。 ウチで飼っちまうか!」
「「「いえーい!!」」」
男共が歓喜する。
「まず逃げられねぇ様に馬車落とすぞ。」
チビスケは案外上位の人間らしく、4人従えてアタシの前で構える。
「ルーシ、馬車お願いにゃ。」
「うん。任しといて。」
「あー、なるべく殺さないで下さいねえ。」
「(じゃぁ、ディアボロス使わない方がいいのかなぁ。)」
アタシにしか聞こえない声でルーシが言う。
「どうだろう。錬金で切れ味調整出来たりしない?」
「そっか。やってみるね。」
ルーシが馴れた仕草でアクセサリー状態のガントレットとディアボロスを元に戻す。
「!どっからそんなもん出しやがった。スキルか?」
「生意気言うだけあってえげつない得物じゃねぇかよ。」
盗賊共は一瞬怯んだけど、ディアボロスとルーシの不釣り合いさにニタ付く。
完全に舐めてるわね。
「ルーシ、アタシも元に戻してくれない?馬のままじゃ足手まといになるし、殺さないってんならアタシの攻撃は有効だから。」
「うん。わかった。」
ルーシの手がアタシに触れると瞬時に元の姿に戻る。
「何だその変な生き物は」
失礼ね。
アタシはそんな失礼な事言った盗賊の側に飛んでいき、顔の前で1回転。
尻尾が見事顎に入って失神させた。
「遣りやがったな!もう容赦しねぇ!」
チビスケが見た目通り小者なセリフを吐く。
「あぁあ、もう始めちゃったにゃ。」
「ナナチャさんは血の気が多いですう。」
あれ?駄目だったの?
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