転生竜と賢者の石な少年

ツワ木とろ
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【66】審議会開始

公開日時: 2021年12月29日(水) 02:36
更新日時: 2023年9月27日(水) 03:03
文字数:2,121


 独房に入れられてからだいぶ立つ。


 ここは半地下なのか小さな通気孔から漏れる明かりと提供される質素な食事の回数から算出するに、だいたい4日目の夜って所かしら。


   ホントに監禁じゃないの!


 ちょっと息苦しいし、ずっとこんな所にいたら頭がおかしくなりそう。


 唯一の救いはルーシとの念話が通じるって事。


   「今日はどうだった?」

   「うん。またおんなじ人達が来て、おんなじ事聞いていったよ」


 ルーシの所には2人組が3セット、入れ替わりで聞き取りに来て毎日全く同じ質問をしてくるらしい。

 おんなじ事を毎日3回聞かれるとか、新手の拷問?

 でも、まだ実験体にされてないだけマシって自分に言い聞かせる。



 次の日の夕方、アタシの監禁部屋に初めて現れたのはメルヴィルさんだった。


「こんな所に押し込んでしまって申し訳ありません」


 そう言いながらしゃがみ差し出されるメルヴィルさんの手にアタシは飛び付いた。




「アタシ達、どうなっちゃんうですか?」


 メルヴィルさんのスキルで精神世界に入り込む。

 アタシがすぐさま噛み付く勢いで聞いてもメルヴィルさんは動じない。


「大丈夫ですよ。きっと」

「きっとって何?大丈夫ならなんでこんな所にずっと閉じ込められてるの?」

「それは重要案件の参考人だからですね」

「フィンティスの?サーリアの?」

「どっちもですね」


 口では申し訳ないと言ってたけど、この対応が彼女達には普通な事で特別辛い環境に追い込んでる訳ではないのかも。

 そんな風に伝わって来てこちらのテンションが萎えてくる。


「ニコラとリネットもここに閉じ込められてるんですか?」

「ええ。ただ彼女達は今朝帰りましたよ」

「あ、そうなんだ」

「彼女達に審議会は行われないですから」

「審議会?」

「まだ公表段階じゃないですが、フィンティスは魔女認定される事になりまして、サーリアも証拠が少ないですが議題に上がってます。ルーシさんは関係が濃厚なので出廷しなくてはなりません」

「魔女認定って、サーリアは分かるけどフィンティスは男ですよ?」

「魔女とは教会における大罪人の総称なので性別は関係ないんですよ」

「ディオ達も出廷するんですか?」

「彼らの審議会は昨日終わりました。彼らの身の潔白を証明する為もあって教会に貢献するって事で纏まってます。いいですか、ルーシさんにも話してますが、彼も同じ様な判決に持ち込もうと思っているので貴方は無垢な従魔を演じていて下さい」

「‥‥分かりました。でも嘘つく様なものですけど良いんですか?」

「サーリアについてはまだ証拠不十分なので私の見立てでは魔女認定はされないです。なのでまだ事を荒立てたくないのですよ。教会も一枚岩ではないので‥‥」


 何か思惑が有りそうだけど、やっぱりアタシ達は彼女を頼るしかなさそうね。

 悪い様にはされないでしょう。




 ルーシが迎えに来たのはそれから3日後の午前中。


「ナナチヤ、久しぶり」


 扉が開いてそこにルーシが居ると分かると、即座に胸に飛び込んだ。

 念話で話せて居たけど、やっぱり姿が見えないのは不安だった。

 ルーシは優しく撫でてくれる。


「これから審議会ってのを受けるんだって」


 ルーシが言う。

 いよいよね。ってか無垢な従魔ってどう演じれば良いのかしら?



 案内されたのは3階。

 最上階と思われ、扉の間隔から1部屋1部屋が広い間取りになってる模様。

 突き当たりがT字になってて、両方進んだ壁際に扉が見える。

 アタシ達はその左側から入った。


 突き当たりの両サイドの扉は1つの部屋の両端に位置していた。

 長手が扉間方向で短手はその3分の2位の幅。

 真ん中に大きな長テーブルがある。

 初めて来た時の部屋の大きいバージョンて感じ。


 アタシ達の入ってきた方と逆側のお誕生日席に3人座っている。

 右側にメルヴィルさん。中央と左側の人は初めて見るけど、彼女と並んでる位だから偉い人なのでしょう。


「ルーシ・ペレグリノをお連れしました」

「目の前の席にお座り下さい」


 お誕生日席の中央に座る老人が言う。

 彼が1番偉い人そう。それか議長か。


 テーブル長手の奥両側に座る5人は初めて見る人達。

 それに続いてビックスさん、ニーダさん、エイミーが左右交互に座ってて、1番近くに座っているのはナミルとコリティスだった。

 2人は白いローブを羽織っていて、表情もいつもと違って真剣な面持ち。

 ナミルに至っては猫耳カチューシャを着けていない。


 それで気が付いたけど、頭に何か被っているのは対面の3人だけだ。

 脱帽してないのが余計偉い人なのだと分からせてる。


 ルーシの頭に乗ったりするのはやめとこう。

 アタシはルーシの膝の上に座った。


「ではまず紹介から始めます」


 左側の真ん中に座っているおじさんが言う。

 あれ、彼が議長なのかな。


「一番上座に居られるのがダンバス・ドア大司教様」


 座るよう促してくれた老人が会釈する。


「右に居られるのがメルヴィル・ダフ司教様。左がネイプ・ブルス司教様」 


 やはりお誕生日席の3人がこの教会でのトップ3みたい。

 その後、全員の紹介が続く。


 アタシには長々した紹介に感じて、申し訳ないけど他の人の名前は覚え切れなかった。


 アタシが覚えてなくても支障無いって気持ちもあったし、とっとと始めなさいよって少し苛立ってしまってた。


 兎に角、審議会と言うやつはそんな感じで始まった。


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