盗賊の馬車から女性が次々と救出される。
あらゆる関節に木を当てられ、縄でぐるぐる巻きにされた状態で床の下に監禁されていた。
総勢18名。30代から下の年齢位の女性ばかりで、少女も3人居た。
この盗賊ども、とんでもねぇ奴等だわ。
ぷちっ
堪忍袋の緒が切れると言うけれど、コリティスからホントにキレた音がした気がした。
「『蔦縄』」
盗賊達を締め上げている蔓が延びだし、奴等の首を締める。
「コリティス、ダメにゃ!」
ナミルがコリティスの肩を揺らす。
「止めないで。こんな奴等、生きてる価値ないですう。」
目がマジだわ。
「首締めたら直ぐに死んじゃうにゃ。そんなの易し過ぎる。こいつらはもっと長い時間苦痛を味あわってから死なないとダメにゃ!」
あ、そっち?気持ちは良く分かるけど。
コリティスも賛同した見たいで少しだけ蔓を緩める。
ずっと息苦しいのが続く位に。
「止めなさい。その方を止めろ!」
「ごめん!」
1人の兵隊が槍の柄でコリティスを叩く。
集中力が必要な魔法だったのか、コリティスが倒れると蔓の伸びた先が全て緩んだ。
「何するにゃ!」
「いくら教会の方でも、それは見過ごせません。貴方方まで捕まえる事になって仕舞います。」
隊長は続ける。
「もし他にも被害者が居たとしたら、殺して仕舞っては聞き出す事も出来ないでしょう。」
今の言葉でハッとコリティスは我に帰る。
「あ、すみません。そこまで考え着きませんでした。あまりにも許せない所業だったので。。」
「気持ちは分かります。なので先ほどの行為は不問にします。」
「、、ありがとうございます。」
被害者の女性達と盗賊共と荷物を運ぶには軍の馬車を足してもだいぶ手狭だ。
「盗賊達は同じように縛り上げて床に寝かせる。」
と隊長。
被害者、アタシ達、それに兵隊の中にもいる女性に配慮したのかもしれない。
盗賊達を人間担架の様にして自分達の馬車の床下に乗せる。
女性達が味わった苦痛を少しでも実感すればいいのよ。
その上にカモフラージュだった小道具などを乗せて、兵隊さんも数人乗車。
女性達は軍の馬車に乗せられた。
それでもギュウギュウ感は否めないけど、床下よりかはマシでしょう。
「あの、」
一行が出発する瞬間、1人の女性が荷台から声をかけてきた。
「先ほどは私達の為にありがとうございました。」
「たまたま私共も襲われただけですから。」
とナミル。
「殺してくれ様ともして下さいました。」
「それも私が後先考えもしないで勝手にキレてしまっただけですから。気になさらないで下さい。」
「…それでも少し気が晴れました。」
女性がそう言い、お辞儀をすると馬車が進み出した。
彼女の言葉でコリティスの気持ちも少し晴れたみたい。
「ここからは歩いて向かおうかにゃ。」
軍の馬車を見送り、姿が見えなくなるとナミルがそう言った。
「ルングスまでは後どれくらいかかるの?」
「普通に進んだら3日位じゃないかにゃ。」
アタシなら1日かからない。
追い付いちゃったら気まずいものね。
「運動不足だからちょうどいいんじゃないですかあ?」
ルングスまでの道すがらすれ違う馬車に何度か声を掛けられた。
「盗賊は討伐されたって聞いたけど、君達は森を抜けて来たのかい?」
みんなだいたい同じセリフ。
なので返事も同じになる。
「そうにゃ。森通っても何も起きなかったにゃ。」
「今、見回りしてるでしょうから、側でその兵隊に確認した方がいいですよお。」
翼のある兵隊達は別動で森に向かってた。
「そうか。ありがとう。」
馬車は手を振って去っていく。
ルングスの街はマディナに似ていて栄えている。
西の補給拠点なんだとか。
もっと西に国境があって2ヶ国と面している。
その2ヶ国が小競り合いしているお陰でこの地方の辺境伯は財政豊かで国の影響力も強いのだとか。
武器商人みたいでいけ好かないけど、それはアタシの感覚。
「早速教会に向かうにゃ。」
「ルーシ君達はあ、宿で待機していて下さいい。」
世間的にはアタシ達も教会関係者ってなってるけど教会人からしたらそうでは無いので、重要事項では蚊帳の外になる。
ビッグスさん達と旅していた時みたいに教会内に泊まる事も出来るのだけれど、ナミルが、
「折角野宿から解放されるってのに、あんな所に泊まったら鬱になるにゃ。」
と嫌がったので宿を取る事になった。
アタシとしてもその方が有難い。
安い宿の硬いベッドだけど、教会の寝床よりは100倍柔らかい。
「やっぱり教会はかったるいにゃ。」
戻って来て早々にナミルがベッドに飛び込む。
「ちょっと、体拭いてからにして下さいよお。」
野宿では流石に全身くまなく拭く事なんて出来なかったし、ベッドは2つだけでルーシとアタシ、ナミルとコリティスで使う予定。
コリティスが怒るのは無理もない。
「わかった、わかった。桶借りて来るにゃ。 コリティスはお母さんみたいなのにゃ。」
「ナミルがだらしな過ぎるんですよお。」
ナミルが借りて来た3つの桶にコリティスが魔法でお湯を溜める。
「魔法ってホント便利にゃね。」
「誰にでも出来ると思いますよお?」
「ナミルはダメにゃ。魔力無さすぎて桶1杯貯めたら失神しちゃう。」
「ボクにも出来るかなぁ」
「はい。次はお願いしますねえ。」
「うん!」
ルーシも上手く出来るようなら湯船作って貰っちゃおうかしら。
「ルーシ君、こっち向いちゃ駄目ですよお。」
男女で背を向けて湯浴みする。
ルーシは自分の事を手早く済ませてアタシを桶の中に入れて洗ってくれる。
「そんなチンチクリン見ても誰も嬉しく無いにゃ。」
冗談で言ったであろうコリティスをからかうナミル。
「怒るよお?」
声のトーンが低い。
「っ、ルーシ、ナミルは見られたってへっちゃらだから振り返っても大丈夫にゃよ。」
ナミルがルーシの後ろで仁王立ちしてる。
言うだけあってナイスバティだ。
張りもある。
「うん、大丈夫。」
ルーシがちょっとも振り返る素振りをしないのでナミルはプライドを傷つけられた。そんな表情をしてる。
「くくくっ」
それを見て笑いを堪えるコリティス。
彼女の機嫌が悪くならなくて良かったわ。
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