「もっともっと南西の村が様子おかしいらしいんですう。」
ラガネスって国との国境近くの村らしい。
「村って神父が居ない事が多いから変な解釈しちゃってたりするんですよねえ。」
「そんなの近くの教会が行けばいいのににゃ。」
「何もしてない事ないと思いますよぉ。だから報告があった訳だし、手に負えない感じ何じゃないですかぁ?」
「まぁ普通の神父と審問官じゃ効力が違うにゃね。」
教会では詳細な情報は得られてないみたいね。
故意の異端なら隠そうとするでしょうし、そう言う輩は危害を加えて来る可能性が高い。
だから異端審問官の武力強化としてアタシ達やディオ達が居るのよね。
目的の村はアタシの足でも1日半は掛かった。
村ってだいたい全体を柵で囲ってあるイメージだったのだけれど、ここは崖を背にして周りは長い板を繋げて壁にしている。
砦跡か、炭鉱跡地かって感じ。
審問官なのは隠して、旅の途中に立ち寄った事にする。
「こんな辺鄙な所に客人とは珍しい。」
村長さんは中年位。まだ若いし体もガッチリしている。
「数日滞在させて頂けると嬉しいですう。」
「どうぞどうぞ。何もありませんが、ゆっくりしていって下さい。」
農業も酪農も力を居れている感じがしないのに、どこか裕福そうな雰囲気がある。
別の名産でもあるのかしら。
村長が案内してくれる。
奥に進むに連れて石垣の上に建てられた家屋が増えて行く。
「滞在中はこの空き家を使って下さい。しばらくしたら迎えに来ますので、俺の家で一緒に夕食をとりましょう。旅の話でも聞かせて下さい。」
アタシ達が案内されたのは1番奥の崖に面した2階建ての家。
1階は馬小屋ね。
そこでこっそり元の姿に戻って2階へ。
「空き家って割には綺麗にしてあるにゃ。」
10人は泊まれそうな広さで間仕切られた1ヶ所も3人は寝られそう。
小まめに掃除されてる節がある。
「客人が泊まる用なのかにゃ?」
「珍しいって言ってたのにい?」
「マメな人何じゃにゃい?優しそうだったし。」
「でも私には目が笑って無い様にみえましたよお。」
「そうかにゃ。」
「ルーシ君は何か感じました?」
「わかんない。でも、変わった絵があったよ。」
「どんな?」
「羽根の生えた魚の絵。」
両翼のある魚と、それより小振りな片翼の魚が2尾。 2尾の尾は繋がれてて大きい魚の下に書かれた絵。
それが村の箇所箇所にあった。
「ナミルも見たけど、昔の紋章とかじゃないのかにゃ。街並みも砦跡に住み着いたって感じだし。」
そうも見えるけど、あまり古い色彩には見えなかったなぁ。
「3匹居たし、神様と同じ数だね。」
とルーシ。
「確かにい、あれが三神を表しているのだとしたら異端も異端ですねえ。」
「三神を魚に例えるかにゃぁ。全く別の信仰かも。だったら宣教師の仕事にゃ。」
「その判断が付かなかったから私達を送ったんですかねえ。潜入してこいみたいなあ。」
「だったらそう伝えといてくれればいいのににゃぁ。」
「ルングスで話聞いた人も又聞きっぽかったですもんねえ。統制取れてないのか、私達の仕事って異質だから適当にされたかのどちらかじゃないですかあ?」
「ウチのトップはナンバー2なのににゃぁ、扱い悪いにゃ。」
「この辺はネイプ司教側なんじゃないですかあ?」
「そうかもにゃ。あの人メルヴィル様の事、目の敵にしてるし。」
「ちょっと連絡入れときますね。」
そう言ってコリティスはビー玉みたいなのを取り出し、握り締める。
ずっと前に見た事あるわ。魔信具とか言う電話かトランシーバーみたいなやつじゃなかったっけ。
「・・・。このまま身分隠して潜入調査してくれですてえ。一応、盗賊の話もしておきましたあ。」
ちょうどそこに村長が迎えにやって来た。
「おや、そんな可愛らしい従魔もいらしたんですね。気が付かなかったんで、ご飯足りるかな。」
「大丈夫です。ボクと一緒に食べるから。」
「本当、可愛い従魔さんね。」
ルーシの膝の上で食事を分けて貰っているアタシを村長の奥さんがニコニコ見つめる。
村長よりだいぶ若そうで、妖艶な香りのする奥さんだ。
他には給仕をしている若い女性。2人の娘にしては大き過ぎるかな。
スープと野菜炒め。主食は芋。そしたて、メインディッシュにステーキなんて出てきた。
「大したもの用意出来なくてご免なさいね。」
「そんな。とても豪華で感動してますう。」
「ここじゃこれが普通よ?」
「すごいにゃ。棲みたいにゃ。」
「いいんじゃない?女の子だけで旅するのって大変でしょう?目的の場所ってあるの?」
「いいえ。あての無い旅なんですう・・」
「ならいいじゃない。ねぇあなた?」
「まぁな。ここには他で何があったか詮索する奴は居ないから。少し過ごして気に入ったら相談して下さい。」
何の設定も考えてなかった所為で口ごもったコリティスを見て、村長はアタシ達に後ろ暗いモノがあると思った様ね。
何だか凄くいい人に見えるんだけど、コリティスの言う通り目が笑ってない。
「ちょっと気になったんですけどぉ、」
「なんですか?」
「この村って魚の絵がいっぱいありますねえ。」
「あぁ、あれね。この村の信仰なんですよ。」
「三神教じゃないんだにゃ?」
「ええ。棲むならそれも受け入れて貰わなくちゃならないですけど。」
「棲むかはまだ決められにゃいけど、何を崇めるかは自由にゃ。」
「柔軟に判断して貰えて助かるわ。三神教の神父さんなんて真っ向から否定してくるモノだから参っちゃったわよ。」
「神父は石頭だからにゃぁ。」
奥さんがクスクスと笑う。
やっぱり色っぽ過ぎる。
「ナミル達の仕事じゃなさそうだにゃあ。」
滞在中泊まる家、とりあえず借家と呼ぼうかしら。
その借家に帰ると直ぐにナミルがそう口を開いた。
「あの2人の言っている事が本当だったら、そうですねえ。」
「あの2人が嘘付いてると思うにゃ?」
「そう言う訳じゃないんですけどお、どこのどんな神父であれ、頭ごなしに否定しますう?」
「そんな神父なんてわんさか居るにゃ。」
「ねぇ、」
ルーシが口を挟む。
「神様っていっぱい居るの?」
「居ないにゃ?三神だけにゃ。」
「じゃぁ、魚を崇めてるのって異端じゃないの?」
「異端じゃないにゃ。三神以外を信仰する事事態は悪い事じゃないのにゃ。」
「私みたいな魔法をよく使う人は精霊を敬ってるし、武芸に秀でた人は昔の達人を崇めてたりしますからねえ。」
「ただあくまでも三神の教えが優先されるのにゃ。」
「じゃぁ、どうしたら異端なの?」
「そうだにゃぁ、教義に反したり、神を冒涜したりしらたかにゃぁ。」
「例えば今回の魚の絵が三神を表しているんだったなら、神を魚に例えるなんてって事になりますねえ。」
「ふーん。ボクには難しいや。」
大丈夫。アタシもよく分からないから。
「それを判断するのは私達なのでえ、ルーシ君は私を守って下さいね。」
「うん。わかった。」
「ナミルの事も守って欲しいにゃ。」
「ナミルなら1人でも大丈夫じゃないですかあ?」
「ひどい。ナミルも女の子にゃのに」
ナミルは頬を膨らまし女の子アピールをしたが、誰も反応しないのでこっそりやめた。
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