やっぱり特殊技能じゃないですか!
……私の内心の叫びが、声になって口から出るよりも早く。
マドック先生は、言葉を続けていました。
「ほら、俺の特殊技能ってさ、パワーとかスピードとか体力とか魔力とか精神力とか運とか、ステータスに関わる遺伝子を扱うだろう? だから生きている人間の体内にある、そうした遺伝子及びその遺伝子発現にも作用できるみたいで……」
マドック先生の言いたいことが、少しずつ私にも理解できてきました。
要するに、掌を打ち込んだ一瞬に魔力を流し込んで、その魔力で相手のステータスを弄っているわけです。
例えば今の場合、あちらの筋力とか防御力とかを下げることで、こちらの打撃の効果を高めたのでしょう。
魔力を介して行ったということは……。
「マドック先生! それって、相手のステータスを魔法で一時的に書き換えてるようなもんじゃないですか!」
「まあ、そうだろうな」
私の言葉を聞いて、むしろマドック先生は嬉しそうに、
「だからな。これが魔法だって言うなら……。魔法で、ステータスに関わる遺伝子に影響できるなら……。俺の特殊技能なんかなくても、この世界の魔法でも、ステータスに関わる遺伝子を取り出したり、ウイルスの遺伝子に組み込んだり出来るんじゃないか。俺は、そう思うわけだ」
……え?
それは少し、話が飛躍している気がするのですが。
「つまり、お嬢ちゃんのような医療系の魔法使いなら、がんばれば魔法で組換えウイルスが作れるのではないか……。この可能性、どう思う?」
あ。
先ほどからマドック先生が言おうとしていた、将来のプラン。
これのことだったのですね!
「それって……。つまり将来的には、私に『冒険者のステータスに関わる遺伝子を組み込んだウイルス』を作らせたい、と……?」
「そう、その通り!」
マドック先生は目を輝かせて、また私の肩に手を伸ばして、しっかりと握り締めました。その手から、得体の知れぬ熱意が伝わってくる勢いです。
「お嬢ちゃん!この世界の魔法使いでも可能な組換えウイルス作製技術を、 俺と一緒に開発して欲しい! 成功した暁には、お嬢ちゃんは、俺の後継者第一号になるわけだ!」
私が、マドック先生の後継者に……?
いや、話の流れ的には、理解できるのですが。
世の中には、頭では理解できても心では追いつかないことだってあります。
だから。
「えええええええっ!」
私の口からは、驚きの言葉が飛び出してしまいました。
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