いちアニマルとして

きりたつみき
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【エジソン】 モルモット オス 4歳 -8-

公開日時: 2021年3月22日(月) 19:32
文字数:791

その日の夕飯後に、皆にお願いをしようという話になった。 

 

なんと伝えればよいのだろうか。ある少年の心を知りたいから、彼をもう一度ここに呼びたいなどと言えば、馬鹿にされるのは目に見えている。だが、噓をついたところで、彼をここに呼ぶために念じる、という実験を伝えることができなくなってしまう。 

 

正直にいったところで聞く耳をもってもらえない、嘘もつけない。どうすればよいのか。 

 

私は今まで孤独でも全く構わないと感じていたし、事実、その意見はつい最近まで変わることはなかった。 

 

だが、この場面になって初めて他者の力が必要だと感じてしまっている。いや、私はそもそも孤独などではなかった。ぴーたろうとちゃちゃみという素晴らしい仲間がいたのだ。私が本当に孤独だったとしたら、私は私でなかったとさえ思う。 

 

と、また風呂敷を広げすぎた。今は、皆に協力してもらうために、どう伝えるかだけを考えるべきだ。食事も喉を通らない。 

 

「あなたが今考えていることはわかるわ。正直に伝えればいいのよ。私達にしてくれたように。それで私達は協力する気になったじゃない。」 

 

「そのとおりだよ~。」 

 

当たり前のように私と接してくれていた二匹の存在を、これほどまでに暖かく感じることは今までなかった。否、当たり前すぎてこの暖かさに気づけていなかったのだろう。私は、そんな自分自身が猛烈に恥ずかしくなった。 

 

「ありがとう。そうすることにしよう。」 

 

二匹はぽかんとしている。私だって礼くらい言う。 

 

「よし、行ってくる。」 

 

「皆の者、実は折り入って頼みたいことがある---」 

 

 

 

先ほど食べていなかったレタスを思い切り食べる。安堵は空腹を招くものなのだ。 

 

明日からは総勢11匹の実験がスタートする。これだけ大規模な実験だ。あの少年もきっとまた来るだろう。 

 

「エジソンがあんなこと言うなんてね。」 

 

「うん、驚いたけど、僕も同じ気持ちだな。子どもたちの笑顔は大好きだもん。」


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