周囲の声援もさっきまでとは比べ物にならないほど飛び交ってくる。
「かわいい美少女だな──」
「いいじゃん。見たことないけど素敵」
ぶりっ子アイドルみたいなそぶりだけあって、受けはすごくいい。
「みんな、こんなに大勢の人が応援してくれるなんて、本当に嬉しい」
まるでアイドルのようなそぶりで、観客たちを魅了していく。そしてくるりとターンをしてからウィンクをして叫ぶ。
「この会場の中で一番かわいくて、優勝にふさわしいのは誰かなー」
「「ローチェちゃんでーす」」
「あはっ。だよねだよねだよね~。一番かわいくて魅力的な僕が優勝するのは」
「「ローチェちゃん!!」」
すごいな、観客たちをこんなにも魅了するなんて。そしてその後も猛アピール。1つ1つがあざとくてかわいい。会場がヒートアップしているのがわかる。
「さてそろそろ、お時間となります」
司会者の言葉を聞いてローチェは、最後の言葉を叫ぶ。
「じゃあみんな。僕が優勝するために投票、よろしくねー」
観客たちは彼女に大きな声援を送る。最後に投げキッスをして彼女はこの場を去っていく。
「強敵になりそうね」
「そうだねレテフ」
全くだ。確か次は俺の番だったな。気合を入れていこう。
そして俺の番になる。
会場に上がった俺。
「は、恥ずかしい……」
観客たちの視線が吸い寄せられるように俺に向かって集中する。
やっぱり恥ずかしいい。体は震え、顔は真っ赤、必死で胸と股を隠す。できるだけ観客と目を合わせないように視線を逸らす。
とても演技どころではない。司会のお姉さんも若干おろおろしているのがわかる。
「じゃ、じゃあアグナムさん。アピールタイムの時間です。存分に自分の魅力をアピールしてください。」
そしてアピールタイムが始まる。みんなの視線が集まるのって、本当に恥ずかしい。
「かわいい~~。水着もエロエロで、セクシー」
「恥じらってるのがかわいいよね」
「アグナムちゃん。強いだけじゃなくてかわいい──」
「ぜひ息子の嫁にしたいのう」
ローチェと同じくらい、下手したらそれ以上の大声援がこの場を支配する。
当然だ、マイクロビキニなんて、裸に近いくらい露出しまくりの水着を着ているのだから。
と、と、と、とりあえず何かしゃべらなきゃ。
「あ、あ、あの──。俺、アグナみゅ!」
し、しまった、あまりの緊張で噛んでしまった。
「あいつ噛んでるよ」
「そういう所もかわいいよね!」
そしてどこからかクスクスと笑い声が聞こえだす。もうアピール止めたい……。
それでも俺は作り笑顔を浮かべ、顔を引きつらせながらアピールを続ける。
「俺、みんなに認められたくて。こんなかわいい水着を着てみました。かかわいいかにゃ?」
会場全体が盛り上がり、ボルテージも最高潮になる。観客からも「世界1かわいい」「お持ち帰りしたい」など、俺に対して高い評価をしているのがわかる。
その後も、恥ずかしさに耐え、言葉を噛みながら、何とかアピールをしていく俺。
永遠にも感じたこの時間も、ついに終わりを告げる一言が聞こえだす。
「ではアグナムさん。最後となります。何か一言お願いします」
「こんな俺だけど、みんな投票よろしくねー」
半ばやけくそ気味に叫ぶ。観客たちからは大歓声が俺に浴びせられる。
そして俺は、くるりと半回転して控室へ。やっと終わったんだ。
すると観客席にいたおじさんが一言。
「アグナムちゃん、ケツ見えてんぞー」
そうだった。マイクロ水着は、後ろも最低限しか隠されていない。お尻が丸見えになっていたんだ。
最後という言葉に緊張の糸が切れていた俺。恥ずかしさで心がいっぱいになり、控室に一目散に走っていく。
控室で縮こまり、座り込む俺。
本当に最悪だった。俺は自分の体を、見知らぬ大多数の人たちの人たちにさらして性的快感を覚えるような人種じゃないんだぞ!
そして体を震わせていると、身体に布のようなものが羽織られる感覚が
そして投票が始まる。観客たちは思い思いに素敵だと思った女の子たちに投票し始める。
「この大会はの5位以上は入賞者です。それでは発表します」
まず5位から3位の名前が発表される。ちなみに4位はサナだった。明るい笑顔と、スタイルの良さ、人当たりの良さが評価されたのだろう。
「あとは2位と1位です。ちなみに得票数はかなりの接戦だったので同時に発表いたします。まあ、この場にいたならだれなのか一目瞭然ですけどね」
盛り上がり、誰と誰だ?
するとリヒレが俺に耳打ちしてくる。
「多分、アグノムさんとローチェさんのことだと思う。私、見てたけど2人の時だけ盛り上がりもボルテージも全然違っていたよ」
そ、そうだったのか。まあ、結果を見てみよう。
「水着大会コンテスト。優勝は──アグナムさん。準優勝はローチェさん!!」
えっ、俺が優勝?? 本当に優勝したんだ。
「ローチェ選手と僅差での勝利です。なんと10票差。やはりあの刺激的な水着が印象的だったのでしょうか」
そ、そうだろうな。俺も来ていて恥ずかしかったし。後はローチェだ。そして少し離れた所にいるローチェに視線を向けると……。
「何? この僕が、負けた?」
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