俺はその連続攻撃をかわしながら一気に接近。大きく飛ぶともう一つの首を切り落とした。これで首はあと1つ──。
そう思った瞬間、俺の背中にぞくりと冷たいものが触れる感覚。
なんと1番最初に切り落としたはずの首が、ほとんど再生を終えて大きく口を開いていたのだ。
肉体などの再生をやめて、再生能力を1つに集中させたのか。どちらにしろこのままでは直撃は免れない。
やってみるしかないか。
賭けに出た俺は、無理な体制のまま自身の剣を振りかざす。果たしてうまく攻撃を打ち消せるかどうか。
シャイニング・フレア・プリズムダスト・エンブレス
「でも、体制がよくない」
サナの言葉通り、放たれた|幻虚獣《ホロウ》の光線を打ち消すように放つが、無理な体制で放ったためかためを作ることができず威力はそこまで高くない。
なので完全にしのぎ切ることはできず、攻撃を受け、肉体は半壊した建物にたたきつけられる。
魔装状態では体内に魔力がある限り肉体が傷つくことはないが、その時の激痛が全身に俺を襲う。
けどまだ動けないわけじゃない。
「アグノムちゃん?」
「だ、大丈夫」
間一髪直撃をかわし冷や汗をかく。危うく消し炭になるところだった。
しかし、こいつらただの獣じゃない。学習能力があるのかこいつ。
そして|幻虚獣《ホロウ》は3つの首を俺の方に向けるとこっちを開き始めた。また攻撃が来るのだと理解する。
するとサナが叫び始めた。
「私だって、戦う」
すると、サナは自身が持っている杖を振り上げ──。
「フレッシュ・オレンジ・サンライズ・シャワー」
その杖からオレンジ色の遠距離攻撃が|幻虚獣《ホロウ》に向かって放たれる。
ドォォォォォォォォォォォォォォン!
再び首の1つが吹き飛ぶ。
サナの攻撃で|幻虚獣《ホロウ》は大分消耗している。ここで俺が攻撃を叩き込めば勝負は終わりだ。
俺の全力。回復魔法が追い付かないくらいの力、見せてやる!
俺はすぐに立ち上がり剣に魔力をこめる。それは今までにないくらい最大級の魔力だ。
「全員下がれ、巻き込まれるぞ!!」
集いし希望の光よ、その思いを結集させ、新たな希望を照らし出せ!!
スターダスト・ボルテックス・エアレイド
俺の剣から強力な魔力が放たれる、それは流星群のように無数の星の形をしていてそれが|幻虚獣《ホロウ》に襲い掛かる。
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!
ギュォォォォォォォォォォォォォォォォォ──!
周囲一帯を消し炭にするような大爆発。断末魔のようなうめき声を上げながら|幻虚獣《ホロウ》の肉体がダメージを受ける。
回復速度を超えた超火力。後は仕上げだ。
悪あがきのように中央の首の骨格が少しずつ回復しようとしているのがわかる。
だが目がないということは何も見えないはず。これで終わり。
俺は再び飛び上がり、|幻虚獣《ホロウ》の首をすべて切断。
ぼとりと首が落ちる。
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──!
するとさっきとは違い、回復するような動きは見せず、蒸発するように|幻虚獣《ホロウ》は消滅していった。
「とりあえずこれでひと段落っと」
体に疲労を感じる。大分魔力を消費したみたいだ。
「ア、アグナムちゃん。大丈夫?」
「まあ、なんとかね」
作り笑いをしてサナに言葉を返していると。
ガバッ!
誰かが後ろから抱きついてきた。驚いてびくっとする俺。
「アグナムさんすごいね~~。あの|幻虚獣《ホロウ》をほとんど一人でやっつけちゃうなんて~~」
「アグナムさん……。強い……です」
抱き着いてくる魔法少女たち。ある魔法少女は腕に抱きつき、とある魔法少女は後ろから引っ付いてきて来る。
背中には柔らかい水風船が2つくっついた感覚。また胸が当たってるよ……。
っていうか、安心するにはまだ早い。いるはずだ。大型の化け物には。
「みんな待って、術者がいるはずだよ。喜ぶにはまだ早いよ!」
サナの言葉にやはりと俺は感じた。俺もそう考えていたんだ。術者を捕まえないとまた|幻虚獣《ホロウ》を召喚されてしまう。
「そうだ、どこかにいるはずだ。探すのを手伝って」
「あ、あれじゃない?」
魔法少女の1人が指をさしたその先。
そいつを見て俺が剣を強く握りしめたその時──。
「ちょっと待て。アグナム、俺と戦え!」
そして俺の視線の先に現れた人物。その姿に驚愕し、立ち止まる。
「お前、この世界にいたのか」
前方の家屋の屋根に腕を組みながら仁王立ちしているその姿。
ピンクと灰色の2色の髪色にツインテールの髪型。
黄色を基調とした女の子向けの魔法少女っぽい派手でかわいい服。
下はホットパンツ、むっちりとした太ももが半分ほど見えていて目のやり場に困る。
そして膝から下を覆う黄色と白のブーツ。
「ムエリット? なんで貴様がここにいるんだ?」
「アグナムちゃん。あいつの正体知ってるの?」
俺の叫び声にサナが驚く。そりゃそうだ。
「気をつけろ。こいつは恐らく最強クラスの魔法少女だ」
俺が以前の世界で人生をささげるレベルで戦っていたネットゲーム魔法少女大戦。
俺と同じくらい超人的な成績を残していている人物、それがこいつだ。
そいつはベスト5に残る好成績いることもさながら、もう一つ特徴があった。
最後に手に持っているのは──。
「スコップが武器。あんな魔法少女初めて見たわ!!」
「私も、どうやって戦うの?」
隣にいるピンク色の髪をした魔法少女が思わずつぶやく。そう、その通りだ。こいつの最大の特徴。
それは|左《・》|手《・》|に《・》|持《・》|っ《・》|て《・》|い《・》|る《・》|ス《・》|コ《・》|ッ《・》|プ《・》|で《・》|戦《・》|う《・》ということだ。
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