後ろ足で強く踏ん張り、決して退かず、斬撃を繰り出す。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
ドラパの右腕が俺の肉体を捕らえた。
そのままストレートに攻撃を繰り出してきた。
俺の障壁では到底に防ぐことはできないと本能で理解。攻撃がそのまま俺に直撃。
俺の体が数メートルほど吹き飛ぶ。
まずい、ここで倒れこんだらそのままドラパにサンドバッグにされてしまう。
身体が地面にたたきつけられる瞬間、俺はひざを曲げて踏ん張り身体を残す。
そこから背筋の力で上体を持ち上げ、曲げた膝の力を入れた。
そのまま後ろに一回転してすぐに体勢を立て直す。
直後、眼前に迫ったドラパの攻撃。畳みかけようとしているのがわかる。
しかし俺はそれを許さない。
その攻撃を負けないくらいの力で強引に押し返す。
決して受けに回らない。強引にでも攻めに出る。
集いし希望の光よ、その思いを結集させ、新たな希望を照らし出せ!!
スターダスト・ボルテックス・エアレイド
俺の剣から、赤い稲妻がドラパに放たれる。
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!
「アグナム、無茶苦茶だぞ」
「けどどっちも気迫がすごいな。こんな戦い、初めて見たぞ──」
周囲の観客たちは、俺たちの戦いを見てただ驚いている。当然だ。
今までの大会や、ここでの戦いは、いわばスポーツのようなもの。
真剣ではあるが、存在をかけているまでにはいっていない。
しかし今は違う。俺もユピテルもドラパも自身の存在をかけて、文字通り全力で戦っている。
気迫も、パワーもいつもとは比べ物にならない。
「アグナム。その意気だ! 決して逃げるな!」
ユピテルも、考えていることは一緒のようだ。
当然だ。
そして俺の強引な攻め。徐々にペースを握り始める。
「なるほど。さすがは貴様で。だが、勝つのは私だ!」
ドラパも負けてはいない。攻撃を受け、悶絶した表情の中で強引に攻撃をはじき返してくる。
俺は予想外の行動に一瞬驚いてしまう。
粗削りで、力任せだが、その一撃一撃がとてつもなく重い。
彼も、この戦いに命を懸けているのがわかる。
それでも、勝つのは俺だ。
俺は、この世界に来て大切なものを手に入れた。
サナもレテフも、右も左もわからない俺に友達でいてくれた。
ユピテルは、最初は敵だったけれど途中から分かりあうことができた。
街の人たちとも、うまくいかないこともあったけれど最後は分かりあえた。
そして、これからは一緒に街のために頑張ろうと強く誓った。
だから、こんなところで負けるわけにはいかないんだ!
「うわあああああああああああああああ!」
俺は大声で叫び、一気に突っ込む。
ドラパもまたしても俺に殴り掛かってくる。そして互いの魂が詰まった攻撃が衝突しそうになる。
その瞬間──。
くるりと回転してその攻撃を受け流す。
さっきまで力のぶつかり合いだったせいかドラパは予想していなかった。
「くっ、貴様卑怯な真似を──」
「卑怯って、これは真剣勝負だ」
当然だ。これはスポーツなんかじゃない。街の運命をかけた真剣勝負。
絶対に勝たなきゃいけない戦いだ。
だからその程度の駆け引きは当然。
やっとできたチャンス。俺はそのまま前に突っ込む、そこにあるのは攻撃を流され無防備になっているドラパの胴体。
俺はその胴体に向けて剣を振りかざす。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「なんの!」
しかしドラパも黙ってはいない。
魔力を防御に回し対応。俺の攻撃は致命傷にはならない。
──が、流石に無傷ではいられなかったようで衝撃にドラパの肉体が一歩後ろにずれた。
そのチャンスを俺は見逃さない。
俺は一気にドラパに向かって突っ込む。
もうここまで来たら下手なテクニックや小細工なんていらない。俺たちの想いや気持ちを、この剣に込めてすべてをぶつけるだけだ。
ドラパも魔力を使用し強引に体勢を立て直してきた。
「アグナム、これが最後だ。お前の想いを全力でぶつけてこい!」
ユピテルの言う通り、俺とドラパは自分の全力をぶつけ合い最後の一撃を繰り出す。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ」
ユピテルもサナもレテフも大声で叫ぶ。
みんなの想いが詰まったこの一撃、絶対にドラパの心臓に届かせて見せる、
そして二人の攻撃が衝突。これで打ち勝った方がこの戦いの勝者。
それは、残りの魔力からも理解できていた。
これが最後の一撃。俺たちの想いを込める攻撃を下す。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「我の一撃、受けて見よ!」
互いに全力賭けた一撃、これで勝った方が戦いに勝利するというのは雰囲気から理解できた。
俺の全力の斬撃を、ただ見舞う。
ズバァァァァァァァァァァァァァァァ──。
俺の、みんなの意思が詰まったその一撃は、ドラパの攻撃を一瞬ではじき返し、彼へと直撃した。
「バカな、我が破れるなど──、あってはならぬ」
「これで、勝負はあった」
何とか、ギリギリだったけど勝った。
その事実に心から安堵していると──。
あ、あれっ?
スッと全身から力が抜け、その場に倒れこむ。
魔力も、ほとんど残っていない。
本当に自分の、いや、みんなの力をすべて使いつくした戦いだった。
そして同じように倒れこんでいるドラパの姿。
「バカな──、この私が、貴様たちに敗れるなど──」
肉体からはもう魔力を感じない。おそらく、もう戦うことはできないだろう。
「しかし、忘れるな。我らは完全に滅びたわけではない。貴様たちが争いあう限り、またこの力は現れる」
「わかっている。けれど、俺がいる限り、平和を守りたいという願いを持った人たちがいる限り、絶対にそんなことはさせないよ」
俺は自信満々の表情でそう答えた。
その通りだ。この闇の力、再び現れることだって十分にありあえる。
この街の脅威は、まだ終わったわけじゃない。
けれど街の人たちだっている。魔法少女のみんなだっている。
大変かもしれない、けれど、みんなで力を合わせて頑張っていこう。
すると俺の体がすっと持ち上がる。
首の下とひざの裏に柔らかい感触。抱きかかえられたというのがすぐに理解できた。
お姫様抱っこといいやつだ。
「レテフ──」
レテフだ、隣にサナもいる。
最初にあった時は、俺がレテフをお姫様抱っこしていた形だったから、逆の形だ。
「お疲れ様。私のアグナム」
「アグナムちゃん。すごいね。おめでとう」
「私の」は余計だけど、助けに来てくれたのはありがとう。
レテフは、うっとりと幸せそうな表情をしている。
「じゃあ、医務室へ行きましょう。ユピテルもそこにいるわ」
レテフの言う通りだ。俺たちは激しい戦いで体力も魔力も消耗してしまった。
なので俺たちは医務室へと向かっていった。
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