その発言に俺達は驚く。
「何、それを教えてくれ──」
すると、その人はしばしの間言葉を詰まらせてしまう。そしてどこか言いずらそうに目をそらしながら話し始めた。
「裏の闘技場ってのがあるんだ。非合法で裏世界のバトルというやつだ。お前たちが闘技場でやっている行儀のいいバトルとは違い、賭博行為をしたり必要以上に相手を痛めつけて、それを楽しんだりしている趣味の悪いバトルだ」
そ、そんなことがあるのか。
「噂で聞いた事がある。違法なバトルで魔法少女が傷つくことを楽しんでいる趣味の悪いやつらの集まりだ」
ユピテルの辛辣の言葉に、男の人は言葉を詰まらせてしまう。
「ユピテル、そこまで言わなくても──」
「いいんだ。実際俺もストレス発散に見に行ったり賭博をしていたりしていたしな。んで、あの女を見かけたんだ。見たときは、目を疑ったぜ。あいつ、貴族出身なはずなのに、こんなアウトローな場所にいるんだもん」
「それは、いつごろからかな?」
「この前だ。それまでは全く見かけなかった。アグナムとの戦いがあった直後から、急に闇の闘技場に現れるようになったんだ」
「あいつ、違法行為をするところまで落ちていったのか──」
正直、信じられない。カグヤと戦ったりはしたが、そんな勝つために手段を得編んだり、違法な手を使ったりするやつじゃなかった。
何が、彼女を変えてしまったのだろうか──、それも聞いてみたい。
「ありがとう、いい情報だったよ。でも、闘技場へ行ったりそこで選手として戦ったりするにはどうすればいいんだ?」
「知人に案内人がいるんだ。アグナムの事推薦してもらえるように頼んでやるよ」
闘うことになるのか。正直、前回は勝ったけれどいつも勝てるかといわれると自信がない。
それくらいカグヤとはギリギリの勝負をしていた。
次闘っても勝てる保証なんてない。それでも、行かないわけにはいかない。
「それは助かった、ありがとう」
「こっちこそ、ごめんな。ひどいことをしちまって、もう、こんなことしないからよ……。
どうしてこんなことになってしまったのかは、直接聞きださないとわからない。
カグヤが覚悟を決めているというのがなんとなくだけどわかる。
アイツのところに行って、直接聞きだしてくる。それ以外に道はない。
行こう、カグヤの元へ。
そして男の人は去っていく。
それから、サナと子供たち。
「サナちゃん、ありがとう。僕たちも、役に立ててくれて嬉しい」
「こっちこそ、ありがとうね」
互いに感謝しあうそのその姿。以前の関係では見られなかっただろう。
さっきの男の人を見て思ったのだが、街自体が変わり始めているように思える。
「また私たち、サナちゃんの役に立ちたい」
「──わかった、これからも、よろしくね!」
子供たちの元気な言葉に、サナは自身を持って言葉を返した。
以前ならば、子供たちが同じことを言っても「危ないからダメ。ここは私達がやる」と変えしていただろう。
これからはサナや俺たちが一方的に助けるだけではなく、互いに助け合い、困ったときには力を出し合うような関係になっていくだろう。
俺も、それに関しては力を貸していくつもりだ。
「サナお姉ちゃん。じゃあねぇ──」
そう言って子供たちは去っていく。満面の笑み、自分たちが街を守る一翼を担ったという事実に自信を持ち始めたのだろう。
「みんな──、また会おうね!」
これからは、今までとはまた違った未来が、彼らの待っているだろう。
それを見るのが、とても楽しみだ。
最後、どこか物欲しそうにしているやつが一人。
レテフだ。
顔を赤くしてもじもじとしながらこっちを見ている。
「私にも、ぱふぱふ、してほしい。」
まじかよ、あのぱふぱふ、記憶に残っていたのか。目をキラキラさせながら俺をじっと見てくる。
さすがに抵抗はある。
けれど、今回はレテフがいなかったら勝つことはできなかった。
街のためにレテフが必死になって戦っているのは理解できた。
だから、たまには恩返ししてあげたい。
「しょうがないな……、少しだけだよ」
俺はレテフのほほをやさしくつかむ。
そしてゆっくりとその顔を俺に向かって近づけ──。
彼女の顔を俺の乳房にちょこんと置いた。彼女の顔が完全に俺の乳房にうずめられる。
ちょっと、サービスしてあげよう。
そう考え顔をゆっくりと揺さぶる。俺の胸もそれに応じるようにゆっくりと動く。俺の柔らかい胸を感じられるように顔を適度にひきつけゆさゆさと動かした。
そして胸を押し付けていくうちに不思議な気分になる。
自分のおかげでレテフが気持ちよくなっていて喜んでいるのを見ると誇らしい気持ちになり、もっと彼女に尽くしてあげたい。もっと喜んでもらいたい、彼女のためにいろいろしてあげたい。
そんな気持ちになっていく。
よくわからないけれど、母性本能というやつだろうか。
レテフ、俺の気持ち置け取ってくれよな。俺の愛情、たっぷりと味わってくれ。
数十秒ほど経過しただろうか、俺はゆっくりと俺の乳房からレテフの顔を引き離した
蕩けたような表情で顔を真っ赤にしている。
彼女は、完全にフリーズしてしまった。そして──。
「レテフ、鼻血出てる!」
その通り、レテフの鼻からとろとろと血が垂れているのがわかる。慌ててハンカチを取り出し、彼女の花を抑えた。
意外だな、もっとがっついて顔を埋めて胸をもんでくると思ったんだが。
あまりのショックに彼女の反応が全くない。
レテフの肩を優しくゆすり、彼女の意識を戻す。
数回ゆすると彼女ははっと目を覚ました様に反応した。
「アグナム、ありがとう」
「別にいいよ、今回は特別だよ──」
ほんわかとした雰囲気がこの場を包む。
さっきまでの激戦が嘘のようだ。
そんな光景を目の当たりにしながら俺は決意する。
これから先、激しい戦いが続いていくだろう。負けを覚悟するようなことにだってなるかもしれない。
けれど、みんなが笑顔になるため、街のためにこれからも頑張って行こう。
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