「さあ、これで勝負ありだ……ニャ。観念しろ! ニャ」
俺が恥ずかしがりながらもなんとか叫ぶ。まずはみんなの言葉を取り戻させることからだな。
「まずは教えてほしいの。どうしてこんなことをしたの?」
レテフの質問にニャロロはうつむき始め、悲しい表情で目にうるうると涙を浮かべ始めたのだ。
「僕はもともと遠い地方の出身だったニャ、それでこっちに引っ越してきたニャ」
「けど、猫の亜人はこの街にはあんまりいなくて、ちょっと浮いちゃっていたニャ」
確かに特徴的だな。ギルドや街でもあんまり聞いた事なかったし。
「けど、僕にも好きな人ができたニャ。社交性も高くて、いつも僕のことを気にかけてくれて、とってもハンサムな人だったニャ」
社交性が高くてハンサム、以前の世界の俺とは正反対のタイプということか。
「それで、告白したニャ。だけど――ニャ」
「俺、別の魔法少女と付き合っているんだよね。それに、変な言葉を話しているのはちょっと――」
「つ、つまりニャロロちゃんが魔法少女を襲っているのって……」
「好きな人を奪った魔法少女が憎いことと、変な語尾って言われたのが悔しいニャ」
そしてニャロロは涙を浮かべながら感情をこめて思いっきり叫ぶ。
「みんな、みんな、み~~~~んな猫ちゃんになれいいんニャ!!」
そんなことが理由だったのか、半ばあきれる俺。
「──つまり自分の語尾がコンプレックスで好きな人を奪われた腹いせでこんなことをしていたってことでいいんだね」
「そうニャ。みんな、私の事をいじめるニャ。だから私は決心したニャ。みんな猫語にしてしまえばいいと思ったニャ」
しかしどうするか。まずはみんなの言葉を取り戻させるとして、この子だ。
腕を組みながらしばしの間考える。
とりあえずこの方法で行くか。
俺はニャロロに接近、至近距離まで距離を詰める。
「あの、俺はその語尾、変だと思わないよ……ニャ」
「お、お世辞なんかいらないニャ、このせいで周りからは変な目で見られるし、恋は実らないし」
するとサナがニャロロに強いまなざしを送りながら叫ぶ。
「そんなことないよ。その語尾、とっても個性的だよ。猫耳ととても合っていてかわいいと思うよ」
「私もサナと同感よ。とても個性的で素敵よ」
サナ、レテフ、ナイスフォロー。
「俺もとってもかわいいし、個性的だし。俺は、好きだと思うよ」
するとニャロロははっとし始め言葉を失ってしまう。
ポッ――。
そしてそうつぶやいたあと顔をほんのりと赤くしたまま俺を見つめてくる。熱でもあるのかな──。
とりあえず確かめてみよう。
「だ、大丈夫? 顔赤いよ」
「大丈夫……ニャ」
どこか視線が定まらずふわふわとした感じになっている。大丈夫かな──。まさか……。
「えっ──」
俺のおでこをニャロロのおでこにくっつける。キスが出来るくらい顔と顔が接近。どれどれ熱は無いな。
「何をするニャ」
さっきより顔が真っ赤、リンゴみたいになっている。
あわあわと手を振り否定する。まあ、あの様子なら大丈夫だろう。
するとレテフはフッと微笑を浮かべ、話しかけてくる。
「あなた、結構罪な魔法少女ね」
「ど、どいうこと?」
言ってる意味がよくわからない。まあ、大丈夫そうだし、猫語になった人たちを治すことから始めよう。
そんなことを話すと、まずニャロロはリヒレと向かい合う。そしてニャロロが手を貸さすと、彼女の手が灰色に光始め──。
「これであなたは普通の言葉遣いができるはずだニャ」
「普通の、言葉? あっ、本当だ、やった……」
レテフがうれし涙を浮かべながらぴょんぴょん跳ねる。よほどうれしいのだろう。
「とりあえず俺は後でいいからほかの人たちを助けるニャ」
「それでは、行きましょう」
そして俺たちはニャロロに襲われた人たちの言葉を取り戻しに行った。
歩きながら俺たちはニャロロにいくつかの質問をした。
「そういえばあなたはどんな術式が使えるの?」
「レテフさん、だっけ、僕はステルス系の術式が使えるニャ。魔法を司る部分に作用して、魔法少女だけ私の事が視界に入らなくなるニャ」
「だから、今までの魔法少女が襲われた時は姿かたちが見えなくて、リヒレちゃんが襲われた時は姿が見えたんだ」
サナの言う通りだろう。そして魔法が使えないリヒレには姿が見えたと。
そして1人づつ術式を解除していく。
「言葉が、戻ってる。やったぁ」
「うれしいぴょん。やっぱり猫なんかよりウサギだぴょん」
みんな飛び跳ねるくらい喜んでいるのがわかる。
街中を回りきってすっかり日も暮れた夜。
街の広場の前。まだ術式が解けていないのは俺1人となった。
「じゃあ、あとはアグナムさんだけニャ」
「じゃあ、よろしくね……ニャ」
そしてニャロロは右手をかざし、俺に魔力を送ろうとするが──。
「ニャロロちゃん、どうしたの?」
サナが心配して声をかける。その言葉通り、ニャロロは腕に力を入れて魔力を送ろうとするが、全く俺に魔力が供給される気配がない。
「あれ、治ってないニャ」
彼女の表情を見ても、演技でないということはわかる。そして俺の中に1つの予測がひらめきぞっとする。
「ごめんなさい、その、魔力が切れちゃったんだニャ」
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