その攻撃、カグヤと一戦交えた後とは思えない程圧倒的で、ケオスは防ぐのが精一杯だ。
俺は、迂闊に手出しができない。下手に向かっていって同士討ちにでもなったら目も当てられないからだ。
ケオスは最初の一撃をしのいだものの、返す刀で二手、三手続けざまに攻撃を見舞う。
「さあ、さっきまでの威勢はどうした。もっとも、攻撃に移らせるつもりはないがな──」
その言葉が根拠のない自身でないというのを証明するように、剣技ではユピテルがケオスを圧倒していた。
俺も負けずに反撃、彼の猛攻を何とかしのぎつつ、何とかタイミングを見つけて彼の攻撃を上にはじいて全力で懐へもぐりこむ。
「くらぇぇぇ!」
一気に相手の懐へと潜りこむ。これでケオスの剣の間合いをつぶしたと思ったのだが、その瞬間ケオスは後ろに遠ざかってしまった。
「フッ、その作戦は想定済みだ」
余裕ぶった言葉とともにケオスが剣を大きく振り払おうとしたその時──。
「ハァァァァァァァァッ──」
速さと強さを兼ね備えたユピテルの剣が、ケオスの剣と交差した。
「俺を忘れるな!」
ユピテルは押されながらもうまく後退し、うまくダメージを逃がす。さすがだと言いたい。
そしてその剣を振りながら構えなおすユピテルに、ケオスはにやりと笑みを浮かべにらみつける。
「フッ、貴様ら、流石の強さだと言いたい」
「ああ。そして──、その力で貴様を倒す!」
「だがアグナム、その願いはかなわぬ!」
するとケオスの体が突然黒く光りだす。
そして防戦から一転無理やり反撃に転じ、剣を大きく振りかざしてきた。
技術などをまるで感じない荒々しい振りかざし。
さっきまでの魔力であればすぐに攻撃を受けて、カウンターを見舞っていけるのだが
「な、何だこれは!」
「どうしたユピテル、さっきまでのへらす口はどうした。我を倒すのだろう、くちだけのことばだったのか?」
俺もユピテルもその威力に、身体を後方に吹き飛ばされてしまう。
すぐに起き上がる俺たちに、追撃してくるケオス。
まるで威力が違う。攻撃を全く受けきれない。
反射的にのけぞった俺の喉元を、ケオスの剣がかすめていく。
「させるか!」
ユピテルが剣を振りかざし攻撃を仕掛けるがその攻撃が簡単に対応されてしまう。
そして俺に向かってケオスの剣が襲い掛かる。
俺は攻撃を受けることができず、わき腹と右腕にをかすめる。しかし反応している暇などない。痛みをこらえつつうまく対応していく。
「ハハハ──、気持ちがいいぞ、貴様たちを一方的に蹂躙というのはな」
彼の手からはまるで津波のような魔力を伴った衝撃波が出現。
それが大波のように襲い掛かってくる。
俺達はその攻撃に強い身の危険を感じすぐに障壁を張る。しかし──。
「フッ、そんなおもちゃで我の攻撃をしのぎ切ることは不可能ぞ!」
「つ、強すぎる──」
あまりの強さに対応することができず。障壁は粉々に破壊される。
それでも俺たちはすぐに身を横に投げて回避。
ダメージは受けたものの、直撃だけは回避。全身からくる痛みに、足がもつれそうになるものの踏ん張りを聞かせ立ち上がる。
するとケオスが俺に向かって一気に突っ込んできた。
そのまま俺に向かって連続で攻撃をしてくる。反撃するスキがないくらい。
その瞬間、ユピテルが叫んだ。
「俺を放置しておくとは、いい度胸だな!」
そう叫び、突っ込んでくる。
その瞬間ケオスはスッと立ち位置を九十度ほど変えた。
ニヤリとした、何かを狙っていたような表情。
ケオスが何をしようとしているのか、俺は攻撃を受けながら左右に視線を向けた。
「し、しまった──」
俺はとある事実に気付く。
俺とユピテルがケオスから見て一直線上に存在してしまったのだ。
「かかったな。このタイミングを、われはずっと待ちわびていたのだ。 二人いっぺんに始末してやる」
そしてケオスは自身の剣に魔力を込める、今までこいつが出した中でも一番の魔力を感じる。
そしてそのままその剣を地面に突き刺す。その瞬間──。
「な、何だこれは
まるで衝撃波が津波になったかのように、高くそびえたつ。
「さあ、これで勝負は終わりだ
一瞬で障壁を破壊し、俺達に襲い掛かる。
ドォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
今までにないくらいの衝撃と大爆発が俺たちに襲い掛かる。
俺もユピテルも強く後方に吹き飛ばされ壁に激突。その瞬間、全身の感覚が一瞬でなくなるような痛みが走り、そのまま地面に倒れこむ。
本当に強い衝撃だったせいか、少し時間がたっても体を動かすことができず、感覚がない。
「どうした二人とも、威勢が良かった割にずいぶんあっけないではないか。まあ、所詮貴様たちの実力などこんなものだ。この我には、足下も及ばない。理解したかな?」
したくはない、けど実力が違いすぎる。どうすればケオスを倒せるのか、今の俺には考え付かない。
すると、隣に倒れこんでいたユピテルが、ケオスをにらみつけながら懸命に立ち上がろうとしている。
懸命に立ち上がろうとしているのはわかるが、腕がぴくぴくと震えている。よほど体力を消耗しているのだろう。
「ほう、ここまでダメージを受けて、まだ戦おうとしているのか──」
「当然だ!」
そしてケオスをにらみつけながら言葉を返した。
「黙れ、俺は、貴様などに負けん。俺は、貴様とは違う──」
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