敵の強さは直線的な戦う強さだけじゃないってことか。
そして──。
「よくわかってるねぇ、バタフは俺たちのこと、敵対視していたもんなぁ。だから魔王たちにエルフを裏切って一緒に世界を滅ぼそうと持ち掛けたときは簡単に首を振ることができた。役立たずでお花畑にいるお姫様より、力のあるやつを選ぶのは当然の選択肢だろ」
「女王様? バタフさん、王様だったの?」
するとバタフはうっすらと目に涙を浮かべ、答え始めた。
「そうです。私が滅亡した妖精たちの国ローラシア王国の……、力不足な王様バタフ……、でした」
「お前の側近にはもともと魔王軍への裏切り者がうじゃうじゃいる。裸の女王様だったってことだお前は」
そうだったのか、俺たちはただ驚くしかなかった。無念だろうな、守り切れなかったというのは。
「安心しろ、この世界も。同じようにしてやるからヨォ」
そして俺ははっと後ろを振り向く。すると俺たちが来た入り口の所が黒くに光始めた。
「お前賢いなぁ。相当な魔法少女だと見た」
口封じってことか。俺たちを逃がすつもりはないってことはわかった。
「|幻虚獣《ホロウ》の気配が後ろからする」
すると、数メートルほどのやや小さいクマやトラの形をした幻虚獣が数匹出現。
そしてそいつらの中心にいる|幻虚獣《ホロウ》、15メートルほどありイカに似ていて、9本ほどの職種を持っている。
明らかにあいつか1番強いのがわかる。
そして|幻虚獣《ホロウ》たちを包んでいる黒いオーラが強くなり始める。魔力の供給が強くなり、戦闘モードに入ってくるのがわかる。
バタフの体は、見てわかるくらい震えていた。滅亡させられたトラウマがよみがえっているのだろう。
「バタフ、伝えてくれてありがとう。その勇気、絶対に無駄にはさせない」
そして俺は剣に魔力をこめる。この戦い、絶対に勝つ。俺は幻虚獣たちをにらみつける。
「あいつは俺が相手をする。みんなは小型の幻虚獣を相手にしてほしい」
「え? でも私たちも協力したい」
「そうだよアグナムちゃん。一緒に戦おうよ」
サナとほかの魔法少女が心配そうに話す。その気持ちはうれしい。レテフも心配そうな表情をしている。けど──。
改めて外見を見る。9本ほどの鞭のような触手、イカに近い外見だが、どす黒いオーラがこいつの強敵感を醸し出している。
何かあったら守り切れる気がしない、身の安全を保障できない。
「まず俺は大人数で連携をとって戦った経験があまりない。だから数人で戦っても俺の攻撃が見方を巻き国恐れがある。それにこのクラスだと、万が一身の危険に襲われたら助けられる自信がない。わかってくれ」
ゲームではずっと1匹狼だったからな。仕方ない。
その言葉に2人はしぶしぶ納得する。まあ、勝てばいいんだ勝てば。
「あいつの名前はクラーケンよ。あいつにやられていった同胞の数は数えきれないほどよ」
バタフの言葉。なるほど、かなり強敵そうだ。
あいつから1番強い魔力を感じる、そして互いにらみ合い、戦いが始まる。
俺は一気に距離を詰める。すると相手は下半身に生えている触手を俺に向けてくる。
「思い出しました。そいつの光線はバリアを貫通して一定のダメージを相手に与えられる効果があるのです」
そんな効果があるのか。とりあえず体制を戻さないと。
そして俺が大勢直して立ち上がろうとしたその時。
「一足遅かったな」
スピアの言う通り、俺が立ち上がった瞬間4本の触手が2本ずつ両足首に絡みついてしまう。
しまった!!
何とか脱しようともがくが触手たちは両足をつかんだまま離さない。そして4本ほどの触手がさらにこっちに伸びてきて2本ずつ俺の手首に絡みつく。
「し、しまった!」
これで俺は手足すべてを触手によって拘束された形になってしまう。
|幻虚獣《ホロウ》は足に絡みついた俺の体をぐっと引き寄せる。身動きが取れない俺はどうすることもできず、尻もちをついてしまった。
この触手、ゴムのようにしなやかにできていてどうもがいても脱出できそうにない。しかもこの触手ぬるぬるとした粘液が出ていて、何かいやらしさを醸し出している。
ま、まずい、何とかしないと。
そんな必死にもがく俺の抵抗をよそに、触手は俺の意思を無視して肉体を操作し始める。
触手は俺の両足を頭のほうにくいっと持ち上げ横に広げる。
そして両足と体が折り重なるような形になる。スカートは地面にずり落ち、肉付きの良い太もも、そしてスパッツが幻虚獣から丸見えになってしまう。
そのまま足首をハンドルのようにつかみむ。残った1本の宿主は俺のスパッツの中心、俺の大事な部分を見ている。お前、何をしようとしているんだ?
さすがにまずい、これからこいつが何をするかを想像するだけで背筋が凍り付く。
幸い力自体はそれほどではないのと、左手に握っている剣はまだ手放していない。
その左手に魔力を集中させる。
何とか手を伸ばし、右手に絡みついている触手を1本切断する。
そして右手に力を籠める、よし、さっきより動けるようになった。
こいつらの触手はすべての触手が1つの意志になっていると思うくらい連携が取れている。逆を返せば1つでも切断すれば大きくスキができるってことだ。
そして剣を右手に移し替え、魔力をこめる。
触手たちもそれを察知したようで術式を打たせまいと腕を強く縛り付けるが、時すでに遅し。
全力をこめて強引に幻虚獣に剣先を向ける。
そして──。
「吹き飛べ!!」
スターダスト・ボルテックス・エアレイド
俺の剣から赤い稲妻が放たれる、大量の魔力が集まった雷。
強い魔力を感じる稲妻は1直線に幻虚獣に進んでいく。
|幻虚獣《ホロウ》は思わず障壁を目の前に作り出し攻撃を防ごうとするが──。
ガッシャァァァァァン!
障壁はガラス細工だったかのように俺の術式が直撃した瞬間に砕け散る。
そして俺の攻撃が|幻虚獣《ホロウ》に直撃。
グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ──!!
|幻虚獣《ホロウ》は断末魔のような叫び声を上げながら消滅し始める。
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