「では、始めようとするか……」もう勝利したかのように振る舞い、腰にある剣を抜く。
「あぁ……」ルイスも剣を構える。
ルーウェルの屋敷の庭で貴族の騎士に囲まれ、レイはその戦いをじっと見る。
【暴食】――
今になって妹がいい加減なことを言っていなかったことを理解し、その力をどうやって使うかを考えている。
「何だ、やっぱり来ないのか?じゃあ死ね!」剣を振り被り、赤い炎が刀身に宿る。炎属性を操り、刀身に流すという技術は凄腕と言われている。
ルーウェルの実力は知っているが、実際に戦ったことはない。
まぁ、貴族ならそれくらいできて当然であるが、あのクズに負けるわけにはいかない!
そしてルーウェルは炎を宿した刀身を大きく振る。
その類の剣撃は剣を振るうだけで属性の力が斬撃として放たれる。
「全部食べちゃうんだから、か……」レイの言葉を浮かべ、自身の力を意識する。
全部食べちゃう……。
ルイスの目の前にはもう既に炎の斬撃が迫る。
食べる……。
食べる?
食べれば……。
「ッ――」レイは普通のことを言っていた。
その瞬間炎斬撃は音もなく消え、熱風さえもルイスは感じなかった。
「なッ、何だ……消えたぞ!力が足りなかったか!?」刀身を睨み、自分の力に間違いがあると思い、もう一度炎を宿し、剣を振る。
再び炎の斬撃がルイスに迫り、同じ光景が流れる。
「なッ、何故だ!えぇい!あぁあ!」何度も振るうが炎の斬撃は決してルイスには届くことはなかった。
「な、何故だ!」叫び、混乱するルーウェルにルイスが口を開く。
「ルーウェル!もういいだろ、諦めてくれ……」俺は戦いたくなかった。貴族と戦い勝っても負けても地位には勝てず、人生を失う可能が考えるほど高かったからだ。
その言葉を聞いて、ルーウェルは怒る。
「な、何だと!貴様にこの勝負を諦めてくれなどと言われる筋合いはない!貴様こそ何故、攻撃をしてこないッそれは恐れているからだろう。それでも俺が勝ったということにしてしまえば!」
「ッ――」どこまでもクズであることに変わりわないということか。
そういえば、ルーウェルは俺を追放した張本人でもある。
ルイスは決断する。
このままでは負ける、どっちにしろ負ける!なら、大切な方を選ぶ!
「あぁぁぁッ――」力を振り絞り、剣を思いっ切り振るい、さっきより大きな炎の斬撃が迫るが、ルイスは届かない。
「おいッいい加減攻撃しろ!平民――」
バッ――!!
瞬きの間のなくルーウェルの腕が後ろに飛び、血が噴き出す。
「ギャァァァァァッ――――な、何だ!」ルーウェルが叫び、それと同時に騎士達が剣を抜く。
「レイ!」そう言い、手を伸ばす。
「お兄ちゃん!」レイも走り、抱き着く。
「貴様、人間か……」
「一瞬で腕が飛んだぞ!」騎士達は騒ぎ、ルイスとレイに警戒をする。
「これが俺の力だ……」
「そんな……どうゆうことだ……何で炎が消え、俺の腕がッ――」血が出るのを抑え、立ち上がる。
「人が何かを食べるように……この力は全てを糧とすることができるんだ。炎は単純に食べただけだ……そしてため込んだ力を放っただけだ……もういいだろルーウェル……」
さっきの攻撃は肉眼では見えず、ルイスはノーモーションで放つことができる。
「く……認めない!お前らそいつを殺せ!」
「おぉ!」
「やってやる!」騎士達はやる気であり、こちらに迫る。
「お兄ちゃん……」
「大丈夫だ……絶対に守る!」
「うぉぉぉぉぉ!」一斉に騎士が襲いかかる。大貴族が雇っている騎士で国直属の騎士よりかわ劣るがこの数では力を使わざる負えない。
「ハァァッ――」獣のような咆哮をした瞬間、騎士達の鎧など関係なく胴体もろとも斬り裂く。
「行くぞ!」ルイスはレイの手を掴み、敷地を出て、宿屋へと走る。
そして息を荒くし、レイに決断を告げる。
「お兄ちゃんは悪くないよ……」
「レイ……よく聞いてくれ、俺と一緒に――」
その瞬間、レイはルイスを抱きしめる。
「ッ!」
「いいよ、私お兄ちゃんとなら……どんな所でも、どんあ生活でも……」
「……あぁ、ありがとう……レイ」小さな胸の中でルイスは涙をこぼす。全てを知っている人の答えに心は温かなもので包まれる。
そしてここから始まる目覚めた力『暴食』兄と天才妹の旅が……。
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