刀を打つ。
この刀の中には【滴】がある。
この【滴】はとても頑固や。
せやからこそ、少し機嫌を損ねただけで簡単に消えてまう。
儚いもんや。
儂はその【滴】を壊さんよう、慎重に打つ。
本当はこいつにも、今より馴染む姿がある。
淀ませちゃァ、もったいねェ。
儂はこの【滴】が流れたい方へ流れられるように、少しずつ形を変えていく。
これが儂の仕事や。
「こんにちは」
ふと声をかけられる。
彼女や。
「今手が離せねェ。そこでいつも通りやっといてくれや。」
「うん」
彼女は椅子に座り、ナイフを手に取る。
そしてそのナイフで指先を切る。
血が滴る。
いつもの【献血】や。
儂はその光景には目もくれん。
今はただ目の前の【滴】に集中するだけや。
しばらくして、十分な血がたまる。
その瞬間、ピタッと血が止まる。
その指に傷の跡はない。
見慣れた光景や。
彼女は【癒し】の【滴】を持っとる。
「それじゃ、あとはよろしく。
これ、少ないけど仕事料ね。」
「ああ、まいどあり。」
儂は顔も動かさずに答える。
今、目の前の【滴】から目を離すわけにはいかん。
これは大金がかかった仕事や。
儂はこの頑固なへそ曲がりの気分を損ねんよう、慎重に研いでいく。
完成や。
儂はその刀を手に取り、目の前の作業台を斬る。
手ごたえなし。
作業台にも、一切の傷がない。
次に壁に掛けてあった牛革を斬る。
真っ二つに裂ける。
成功や。
さて、これで面倒な仕事は終わった。
あとは楽しい趣味の時間やで。
儂は彼女の置いていった金を取り、奥へしまう。
あの刀の仕事料に比べたら、端金もいいとこや。
貰えるもんは貰うんやがな。
そして彼女の置いていった血を見る。
きれいな【滴】や。
これを弄っているとき、心が透き通っていくような感覚になる。
次は【万能薬】の精製や。
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