ザシュッ!
ドーンッ!
突風が人を裂く音や、爆発が何かを吹き飛ばす音が響いとる。
全く騒がしい。
あの火を吹く剣も、風を切り裂く矢も、儂が作ったもんや。
つまりこれは、儂が金欲しさでバカ共の仕事を引き受けた結果ってことや。
このバカ共は、儂が敵国の仕事も受けていることが気に入らんらしい。
それで、儂を独り占めにしようと、二つの国が儂の住む町で戦争を始めよった。
自分だけが力を得たいってか。
もともと儂が与えた力やのに。
呆れた恩知らずや。
孫たちや若い連中も、儂を守ろうと戦い、死のうとしとる。
争いの焦点であるお姫様役が、こんな老いぼれとは、なんともつまらん話やんか。
長く生き過ぎたんやな。
儂はそんなもんになるつもりはない。
問題は、【これ】をどう隠すかや。
奴らの戦闘でできた地割れがある。
ちょうどええ。
儂は【これ】を、崖下に落とす。
ああいうバカに見つかるくらいなら、捨ててしまおう。
そして儂は移動して、この町で一番目立つ高台に座る。
バカ共の目当ては儂や。
ここならすぐに見つけるやろ。
懐から刀を抜く。
【不死斬り】や。
儂はその刀を見せつけるように掲げる。
光を反射して、刃が輝く。
その【滴】は暗く深く、どこか優しい。
美しいもんやないか……
我ながら、いい仕事をしたもんや。
儂はその刀を自分の腹に向け、刺し貫く。
大量の血が吹き出る。
もう止まらん。
この刀でつけた傷は、決して癒えん。
もはや【万能薬】を持ってきたとしても、手遅れや。
風や炎でうるさかった周囲が、徐々に静かになってく。
なんや、バカどもだと思っていたが、少しはわかってるやないか。
人の最期くらい、静かに送るもんやからな!
カカカカ……!
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