[しっかりしろ!]
父さんが私を心配している。
背中に地面の感触がある。
どうやら私は倒れたらしい。
[心配しないで。
大丈夫だから。]
[大丈夫なものか!
一体何があったんだ?]
[さっきと同じように、戦場が見えた。
女の人と戦ってた。
その人は仲間だと信じていた相手で、殺したくないと躊躇してしまって、
だけど仲間が撃たれて、血塗れになって、感情では助けたいと思うんだけど、
もう助からないとわかって、だから仲間の代わりに女の人を撃って、
死体を確認したら、
昔渡したプレゼントを持っていて、訳が分からなくて、
怒りや悲しみで泣きそうになって、
その感情が私の心に入ってきて……]
[わかった。ありがとう。
とりあえず今は休んでくれ。]
そう言って父さんは私の手を置く。
まだ心がザワザワしている。
きっとまた、私は泣いている。
言われた通り、少し休んでいよう。
どうやら、
おでこで触れた方がよく見えるのではないかという考えは正解だったらしい。
ただ、こんなに強く感情移入してしまっては、とても身が持たない。
それとも、アピロスさんが言っていたように、繰り返すうちに慣れるのだろうか?
休んでいるうちに、体は徐々に落ち着いてくる。
もう大丈夫そうだ。
私は体を起こし、立ち上がる。
[もう大丈夫なのか?]
[うん。
ただ、もう一回見るのはやめておいた方がいいかも。]
[もちろんだ。
それで、一つ聞いてもいいか?]
[うん]
[『撃たれた』とはどういうことだ?
武器で攻撃されたということだろうが、あまり聞かない表現だ。]
そうだ、私はあれが『銃』で撃たれたとわかるが、この世界の人には伝わらない。
どう説明しようか?
[他の人に触れた時にも見えたんだけど、鉄の玉を飛ばす筒のことみたい。
弓に似ているけど、弓よりずっと強力なの。
たぶん異世界の技術なんじゃないかと思う。]
[異世界か。
唐突な話だが、確かに予言にしては色々とおかしい。
母さんとクリシの言う通り、異世界で経験した前世なのかもしれないな。
それと、これから屋敷の人たちと触れて回るつもりだったらしいが、
それは止めておいた方がいい。
まだ病み上がりなんだ、無理はしないでくれ。]
たしかに、急に無理をして疲れたのかもしれない。
[わかった。それじゃあ部屋に戻ることにする。
心配してくれてありがとう。]
ふと母さんが私の手を取る。
[私もついていくわ。
貴女が心配だし、何か間違いがあってはいけないもの。]
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