気付くと俺はぽつんと、白い空間に浮かんでいた。
随分と空っぽな空間だ。
足踏みでもするように、足を動かすと俺が動いているのか、周りの空間が動いているのかどちらが動いているのかは分からないが、しばらくするとどこにでもあるような街路樹が見えてきた。道に並ぶ木の群れはところどころばっさりと根元近くから切られて年輪が見えている。その木々を眺めるように、おじさんとおばさんが佇んでいた。
“どうしたんですか?”
“いきばがなくて”
“居場所がない? それは困りましたね”
俺はぐるりと辺りを見回す。
“ここは空っぽだからもし良ければ”
おじさんとおばさんは、うっすらと悲しそうで困ったような顔から、ほんのすこし和らいだ表情になった気がした。
良かった。良かった。うんうんと頷いた俺は、また歩き始めた。しばらく歩くと雨がぽつぽつと落ちて来た。ピチャッとはねた水に、足元に水溜りが出来ていて草むらに足を踏み入れていたことに気付く。小さく動物の鳴声が聞こえた。傍らにはおじいさんが立っていた。
“どうしたんですか?”
“帰りたかったんです”
“帰る場所がない? それは困りましたね”
俺はぐるりと辺りを見回す。
“ここは空っぽだからもし良ければ”
おじいさんはほっと溜息をついたようだった。
良かった。良かった。うんうんと頷いた俺は、また歩き始めようとして傘でもないかと探したがその必要はなかった。気付けば、白い廊下、白い服を着た人間が行き交う廊下にいた。
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