「──わかった。ただし忖度はなしだ。しっかりと判断させてもらう。いいですね」
「構わない」
ウェイガン、ペタンは了承。それから長旅の疲れもあり、おもてなしや食事を受ける。
食べた言葉ない肉や、民族衣装を着ての踊り。
おいしい料理に華麗なダンス。初めて見る光景。
物珍しく面白かった。今日の査察に相当力を入れていたというのがわかる。
そして休憩が終わった後、査察を開始。
ペタンとフォッシュはウェイガンについて行き、いろいろなところを見回ろうとする。
「センドラー様も、一緒に行きましょう」
フォッシュに言われたのだが、後ろのセンドラーが──。
(まって、私達は私達でいろいろ見回りましょう。断って)
──そう。わかったわ。
私にはその理由は分からないけれど、考えがあっての言葉なのだろう。
申し訳なさそうに言葉を返す。
「ごめんね。こっちはこっちで見させて」
「──わかった」
ウェイガンはどこか気まずそうな表情になりながらも了承。
そしてウェイガンたちはこの場を去り、案内が始まっていった。
「じゃあ、私達も行くわ」
「はい!」
そして私とライナ、ミットも査察を開始した。
ウェイガンたちとは真逆な方向を、周囲をきょろきょろ見ながら集落を歩く。
そしてライナが、センドラーに顔を除くようにして質問する。
「センドラー様、どうしてですか?」
「何が?」
「ウェイガンたちについていかかった理由です」
「そうだニャ。なんでニャ?」
それは私も気になってたところだ。
センドラーは自信ありげな表情で答える。
「ペタンもフォッシュも、かなり優秀な人であることに変わりはないわ。けれど、ウェイガンが案内する以上。向こうに都合のいいことばかりしか言わないわ」
「確かに、そうですね」
「けれどペタンが勝手に動いたりしたら、彼の印象が悪くなる。だから赤の他人である私がやるの。彼らに、都合の悪いことを知るためにねぇ」
流石としか言いようがない。
彼らが取り繕っていない所を見てみたい。それは感じていた。しかしそれは同時に彼らの心証を悪くすることにもつながってしまう。
これから彼らと深くかかわっていくペタンはにそれをやらせるのは、避けなければいけない。
だから、私達がやるということか。
「さすがです。しっかりしたセンドラー様!」
意味ありげなライナの言葉。どっちの私かやはりわかってる。私は、ドジな方とかかな?
センドラーはその言葉に一瞬だけ眉をピクリとさせ、言葉を返した。
どこか引き攣っているようなそぶりで……。
「ま、まあ。私達は、彼らが案内していない場所を見たいの。じゃあ、行くわよ」
「はい!」
「はいニャ!」
そして私達は集落の中を歩く。
「ここね」
センドラーが中に入ったのは、集落の中で外れにある使い古している感じのゲル。
(じゃあ、中にはいったら替わって。私はいろいろ見るから、秋乃は中の人と話して)
(いいけど、何を?)
(適当に、世間話とか、何をしているの? とか──)
スッスッ──。
センドラーは私の返事を待つことなく、毛皮でできた扉をノックする。
そっと入口を開けると顔を覗き込むように入れ、話しかけた。
「お姉ちゃん。入っていい?」
「いいよー」
男の子らしき声が返ってくると、すぐにセンドラーは中へ。
(ほら、早く。替わって)
(あーはいはい)
人使いが荒いんだから──もう。すぐに人格を交代。
中、草でできた地面。大きなカバンのような物がいくつかゲルの隅に置かれている。
中心には、コボルトの子供たちがいる。数人が輪になって集まり、何かやっていた。
私は彼らの元に向かい、目線が合うように屈んでから話かけた。
「みんな、何をしているのかな?」
フッと笑みを浮かべる。
すると、一番奥で体育すわりをしていた小さな女の子がにっこりと笑って答えた。
「文字を読む勉強をしているの」
そしてそこには彼らの言葉であいさつや数字などの文字が描かれていた。
子供たちは、楽しみながら文字を指さし言葉にしていく。
みんな、興味津々そうに本を見て、不器用ながらも読んだり、声に出したり──。
そして、彼らが一生懸命文字を勉強している姿を見て、理解した。
(これなら、行けそう)
(私も、同感よぉ)
それから、私は座り込んで彼らと話す。
生活のこととか、どんなことを習っている事とか。
部族という単位で、教育を受けているらしい。
物を盗んだ時は怒られたり、何がいけないとか、何がいいとかしっかり教えられたこととか──。
ライナとミットも、楽しそうに子供たちと会話を楽しんでいる。
その姿や聞いた話を元に、私は感じた。
彼らなら、大丈夫だと。
(奇遇ね。私も同感よ)
私達はリムランドで政務と取っているとき、こういった少数民族と出会い、交流をとる者もいた。
彼らは部族や亜人単位で行動していて、わたしなりに色々感じた。
いろいろな人たちと出会っているうちに、彼らとうまくやっていくことの難しさが、よくわかるようになった。
まず彼らは、私達とは考え方や価値観そのものが違う。
争いや、受け入れ先でもめ事や争いをしてしまう原因にほとんどがそれだ。
ひどいと物の所有権という言葉自体が理解できず ケンカになってしまうことがあった。
しかし、彼らはそんなことがない。
支配層は、配下の人たちのことをよく考え、大切に扱っている。
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