兵士たちとの戦いが終わり、私達は一息つく。
徴用されていた村人たちは、突然の事態に周囲をキョロキョロしながら、私達に話しかけてくる。
「バルティカの人たち、倒したんですか?」
「ええ、ここの人はね。あなた達の平和は、私達が守るから」
「そ、そうですか……」
村人たちは、互いに表情をうかがうようにオロオロとしたまま。多分、いきなりの状況に戸惑っているんだろう。
私は、笑顔を浮かべてさらに言葉を進める。
「だからもう安心して。私達は、絶対に見捨てないから。例え亜人であっても」
しかし、反応が良くない。シーンと静まり返っている。
ちょっと、様子がおかしい。消極的というか、
すると、痩せこけていたオオカミの耳を付けた亜人の人が本音をこぼした。
「まあ、バルティカの奴らを追いだしてくれたのは感謝するけど……」
「なんていうか。別に、こんなことしなくても──な」
えぇ……。どうしよう。彼らの心がよく分からず。戸惑ってしまう。
すると、そんな私の前に出て来たのはフォッシュとライナだ。
「ちょっと、話を聞いてみましょう」
「……はい」
そしてフォッシュとライナが村人たちに接近して話を聞いていく。
もっと喜ぶと思ったんだけどなあ……
それから私はロッソさんの元に接近。
「ロッソさん」
「なんだ?」
「ちょっと、話し合いましょう。私の中で、気になることがあるんです」
ロッソさんは顎をぽりぽりと書きながら答える。
「──そうだな、様子がおかしい」
敵を倒しても私達のやることは終わらない。村のために、どうすればいいかみんなで考えよう。
夜。フォッシュやライナ、兵士たちと話し合いが行われた。
まずは二人が村人から聞いた事を私達に伝えてくる。
「疲れ切っていて、面倒ごとに巻き込まれたくないってのがこの村人の本音なんです」
「はい、もうどうにもならないから、放っておいてほしいとも言っていました」
なるほどね……。
長く奴隷として扱われていたせいで、自分たちで戦うということや、判断するということを忘れてしまっているのだ。
もともとバルティカのオオカミ族の達が支配していた時この地域は、彼らが密室で全てを決めていた。
彼らが政治に参加したり、意見を言う機会なんてなかった。
だから、自分達の言葉が通るなんて発想が全く無いのだ。
この場がシーンと静まり返る。
私達が 結局のところ、この土地をどうしたいかを決めるのはこの地に住んでいる人なのだ。
私達ができるのは、彼らの意見を聞いて、後押しするだけ。
無理に彼らの意見を聞かないで戦わせたところで、絶対にうまくいかないし、かえって反発を招くだけだ。
彼らが戦ったり、自分達で決めるという選択をしない限り私達は何もできないのだ。
私は腕を組んでう~~んとうなりながら考える。いいアイデアはないだろうかと……。
すると、センドラーが話しかけてきた。
(私に考えがあるの。変わって)
(わかったわ)
すぐに人格を交代させる。
私にはお手上げだけど、センドラーには何か策があるのだろう。
腕を組んでニヤリとした表情を浮かべながら、話し始める。
「私が演説して、みんなに訴えかけるわ。あなた達のことを絶対守る。だから、私達と一緒に歩もうって」
「センドラー様の、演説ですか?」
「そうよ」
その言葉に兵士団長のロッソが言葉をはさんでくる。
「できんのかよ」
「まあね。どうせ他に案なんてないんでしょ。だったらここは私に任せてよ」
周囲を見回すが、ほかに意見を言う人はいない。
「わかった。あんたの演説、よろしく頼むぜ」
「まかせなさい」
センドラーはウィンクをして笑みを浮かべながら言葉を返した。
その後、いろいろな話し合いが続いた。
どうやって人を呼び合つけるかやどんなふうに聞いてもらうかをについて。
何しろ村人たちは私達に対してそこまで関心があるわけではない。ただ来てほしいって言っても、人々は来るか不明だし、それだと人々は来させられているという感覚になってしまい、精一杯話したとしても心に届きにくくなってしまう。
「まずは、人々側から興味を持ってもらわなきゃね」
「そうだな」
「ロッソさん。考えがあるわ、とりあえず、外を歩いて、実際に現場を見て考えましょう」
そう言って私たちは外に出て、村を歩き回る。どこで演説を行えばいいか探し始めた。
そして、数分ほどたって、兵士の一人がやってくる。
「いい場所がありました」
そこは、村の中心から少し外れた場所にある広い広場。
埃被った椅子に、ぼろぼろのだれも使っていない家屋に囲まれている、どこか寂れた雰囲気。
(ちょっと、寂しい雰囲気ね。本当にここでいいの?)
センドラーは私の言葉を聞かずに村人に話しかける。
「ここ、人通りは?」
「ありますよ」
仕事場や店から住宅のあるエリアへの通り道だとか。
「ダメなんですか?」
「いいえ、訴えかけるんだから場所は広い場所がいい。悪くないんじゃない。決定」
そしてセンドラーは周囲を軽く確認した後、西方向を指さす。
「あとね、演説の方向なんだけど、こっちの方向にしてほしいの。」
(なんで)
(夕焼けの光を、背中から受けるからよ)
その言葉に私は方角を確認する。確かにこの位置に立つと、背中はちょうど西側。
日が暮れるころには夕日の光を背中に浴びることになる。
「後光効果よ──」
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