──破滅回避の悪役令嬢── 転生令嬢、世界を救うため「書記長」というハズレ職業から冷たい戦いを制し、世界を二分する勢力の指導者にまで成り上がります

悪役令嬢×異世界転生 破滅から世界を守るため、もう一人の自分と行く異世界ファンタジー
静内
静内

第94話 手を組む

公開日時: 2022年2月26日(土) 22:27
文字数:2,047

 歯ぎしりをするソニータ。残酷だが事実だ。

 残念だがソニータは国王である者の王国内では権威以外何もない置物扱いにされてしまっている。


 実権は貴族たちが持っていて、こいつはいつも不満そうな表情をするものの大したことはできない。


「初めから、私を利用するつもりだったな貴様──」


「だって、仮にもあなたは国王。あなたの賛成が無ければ私は国王に背く反逆者になってしまいますから」


 そう。それだけが、ソニータの存在価値のようなもの。

 こいつを何とかそそのかして政策を賛同させれば、反対する奴らを国王に背く反逆者とのレッテルを張ることができる。だから、必要な時は適当におだてていく必要があるのだ。


「つまり、賛成派を募ることのために、私を利用していたということなのか」


「そうなりますね。嫌なら私やヘイグと縁を切って、ご自分の力だけで国を回していけばいいのではないでしょうか」


「貴様……」


 ソニータが歯ぎしりをして言葉を返すが、全く反論になっていない。わかっている。返せないのだろう。出来ないのだから──


 そんなことをしたらこいつは全ての後ろ盾を失い、裸の王様同然となる。

 国王という肩書以外何もない置物同然の存在。


 まあ、こいつがそんなことを受け入れるわけがないのは分かってる。少しでも政府内で勢力を強くしようと、もがいているのがまるわかりなのだからな。


「許さないぞ、貴様……」


 その言葉に、思わず吹き出しそうになる。だから、どうしたというのだ。


「許さないって、だからどうしたというのですか?」


「許さない。間違っている。しかし、誰が貴方の言うことを聞くのですか? 我々には、権力を保持できるだけの武力も、権限も、何でもある。この世界、力がすべてだということは──あなたもわかっているでしょう?」


「その言葉──必ず後悔させてやる」


 明らかに負け惜しみの言葉。聞いていて心地よい言葉だ。


「はいはい私の権力のため、精一杯動いてくれてありがとうございました。これからも、必要な時は力を貸してあげますし、命を守るくらいのことはします。頑張ってください」


 もう、いいだろう。この後も、支持者への利益の配分や根回しなどの話し合いがある。こんなやつばかりに、構ってもいられない。


「それではこれで。私は立ち去らせていただきます。では」


 そして俺はこの場を去っていく。心の中でささやいた。

 俺は、こいつやヘイグを利用しつくして、のし上がってやると──。



 センドラー視点。


 宮殿に入って、ソニータがいる部屋の前。

 ドアの前で、耳を澄ます。


 声で理解していた。ブルムと、ソニータが話している。



 ケラケラと笑いながら頭を下げるブルム。ソニータは拳をプルプルさせていて、明らかに怒りに震えている──が返せる言葉が無いのだろう。


 歯ぎしりをして、ただ黙っていた。


「では、私は打ち合わせがあるのでこれで!」


 ニカっとブルムは笑みを浮かべて、この場を去っていく。慌てて私は物陰に隠れてやりすごす。

 ブルムが去った後、私はそっとソニータに接近。


 コンコンとノックした後、そっとドアを開ける。


「入るよ」


 入ると、ソニータの姿があった。


 ショックだったのだろうか。ソファーに座っていて、額に手を当て、座り込んでただ茫然としていた。


「これが、私の器なのか……」


 一人になったソニータがうつろな表情でただ外の景色を見ている。

 私がソニータの目の前まで歩を進めると。ソニータは私のことに気付いたのか、こっちに視線を向けた。



「笑いに来たのか……」


 引き攣ったような表情。そもそも私がここにきているおかしさにすら全く反応していない。

 よほど、精神的に追い詰められているのだろう。


「そんな暇ないわ」


「それなら、なぜこんなところに来た。お前は、ここでは何の権限もないただの人だぞ」


 それは正論だ。しかし、あなたの姉妹として、この国にかかわっているものとして、やらなきゃいけなこともあるのも事実だ。


「緊急よ。一大事」


 そして私はリムランドと そしてバルティカのたくらみを話す。


「そんなことだったのか」


 あまりにショックを受けていたのかソニータはそのまま座り込んでしまった。

 それでも、私はさらに話し続ける。


「そうよ」


「で、実権を失った私に何を要求するのだ?」


「緊急よ。ここは手を組みましょ」


 その言葉にソニータの表情が歪む。


「ふざけるな。この私が、貴様などと手を組むなどと……」


 ソニータは歯ぎしりをしながら言葉を返す。当然というえば当然だ。このラストピアで私とソニータは国王の座を争い合ってきた仲だ。


 競ってきた敵。それがいきなり手を組もう。そんな事を言った所で感情が許さないし、何か罠があると考えるのが当然だ。

 私だって、そう考える。


 それでも、それ以外に道はない。


(わたしに変わって)


 センドラーは、何か考えがあるのだろう。


(わかった)


 一瞬気が遠くなった感覚がすると、私はセンドラーに人格を交代。後ろから二人の会話を聞いて見守る。

 センドラーは交代するなり、いきなりソニータをにらみつけて言い放つ。


「そんなんだから、あなたは上手くいかないのよ」

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