──破滅回避の悪役令嬢── 転生令嬢、世界を救うため「書記長」というハズレ職業から冷たい戦いを制し、世界を二分する勢力の指導者にまで成り上がります

悪役令嬢×異世界転生 破滅から世界を守るため、もう一人の自分と行く異世界ファンタジー
静内
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最終章 リムランド編

第100話 取りあえず、街を見よう

公開日時: 2022年4月13日(水) 20:17
文字数:2,202

 ラストピアの人たちに別れを告げ、私達は荷物を持って馬車へ。


 荒涼とした大地や、地平線まで広がる草原を越えた長旅の末に、ラストピアの地はあった。



「何とかついたわ──」


「そうですね、さすがに疲れました」


 ライナが自分の肩をもみながら言葉を返す。

 確かに、長旅だった。


 前回はあまりに急な事情があったので、カルノさんに無理を言って瞬間転移をしてもらったが、いつもこんなことをさせてもらうわけにもいかない。


 あれは、本当に体力や魔力の代償が激しいのだ。


 街への城門で兵士の人に証明証を見せてから、街の中へ。

 以前より増えた亜人の人々や、さびれている雰囲気のある街を見ながら、宮殿へ。


「お久しぶりです。これからも、よろしくお願いしますね!」


 赤絨毯の道。人とすれ違うたびに、笑顔で挨拶をして握手をする。


「センドラー……だよな」


「そうですそうです。一緒に、この国をよくしていきましょうね」


 出会う人はみんな、私の変わりように驚いていた。


「明るくなったねぇ。随分変わったねぇ。……」


「こっちにも、色々あったんですよ~~」


 変に感づかれても困るので、軽くあしらったが──。

 時折、私を見るなり逃げだしたり物陰に隠れる人もいた。


(私達がここでした行いを考えれば、当然よね)


(……うん)


 そして、私の部屋へ。以前住んでいた部屋と、同じもの。

 その間に誰か住んでいたようで、若干レイアウトは変わっていたものの、面影や窓から見える景色に懐かしさを感じる。


 それから、ちょっと休憩を取った後、宮殿の階段を上がり、ソニータの部屋へ。


 人とすれ違うたび、すれ違った人たちは私を見るなりよそよそしくなったり、震えたり──。


 私が帰ってくると聞いて、みんな警戒しているというのがわかる。

 そして、宮殿の一番上。奥の部屋へ




 コンコン──。


「私よ」


「入れ」


 ドアの奥から聞こえたのは、どこかぶっきらぼうなソニータの声。

 やはり、精神的に答えているというのがわかる。

 キィィィ──。


 ゆっくりとドアを開けて、中に入る。


 ふかふかそうなソファーに座り込んでいるソニータ。

 私は、その隣に、スッと座った。


「何で隣なんだ……。向かい側に行けよ……」


「いいじゃんいいじゃん。こっちの方が親しみやすいし」


 ソニータと会うとき、隣にいてみたいと思っていたのだ。

 私達は国王の座を巡っていつも争ってばかりだった。だから、この場くらいは──隣に座っていたい。


 ニッコリと言葉を返す私に、ソニータはけげんな表情をする。


「お前──随分と変わったな……」


「それ、ここに来るまでにも、散々言われた」


 当然だ。あの時とは違うからこそ、ここに帰ることができたのだ。

 そして、侍女の人が入ってきてコーヒーを煎れてくれた。


 コーヒーを一口飲んで、香り豊かさに感動。


「やっぱ、このコーヒー美味しいわね。リムランドのは、ちょっと質が落ちるわ」


「ありがとな。まあ、遠い国で高級品になているやつだから、当然だろう」


 そして、コーヒーを半分くらい飲み干して、話が始まる。


「じゃあ、話。聞くよ──」


 私はソニータの方を向くと、首を傾けて微笑を浮かべる。


「ふう、分かった。話そう──私の葛藤を」


 ちょっと、切ないような──悩んでいるようなそんな表情。


「私は、国王になってから──何とか国をよくしていこうともがいている。そして、痛感させられるのだ──自分の力不足さというものを」


「何をやってもなかなかうまくいかない。貴族たちは私のことを置物としか見ていない。互いに利益のために利用し合い、いがみ合い、けん制し合い──国のことや国民のことなどそっちのけで政争争いばかり。見ているこっちが滅入るくらいだ」


「それは、私がいた時と変わってないわね」


「私なりに何が正しいか、考えてもがいているのだがな」


 ソニータは両肘をついて顔を追い隠し、言葉を返す。


「これが、私の器なのか──。私は先代の王やお前みたいにはなれないのか──」



 相当悩んでいるというのが、わかる。私と敵対していた人物とはいえ、同情してしまう。


 ブルムにはまんまと騙され、ヘイグともうまく行ってない。

 貴族たちからは置物として扱われ、権威以外何もないと言っても過言ではない存在。


 相当、こたえているようだ。


(秋乃、変わって)


(わかった)


 そして私は人格を交代。

 センドラーは腕を組んで、ソニータをじっと見詰めながら言葉を返す。


「あきらめにるはまだ早いわ」


「──気休めにしかならないな」


 ソニータは、センドラーの重圧に耐えきれないのだろう。目をそらしながら言葉を返す。

 完全ではないが、半ば位──折れてしまっているのだろうか。


 なんとか、力にならないと──。


「とりあえず、現状を確認させて。まずは、この街がどうなっているのか、よく知りたいわ」


 そう言うとソニータはゆっくりと立ち上がり書斎の書類へと手を伸ばそうとする。


「何してんの?」


「何って、現状だろう? 今のリムランドの数字を見せようと──」


「そんなのはもう見たわ。私が見たいのは現物。街そのものよ──」


 ソニータの頭上に?マークが浮かんでいるように、キョトンとなる。

 どうしてそんな言葉が返ってくるか、理解していないようだ。


 額に手を当てて、ため息をついた。


「そんな作られた数字じゃなくて、実際の街を見たいってこと。外せない予定、今ある?」


「今は、特にない」


「じゃあ、行くわよ。外についてきて」


 そう言って、踵を返してこの部屋から出る。

 ライナ、ソニータは後を追うようについていった。

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