──破滅回避の悪役令嬢── 転生令嬢、世界を救うため「書記長」というハズレ職業から冷たい戦いを制し、世界を二分する勢力の指導者にまで成り上がります

悪役令嬢×異世界転生 破滅から世界を守るため、もう一人の自分と行く異世界ファンタジー
静内
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第63話 私達の、答え

公開日時: 2021年10月22日(金) 21:32
文字数:2,017

 だから、対策だってしてきた。

 見てなさい。


「バカねぇ貴方。そのくらいちゃんと、対策してるに決まってるに決まってるじゃない」


 センドラーは自信たっぷりの表情で言い放つ。


「ハッタリかましてるんじゃねえだろうな」


「私達は、正式に結んだのよ。バルティカ王国と正式な防衛協定を──」


 そして私はカバンから一枚の紙を取り出し、ブルムたちに向かって見せつけた。

 私とロンメル、ペタンのサインが書いてある正式な契約書だ。


 そして私は一つの文章を指でなぞる


 同盟を結んでいる軍事的など、国が何らかの脅威を受けている場合、もう一方の同盟国が支援をするというもの。

 それ以外にも、互いに利益を共有したり、有事の際に戦力や人材を貸し出したりする内容もある。事実上の友好国になったといってもいい。 


 これで私達はバルティカが何らかの脅威を受けた場合、何らかの支援をしなければならなくなった。

 そう、今回のブルムの行為に対してだ。


 ブルムは、その契約書を見て、体を震わせながら私をにらみつける。

 正式な国家間の条約。


 まともな国家ならば、絶対に守らなければならない。もし破ったら国家としての信用を失い、条約や国家間の取引に大きく支障が出てしまう。


 こういった場合、すでに先代の国王様はこんな答えを出している。


 正式な協定を守ることによって、中央政府と地方政府で対立が生じてしまった時。

 その時は──。


「双方とも。自分たちの役目を果たしなさい。それぞれの立場で、相手に対して精一杯の戦いをすればそれでいい」


 センドラーが自慢げに言い放つ。つまり、例え対立しても自分たちの相手のために精一杯尽くしてほしい。


 それが、答えだった。


「だから、私たちの行動に問題なんてないの。わかったかな、ブルム」


 ブルムはセンドラーをにらみつけたまま答えない。

 なにも反論できないというのを、理解しているのだろう。


 つまり、私の行動におとがめなしということだ。


(これで私の行動に、お墨付きを得た。これは大きい──)


「つまり、私たちの行動は、間違ってないわ、ペタン。これから、よろしくね」


「ああ、よろしくな」


 二人の、意気投合するような会話と、条約の締結。


 その事実に周囲は騒然となる。

 ざわついた建物の中で、センドラーはまるで自分が仕切っているかのように手をパンパンと叩く。


「ということで、ペタンとウェイガン。この話については再度考え直しにさせてもらうわ。大丈夫、ゲルにいた人たちは無下には扱わないから。また今後どうするか、考えるだけよ」


 ウェイガンは、無言になり、複雑そうな表情をしている。

 やはり何か事情があるのだろうか……。


 取りあえず、寸前で鉱山の属国化は回避できた。私は大きくため息をついて安堵する。



 額から浮き出ていた冷や汗をぬぐいながら、思わずイスに深く腰掛け直した。


(間一髪だったわねぇ──。これもライナやミットのおかげよ)


(そうね……)


 一方ブルムの方。自分の策が失敗したショックからか、ぽかんと口を開けたままフリーズしてしまっていた。

 そして、どこかうつろな表情で私たちに話しかけてきた。



「俺たちの策略、知っていたのかよ」


「昨日になってね……。危なかったわ」



 ブルムはその言葉を聞いた瞬間口をパクパクさせ、ゴゴゴといわんばかりに体をぶるぶると震わせ始める。


 そして──。


「クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女クソ女ァァァ──」



 突然、今までため込んで怒りを爆発させるかのようにブルムは大暴れし始めた。大声で叫びながら自分が座っていた椅子を投げ飛ばし、壁や机を何度も蹴っ飛ばす。



「今に見ていろセンドラー。必ずお前を見返してやる。絶対にお前をその席からたたき出して、極寒の地で一生木を数える仕事につかせてやる!!!!」



 そして、怒鳴り散らした後、蟹股でずんずんと歩きながら入口の扉を蹴っ飛ばして、この場を去っていった。


 騒然となるこの場。そして、しばらくしてこの場はお開きになり、ここにいた人たちは一人一人と帰っていき、気が付けばここにいるのは私たちだけになる。


「ペタン、フォッシュ」


「なんだ?」


「この後、話し合い。大丈夫?」


「わかりました」


 そして私達は打ち合わせのため、別の部屋へと移動した言った。

 何とか当面の危機は脱した。


 しかしまだ話は終わっていない。領地を合法的に取られるのを阻止しただけ。


 オオカミたちが領地としていた えーとツワナ地区っていったっけ。そこからマリスネスの影響を取り除かなければならない。


 おまけにバックにはリムランドがいる。

 どちらも私たちより強者というべき存在。

 弱者がそれに対抗するためには、それをひっくり返すだけの知恵が必要だ。


 かなり大変だろうけれど、これからも頑張ろう!

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