──破滅回避の悪役令嬢── 転生令嬢、世界を救うため「書記長」というハズレ職業から冷たい戦いを制し、世界を二分する勢力の指導者にまで成り上がります

悪役令嬢×異世界転生 破滅から世界を守るため、もう一人の自分と行く異世界ファンタジー
静内
静内

第58話  契約成立

公開日時: 2021年10月5日(火) 22:22
文字数:2,210

 ひどいと物の所有権という言葉自体が理解できず ケンカになってしまうことがあった。

 しかし、彼らはそんなことがない。


 支配層は、配下の人たちのことをよく考え、大切に扱っている。

 それに、子供たちへの教育への意識。これもプラスポイントだ。


 こういった亜人達と交流して困ることが、子供への教育だ。


 貧しい地域から来た人だと、子供に対して安価な労働力としかみなしていない。

 すると、まともに字を読み書きすることができず、まともな仕事に就くことができない。


 そして、貧困から抜け出せないという負のスパイラルに陥ってしまうのだ。


 おまけに子供たちに教育をしても、その重要性を理解しない両親が「そんなことをさせる時間があったら働かせてほしい」と駄々をこねてきたことは記憶に覚えてる。


 以前、スラム街で子供に簡単な算数や読み書きを教えた時、母親から真顔で「どうして引き算が必要なんですか?」と真顔で聞かれた時は困り果ててしまった。


 しかし、彼らにはそれがない。子供たちに教育をするということが必要であると理解している。

 以前住んでいた街でも、他の亜人の人たちともうまくやっていたみたいだし──。


 その他にも、いろいろ話を聞く。

 子供たちに視線をあわせ、どういうことを教わっているの? とか、以前の街ではどんな生活をしていたの? とか──。



 しばらく会話を楽しんでいると、センドラーが話しかけてきた。


(ここはもう大丈夫ねぇ。次行きましょう)


(わかったわ)


「じゃあみんな。お話ありがとうね!」


「お姉ちゃん。ありがとう」


 子供たちは手を振って私達を見送ってくれた。本当にいい子たちだ。

 そして歩きながら私達は話す。


「センドラー様。いい人たちでしたね」


「そうだね、ライナ」



(私も彼らの倫理観に関しては、合格点を上げてもいいわね)


 関して「は」ね……。

 なんか、歯に何かが詰まったような言い方だ。何か気になるところでも、あるのかしら──。

 すると、センドラーが話しかけてくる。


(ちょっと、変わってくれるかしらぁ?)



 私にはわからないけれど、センドラーには、何か狙いがあるのだろう。


(うん、いいよ)


 そして私はセンドラーと交代。


 さっきウェイガン達がいた場所へと向かう。


 その隣にあるコボルトの中で一番大きいテント「ゲル」。そこに行くと軽くノックをして中へ入って行く。


 私らライナ、ミットも後を追うように中へ。


 そこにはいろいろな書物があった。


 センドラーは真ん中で毛ボルトの人となにやら交渉をしている。そしてその人がコクリとうなづいた。


「資料で見たいもの──ですか? 記録されると困るものもあるのですが……」


 センドラーはウィンクをして、言葉を返す。


「じゃあ、あなたが後ろについていてくれるかしら? それで、私が変な事をしているというのなら止めていい。それではダメ?」


「はぁ……。それなら、大丈夫です」


「ありがとうね。じゃあ、思う存分調べさせてもらうわぁ」


 センドラーはにっこりと笑みを浮かべ、手を振ると、部屋の中へ入って行く。


「あそこね……」


 部屋の壁際にある棚へと向かっていくと、そこからいくつかの書類や本を取り出す。

 ミットとライナ、後ろからその姿を興味津々に見つめていた。


 いろいろと書類をパラパラ見たり調べていた。


 時折書類をめくる手を止めて、コクリとうなづいたりしている。



 ポーカーフェイスといった感じで、表情に変わりはない。

 そして、しばらく書類たちをめくってはコクリコクリ頷いた後、その本や書類たちを元に戻し、「ゲル」から外に出ていった。


 私はセンドラーと肩を並べ、話しかける。


(どう? 何か怪しいことあった?)


「まあね。絶対ってわけじゃ、ないけれど……」


 なにか引っかかったような言葉。センドラーのことだから、私ではわからない何かを見つけたのだろう。


 何もないといいけれど……。



 そしてペタン達の方も査察が終わったらしく、フォッシュやウェイガン 達と一緒に仲がよさそうに談笑している。


 私は彼らに接近。


「お疲れ! そっちはどうだった?」


「こっちは大丈夫です。センドラー様は、何をなさっていたのですか?」


 フォッシュからの質問。何とか取り造らないと……。

 しどろもどろしながらも何とか答える。


「え、ちょ、ちょっと、いろいろ見て見たくって。素晴らしかったわ、この人たちと手を組みたいって、本当に思った」




「ペタン。フォッシュ。私は、彼らなら信用できる。と思うわ。あなた達はどう思う?」


 二人とも、どこか明るい表情だ。聞くところによると、話をするうちに明るい雰囲気になり、最後の方が談笑をしながらの監査になっていたという。


「この人たちなら、大丈夫だと思います。一緒にあって、ウェイガンや周囲にいる人たちを見て、大丈夫だと感じていました」


「俺もだ。礼儀作法や倫理観。人々。どれをとっても大丈夫。こっちこそ、一緒にバルティカのために頑張ろう」



 そしてペタンは彼らを国民として受け入れると、高らかに宣言。


 コボルトたちは、大喜びし始めた。抱き合ったり、拍手をしたり。



 それから話は早かった。側近のベルクソンが出てきて、書類を持ってくる。

 そして机にそれを出す。

 机にある書類を、ペタンとフォッシュが念入りに不備がないかチェック。


 皆、取り囲むように物珍しそうに私達やペタンを見ていた。


「これから、よろしくな」


「ああ。お前達のこと、絶対に守ってやる」


 それから、ペタンはその書類に不備がないかを確かめてから、自らのサインを書類に書いた。


「これで、契約成立だ」

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