街に到着し、街中に視線を置いた。
ラストピアとはもちろん、この前行ったバルティカよりも小さく、ひっそりとしている。
建物はどれも簡素に造られたもので、比較的最近に作られた街だというのが理解できる。
石畳ではなく、茶色い土の道。建物は、どこか古臭く感じる。
人々は誰もが犬耳やエルフの名が耳を付けていて、それがない人はほんのわずか。
建物も、簡素なつくりだったり古臭かったりしている。
街の人が来ている服も、薄汚れていたり、ボロボロだったり。
そして……。
「あれ、止めた方がいいよね」
私は前方にある光景を目の当たりにし、フォッシュに話しかけた。
フォッシュは、ふうとため息をついた後、やれやれと言った感じで言葉を返す。
「そうですね──」
私達が目撃したもの。それは喧嘩だ。歩いている先、道端で二人の男の人が互いに怒鳴りあっているのがわかる。
そして周囲の人たちもはやし立てたり、何か叫んだりしていた。
民家の前。一人はオオカミの毛耳をした亜人の若い男の人。もう一人はオークのおじさん。
それを見たセンドラーが話しかけてくる。
(ふぅ、これじゃあ国がまとまらないわ。特に言葉──)
(言葉? 何かわかあったの?)
私の質問にセンドラーは、けんかをしている人たちに冷めたような視線を送る。そしてため息をついて答えた。
(わからないの? あいつら、言葉がバラバラなのよぉ)
あっ、本当だ。なんとなくだけど、二人の言葉が全く系統が違うのがわかる。
(それで互いに感情的にどなり合っている。一生分かり合えるわけないじゃない)
(そ、そうだよねぇ……互いに何言っているか理解してないんだもん)
確か、この国はいろいろな場所から逃れてきた人の寄せ集め。
まともに教育を受けていないし、互いに自分たちの言語ばかり会話している。
これじゃあ、対立になるに決まっているわよね……。
私は、引き攣った笑みを浮かべ、フォッシュに話しかける。
「違う言葉同士で喧嘩して、大丈夫なの?」
「大丈夫では、無いですね……」
フォッシュは困り果てながら、けんかしている人たちを見つめている。
「私が、止めてきます」
「大丈夫なの?」
「どっちの言葉も、わかりますから──」
そして彼女はケンカしている人たちの元へと歩いていく。
それから、互いの話に耳を傾けた後、両者に割るように互いの言葉で優しく語り掛けた。
彼女が話に入ること数分後。
すると互いに相手の言っている意味が分かったのか、怒りが収まる。フォッシュは互いに視線を配りながら丁寧に説得。
数分ほどすると、二人はそれぞれ別の方向へといった。
フォッシュが戻ってくる。
「すごいじゃん」
私はフォッシュに親指を立てて話しかける。
「二人とも、この国の主流の言語なのが幸いでした。簡単な言葉なら、私もしゃべれます」
「よ、良かったね……」
そして王宮へ向けて歩いていると、さらにフォッシュが話しかけてくる。
「申し訳ありません。お願いがあるのですが、よろしいでしょうか」
「何?」
フォッシュのどこか気まずそうな、しゃべりずらそうな雰囲気。
私はにこっと笑顔を作り話しかける。
ちゃんと部下が物を言えるように接するのだって、私の仕事だ。
「そ、その──これからペタン様のところに会いに行くにあたって──お、お願いがあるんです」
「硬くならないで。怒らないから行ってごらん」
話ずらそうな態度。多分、私に言いにくいことなんだと思う。
私は柔らかい笑顔に表情を変えた。
「簡単に言うと、センドラー様は──私の付き人ということにしてほしいんです」
「つ、付き人?」
その言葉に私は言葉を失ってしまう。つまり、私の身分を隠してほしいってこと?
「実のところ、国王のペタン様はあまりリムランドにいい印象を思っていません。
それにセンドラー様と出会ったことはない。それなら、身を隠された方がつごうが良いと思われます」
「なるほどね、わかったわ」
私は特に抵抗もなく返事をする。その言葉にフォッシュは軽く驚いた。
「も、申し訳ありません。嫌な想いとか、されましたか?」
「いやいや、そんなことないよ。むしろそっちの方がいいよ」
(私もよぉ。ただ考えもなしに行くんじゃなくて、相手の趣向や思考を知ったうえで、それを考慮して行動する。意外と私好みよぉ)
私もセンドラーと同じ意見。物事をやるときは正論をぶつけるだけではだめなのだ。
時には相手の事を考慮し、それを踏まえたうえで行動する必要があるから。
「あ、ありがとうございます。このようなご無礼を引き受けていただき本当に嬉しいです」
フォッシュがそう言って頭を下げる。
「いいっていいって! この国のためなんだから──。じゃあ行きましょ行きましょ!」
私は明るい口調で言葉を返す。
そしてよく言えばのどかな、悪く言えばラストピアと比べ明らかに近代化が遅れている街並みを通りすぎると、マリスネスの王宮にたどり着く。
「ここが王宮です。これから、私が交渉してきます」
王宮は、バルティカよりもどこか簡素に造られていて、この国の文化レベルをよく表しているようだった。
やはり、歴史も浅い、貧しい国だというのを感じさせる。
フォッシュはというと、門番の獣人の人に交渉をしている。
彼らの言語。私はよくわからない。
敵意がないことを表わすためか作り笑顔を浮かべながら。
数分ほどするとフォッシュは交渉を終え、どこか機嫌がよさそうな表情で私のところに戻ってきた。
「センドラー様。大丈夫なようです。行きましょう」
読み終わったら、ポイントを付けましょう!