異世界はゾンビだらけですよ

シイナ
シイナ

ナイトメア・オブ・ザ・デッド①

公開日時: 2022年3月4日(金) 16:35
文字数:1,955

 【……転移および身体の修復完了】



 「いった」


俺は酷い痛みで目を覚めた、まるでロードローラーに何1回も轢かれたような痛みだ、骨の隙間まで悲鳴をあげている。


目をあけると、自分が地べたに横たわっているのに気づいた、急いで周りを確認したがどんよりとした空に薄くかかった霧の中、1キロ先すらまともに視認できない。


 「どこなんだよ、ここは…」

 

 とりあえず立ち上がって周りを歩こうと、地面に手をつけたその時。


グチュ


 「うっわ、なんだよ…」


つけたその先にはひどく腐敗した腕が転び落ちていた、どうやら運悪くその死体の中に突っ込んだらしい。

突然のことに脳みそがフリーズしていると、手の甲に少しこそばゆい感じがした、何匹か太った蛆虫が俺の手の上を這っていた。

この瞬間、強烈な腐敗臭が真正面からぶつかって来たように感じた。

「うあああああああ!!!!」

俺はで飛び上がりながら、激しく手を振った、手を直接切り落とした方がマシだとすら思った。


平和な日本で生まれ育った自分は死体なんて見たことがない、おじいちゃんの遺体だって寝ているかと錯覚するほどきれいなものだった。


もう一度周りを見回すと、少し霧が晴れたのか大分視界がクリアになった。


どうやら自分はどこかの荒野にいるみたいだ。足元の死体いがいにも数体散乱していた。さらに少し遠い場所には、何棟かいまにも倒れそうな小屋があった、農作業用の倉庫の様にも見える。小屋の前には一台錆びついた外車が止めていた。


自分の心臓が激しく鼓動しているのを感じる、この明らかに日本離れした光景に頭がくらくらする。


 まだ記憶が曖昧だが、俺は必死に過去をたどった。


 そう、俺はいつも通りの日常を送っていたハズだ。





191名無しのゲーマー

今期のイベントで「ライス神」10連目の一位


192名無しのゲーマー

 まじかよwwwどんだけ課金してんだよw


193名無しのゲーマー

 推定25万らしい

しかも学生って言ってた

194名無しのゲーマー

 親の金かよ、〇ね

195名無しのゲーマー

 金持ちは全員刺されろ

ゲームの攻略を探すため掲示板を見ていたら、俺について噂しているの見つけた。うーん、醜い嫉妬だな。

俺は世界でもトップクラスの財閥、稲神財閥の三男、稲神秋人。ご先祖様の商売繁盛したおかげで、大学生でありながら高級車を乗り回し、夜は金持ち同士のパーティーで贅沢三昧。


 そんな生活を送っていても家族に嫌な顔をされたことはない。当然だ、十個以上年が離れた優秀な兄二人が家業を引き継いでいる、俺は三男坊として甘やかされて育った。環境に恵まれているので、良い教育も受けている、将来について心配したことはない。

まさに約束された順風満帆な人生。


 おっといけない、そろそろパーティーの時間だ、俺は急いで家から飛び出し車に乗ろうとした、その時、急に背中に鋭い痛みが走った、後ろを振り向くと知らない人に刺されたようだ。つかさずナイフを抜き、もう一度刺してきた。


 「うそ、なんで…」


 薄れゆき意識の中で俺は機械の声を聞いた。


【……転移開始します】


【身体に激しい損傷あり、エネルギー転換、修復を行います】






 そう、刺された!二回も刺されたんだ。


 急いで服をめくり体をチャックしたが、どこにも傷跡がない。夢なのか?

 あんなにはっきりとした痛みなのにか?

 


【警告:前方1500メートルより感染者が接近中】


【推奨:戦闘あるいは避難する。】



突然響いた機械音声に驚き、周りを見回したが、死体を除けば俺以外の人っ子一人いない。音源を探ろうと注意深く耳を傾けると、遠くから何やら音が聞こえてきた。間違いない、俺が気を失う前に聞いた声だ!

 

 「誰だ?誰がしゃべってるんだ?」


 【最後警告:多数の感染者が接近中、戦闘あるいは避難の準備を推奨する! 】


まさかこの声は俺の体の中からか?

自分の持ち物を見直したが、ブランド物のTシャツ、黒いジンズに限定版スニーカー、ズボンのポケットに入れていたスマホはどっかに消えてしまった、それ以外何も持っていない。

それなら声はどこから来たんだ?

警告とは何のことだ?

感染者って?

考えれば考えるほど意味が分からないし、夢だと思いたい。だが体の痛み、付きまとうような悪臭に下に触れた気持ち悪さ、これらに事実がすべて現実であると俺に伝えている。

「俺は異世界に飛ばされてしまったのか…」

最近はネットの小説を読みすぎたせいで変な妄想をしてしまった、そんなはずはない、誘拐か何かだろう、そう信じたい。

あれこれ考えを巡らせると後ろから何か走る音がした。

後ろを振り向くと俺はちびりそうになった!

ゾンビ!生きているゾンビ!生きているゾンビってなんだ!

ゾンビの大群が明らかにこっちに向かって走っている!

映画館で観た「バイオゾンビ2」なんかより1000倍も刺激的な映像だ!


 俺は一目散に農作業用の倉庫に向かって走った。

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