僕らの敗者に福音を

REFRAIN SERIES EPISODE III
yui-yui
yui-yui

第二十話:アリジゴク

公開日時: 2021年4月15日(木) 12:00
更新日時: 2021年4月16日(金) 19:20
文字数:7,399


 地獄の定期試験週間を終え、試験が返ってくるのを待つ憂鬱な時間を、何とかバンドのことで頭をいっぱいにしてやり過ごす。要するに、二十谺はつかとの勉強は、二十谺には大変申し訳ないのだが、あまり意味を成さなかった。ライブは一週間後だ。定期試験の結果を憂いていてばかりでは仕方がない。試験前は自重していたバンド練習を思う存分に楽しまなければ。

「テストのデキで音変わったりしないでしょうね」

 休憩時間に二十谺が本気で心配しているように言う。久しぶりに合わせて音を出したせいか、少し乱れがあったのは晃一郎も感じていた。しかしそんなものは些細なことだ。あと数回も合わせれば感覚も戻ってくるだろう。

「点が悪ぃのなんていつものことだから変わりよーもねーよなー」

「逆に点良くなってたらびっくりして変わるかもな」

 口々にとおる晃一郎こういちろうが冗談を返す。

「亨さん、お姉ちゃんとの勉強の成果、出なかったの?」

 今日も練習に付き合ってくれている十五谺いさかが楽しげに言った。

「そりゃ出たとこもちょびっとはあったけどよー……」

 自信無さげに亨は苦笑する。途中から晃一郎も一緒に勉強するようになったが、晃一郎の優位は相変わらずで、少し安心したものだった。亨よりもいくらか良い点数が取れるというだけで安心するのも果てしなく情けない話ではあるのだが。

「テストのことなんか忘れちまおうぜー。ダメだったもん今更考えたって仕方ねっつの」

 心底嫌そうな顔を作ってシズが言う。要するにシズも晃一郎や亨と同類なのだろう。元々成績の良い十五谺と二十谺は涼しい顔をしている。

「……今回はライブ近いから仕方ないけど、次から赤点取ったらリハ禁止にしようかしら……」

 リーダーの晃一郎を差し置いて、二十谺が恐ろしいことを言う。

「ちょ、待った!それはまずい」

 定期試験のたびに何かしらは赤点が出る。高校一年から今まで、赤点がなかった定期テストがあっただろうか。

(……な、ないっ)

「学生の本分は学業よ。青春をエンジョイするのは勿論いいけれども、本末転倒になっちゃいけないわ」

「なにオカーサンみてーなこと言ってんだ!」

「勉強ばっかりしてて遊ばないと馬鹿になるぞ!」

 得意になる二十谺に、晃一郎と亨が口々に言い募る。

「ま、ちゃあんとお姉ちゃんが勉強教えてあげればいいんだもんねぇ」

「……あんたも手伝いなさいよ」

「学年違うんだから無理だってば」

 あくまでも他人事として十五谺はからからと笑う。だが。

(多分だけど俺のやる気はかなり上がる……)

「現国とかあんま学年関係ないでしょ。やってること大して変わんないし」

「えー、あるよー」

「亨のばかはハンパじゃないのよ。晃はまだいくらかいいけど」

 だん、とテーブルに手を着いて二十谺は言う。

「……言われよう」

 晃一郎と亨は顔を見合わせた。

「じゃー十五谺は予習ってことで一緒にやればいーじゃん!」

「だな!」

 亨の言葉に晃一郎が同意する。ふと隣を見ると四人の会話に入れないシズが口をパクパクさせつつも、黙りこくっていたことに遅まきながら晃一郎は気付いた。

「どしたシズ、黙っちゃって……」

「いやぁ、シャガロックっておっかねぇバンドだなぁと思ってよ……」

 アタマのデキが亨や晃一郎とは大差ないらしいシズがひぃ、と小さく悲鳴を上げる。そんなシズになんだか奇妙な安心感を覚えて、晃一郎はシズの肩を叩いた。

「いや!成績でバンドできないなんて、そんなもんは、断固阻止、だ!」

「やかましいわね、リーダー」

 土台も裏付けも何もない強気なリーダー発言は、見事二十谺に一蹴された。




 練習が終わると十五谺は新たにアルバイトを始めるために、そのアルバイト先へ面接に向かった。亨もアルバイトへと向かい、帰り道は二十谺と二人になった。

 肩の怪我はかなり回復していたのだが、先日雄太ゆうたに殴られて悪化してしまった。何とかギターを持ち、コードくらいは押さえられるようになったのだが、立ってギターを弾くにはギターにストラップをつけなければならず、そのストラップが左肩に当たるため、今の状態ではギターを弾きながらは唄えない。

 歌の方は、まだ肩に痛みは走るものの、だいぶしっかりと声が出せるようになってきた。この調子ならばあと一週間もあれば全開で歌えるかもしれないところまでは回復してきている。

 あれから雄太は十五谺や晃一郎の前に姿を現さなくなった。結局晃一郎達は先日のことを伊庭いばには報告しなかったが、それはおそらく雄太が自重しているのだろう。

 今頃は、言わないでいてくれたのかと安心しているのかもしれないが、次に何かあれば、晃一郎は十五谺が何と言おうとも伊庭に報告するつもりでいた。

 そして雄太はまた来るだろう、と晃一郎は思っていた。

(禁じられてようが何だろうが、十五谺を想う気持ちは上の連中には判んねぇよ)

 そう雄太は言っていた。あの日の最後の泣き言や態度からすれば、その覚悟も本当なのかどうかも判ったものではないが、晃一郎の方こそそう思うことはあるのだ。

(あんたや十五谺本人には判んないだろうけど……)

 晃一郎も十五谺を想っている。

「晃」

「うん?」

 一緒に歩いていた二十谺が晃一郎を呼んだ。

「どしたの、ぼーっとして」

「あ、いや考えごと」

 見透かされたか、と一瞬心拍数が上がる。

「ふぅん……」

「二十谺、これから時間あるか?」

 晃一郎は二十谺に訊いてみたいことを思い出し、涼子の店へ誘おうと考えた。

涼子りょうこさんのとこ?別にいいけど」

「じゃ行こう」




「で?」

 何なのよ、とでも言いたげに二十谺は問いかけてきた。当然晃一郎から何か話があって、ということくらいは判っているのだろう。

「前にさ、十五谺と仲直りつったら変だけど、元通り?なのか?まぁいいや、とにかく仲が良くなったときのきっかけの喧嘩、あったじゃん」

「うん」

「あの時、二十谺は覚えてないかもしんないけど、十五谺に堂々と言えること、してきたのかなって言ったんだ」

「覚えてるわよ。自分が情けなくなるからあんまり思い出したくないけどね」

 苦笑して二十谺は言う。それほどに、二十谺の中でも何か、きっかけのようなことがあった出来事だったのだろう。

「何か俺も、今痛烈にそれ感じててさ……」

 どの面下げて偉そうに、という感覚が、常につきまとっている感じがする。何かを発するたびに、じゃあお前はどうなんだよと突き付けられたら、返す言葉がないような、あっても言い繕ってしまうような、そんな感覚がつきまとう。

「十五谺のことで?」

「え?」

 どきり、と胸が鳴る。

「十五谺とのことじゃないの?」

「まぁ十五谺だけじゃないけど……」

 誤魔化してしまった。だが、まったくの嘘でもない。

「まぁいいわ。そういうのってでも、誰にだってあることでしょ。知っての通り私は十五谺には物凄くきつくあたってたけど、あの時の十五谺はほんとに間違ってたと思うけど、でも、十五谺だって本当なら私の足元を掬うことだってできたのよ」

「っつーのは?」

「はたから見ればさ、十五谺も私も好きなことやってただけって話よね。音楽をやるっていう本気度?まぁそれなりに真剣に何かをやる、って他人には中々伝わりにくいし、特にバンドやるなんて理解もできないでしょ。プロになるんじゃなければ真剣じゃないとか、遊びでやってる、とか」

「まぁ、そんなのはね」

 ごく当たり前のことだ。理解できない人に理解してもらおうとまでは思わない。そして理解ができない人も、理解しようとしない人も、それ自体は悪意ではない。バンドに限らず、プロというステージがある趣味をやっている人間は、誰しもそう言われたり、思われたりしている。本人がどれほど真剣だろうと理解はされにくい。今までだって幾度となく他人に馬鹿にされてきた。

「それ以外でもね、十五谺に色々言ってる私自身が間違ってないのかな、って思うことも多かったの」

「プロにはならないけど真剣にやってるんだって言ったって、その趣味をやってない人には中々判らないしな」

「まぁそこもそうなんだけどさ。私生活でも。ほんとに、色々と」

 それこそ、それを言ったら常に完璧に正しい人間などいやしないのだ。恐らく二十谺はそういうことを言っているのだろう。罪を犯すのが人間ならば、それを裁くのも人間だ。どういった傲慢なのかは判らないけれど、それが常識である世界に自分達は生まれたのだ。

「ここんところの十五谺は変わってきたしな」

「うん。だから余計にね。十五谺は自分を省みて前向いてるのに私はどうなんだろう、って特に最近は思う。十五谺から見て、どれだけ上等な人間なのかな、って」

 自分が正しいとは思わないけれど、間違っている人間がいればそれを正そうとする。その心の動きは誰にでもあるものだ。それは正義だとか人として正しいだとか、そういうことではなく、恐らくエゴによるものが大きいのだろう。だから、今の晃一郎のように、以前の二十谺のように、苛まれることもあるのかもしれない。

「……」

「変わりゃしないのよね、実際のところ。私だって十五谺だって。たかが一年長く生きてるだけで実際何も変わらないわ」

 その部分を認めるしかない。自分も間違えるかもしれない。できていないかもしれない。それでも、間違った人には、その間違いを正してほしいと思ってしまうから。

「だから、いくら私の方が姉だからって十五谺よりも立派な人間でいなくちゃ、なんて思い違いだし、本当は十五谺に偉そうなことも言えないって認めなくちゃいけなかったのよね」

「なるほど……」

 二十谺の思いを聴くと、それは晃一郎の考えと似ているのかもしれない。

「人間なんてホントは対等なんだし。姉妹って親子とは訳が違うんだし。私は、十五谺も亨も晃も、みんな対等に付き合いたいって、今は本当にそう思う」

 十五谺と和解してからの二十谺も随分と変わってきたように感じる。それは、十五谺に対しての二十谺を、二十谺自身が見つめ直してきた結果なのかもしれない。

「今、自分が至らない、とか気付いても?」

 そこに気付いて二十谺は十五谺の気持ちも理解できたのだろうと思うし、自分も今まさにそういう心境だ。

「それこそ履き違えてるんじゃないの?ってね」

「え?」

 二十谺は二十谺なりに考えて到達した気持ちがある。晃一郎の訊きたいところはまさにそれだ。

「どこで線引きしてんの?それ。誰に対して自分は至らない、と思うの?誰かになりたいの?晃は」

「……そういう訳じゃ、ないんだけど」

 二十谺は自分の内側から、晃一郎に言葉を投げかけてきた。それは、晃一郎がそこからまだ脱していないことに二十谺が気付いているからだ。そしてその二十谺の言葉を晃一郎が欲していることも判っているように思える。

「十五谺に対してそういう気持ちがあるなら、それはちょっとおかしいんじゃない?」

「おかしいって?」

 少し、掴みかけている気はしている。二十谺は十五谺に対して、少々行き過ぎではあったものの、根底では間違っている、正せ、という気持ちを持っていた。だけれど、二十谺は、そんな、頭ごなしに、強い言葉で十五谺に是正を促せるほどに、できた人間なのかと思い悩んだ。

 だけれど、今の二十谺は、何もできていない、立派でもない、ただの人間であることを認めて、それでも、妹に間違ったままではいてほしくない、と望み、十五谺も自分を見つめ直した。

 つまり、真摯な十五谺に対し、今の晃一郎に何ができているのか、など考えても仕方がないということなのだろうか。

「晃が怪我したこととか色んな人に迷惑かけたこととか、そういうの全部ひっくるまっちゃってるんでしょ」

「うぅん、そう、なのかなぁ……」

 確かに、暴行沙汰を起こし、何人もの人に迷惑をかけた。それが晃一郎の不注意であり、責任でもあり、そうしたことに対して十五谺に負い目を感じさせてしまっている自分が不甲斐ないと思っている。だけれど、それらを十五谺のせいにする気など毛頭もないし、やはりあれはどうしたって晃一郎の不注意だ。もっと上手いやりようがあったはずだと、いつもそう思ってしまう。

 だから、この件に対して十五谺が何かを思い悩むようなそぶりを見るたびに、晃一郎の胸も締め付けられるような思いになる。

「あんたが怪我したのは十五谺を庇った結果よ。私としちゃ妹を護ってくれたんだから感謝してる。ライブだって本当のシャガロックの形ではないにしろ、ちゃんとできるんだもの。逆に言えば莉徒りずたちの理解だって得たし、あの子らの気持ちだって本当にありがたかったでしょ?」

 そう、言葉として言われてみれば確かにそういう部分もある。シズや莉徒たち、『Koolクール Lipsリップス』のメンバーの気持ちは本当にありがたかったし、こんなことがなければこういったバンド同士の繋がりもなかったかもしれないのだ。

「うん……」

「晃の影響力なんじゃないのかなぁ、そういうのって」

「俺の?」

 晃一郎一人ではどうにもできなかった。晃一郎一人の力ではない。そう思う。亨も二十谺も十五谺も、一緒になって謝罪に付き合ってくれた。

「私はね、今晃が自分を至らないって思ってようが何だろうが、晃や亨だったからこのバンドに入ったの。晃と亨となら絶対楽しくなりそうだって、思った……。ううん、確信したから」

「それは、ホントに感謝してるよ」

 そういう点では、と思うが、それは晃一郎の曲を叩いてくれている亨の力もある。

「十五谺だってそうでしょ。晃と関わらなきゃ十五谺はもしかしたらずっとバカやってたかもしれない。私も何も気付けないままで、十五谺に、ホントは言っちゃいけないことだって、ずっと言い続けて、私こそが本当の馬鹿だって気付かないままだったかもしれない」

 聡明な二十谺のことだ。きっとそれはない。どこかで気付いていたはずだ。ただ、もしかしたら二十谺がそれに気付いた時に、姉妹の中は致命的なほどに悪くなっている可能性はあったのかもしれないが、そうはならなかった。それこそ机上の空論だ。

「それにシズだって晃の創った曲、気に入ったから手伝ってくれるんだし」

「んー……」

 そういう考え方は驕りなのではないだろうか。いや、二十谺だからこそそういう物の考え方をしても驕らないでいられるのだろう。そしてそこは晃一郎が最も見習うべき点でもあるのかもしれない、と晃一郎は感じた。

 人を惹きつける力というものには確かに個人差はある。そして二十谺は晃一郎のその力は強い、と言ってくれているのだ。そこだけは、有り難く、誇りに思えるようにしたい。

「私は、晃の持ってる何か、って凄いと思うよ。でも晃は一人じゃ何にもできない、って思ってるでしょ」

「う、あ……」

 大した洞察力だ。

「そういうことじゃないのよ」

「うん……?」

 ではどういうことだ、と晃一郎は二十谺の言葉を待つ。

「私がさ、晃と亨とバンドしたいって思ったこと」

「お、う、うん」

 それは、二十谺の行動力。だけれど、晃一郎と亨の出していた空気感や雰囲気が勿論あっただろう。その空気感や雰囲気に馴染めると思ったから二十谺はシャガロックに入ると決めてくれた。

「十五谺がさ、何だかんだ言いながら晃と関わり続けたこと」

「うん……」

 出会いは最悪だったけれど、でも、それでも、切り捨てることはできなかった。二十谺の妹だったこともある。それはシャガロックに入ってくれた二十谺の妹だから、だったのかもしれない。

「莉徒やシズがさ、何か助けになれないかって思ってくれたこと」

「……」

 二十谺が言いたいことは、判ったような気がする。だけれど、そうまで言われてしまうと、それこそ、俺の力だ!などとは口が裂けても言えないし、正直な話、実感値として感じられていない。

「確かに晃一郎が一人ぼっちなら、そうコトは巧く行かなかったでしょ。でも晃のおかげで今があるのよ」

「二十谺の言うことは難しい……」

 照れくさいのでついごまかしてしまった。それこそ、そんなに上等な人間などでは、決してない。

「ふふ。あんたがいたから、私は楽しそうだと思った。あんたがいたから、十五谺は少しずつ変われた。その十五谺を見て、私も自分を見つめ直せた。莉徒もシズも笑って協力を申し出てくれた」

「……そっか」

 観念して晃一郎は頷く。二十谺の言いたいことは判ったが、だとしても自分一人ではそういったことにさえ気付けない。二十谺の言葉も、二十谺の存在も、自分以上に力がある。それは十五谺や亨に関してもそう思えることで。

(そっか……)

 だからこそ、自分一人だけで考え込んではいけないのだろう。お互いに影響し合って、何かが生まれて行く。晃一郎の影響力も、二十谺の存在感も、説得力も。

「ま、十五谺のこともよろしく頼めれば文句ないんだけどね」

「は?」

 二十谺のあまりの言葉に晃一郎は思わず頓狂な声を上げてしまった。話の方向転換が急すぎる。車線変更をするには方向指示器を転倒させてから、が交通ルールだ。こう、方向指示器もなしで急激に車線変更されては、色々危ない。

「え、何あんた、十五谺のこと好きなんじゃないの?」

 ズバリすぎるだろ、と思いはしたものの、それを口に出しても意味はない。

「え、いや……」

「好きなんでしょ?」

「……ハイ」

 やはり二十谺にはばれていた。美人の観察眼は鋭いものだ、と晃一郎は改めて思うと同時に、観念して首を縦に振った。

「ばれてないとでも思ってたら大間違いなのよねー」

 いかにも楽しげに二十谺は笑う。

「……」

「ま、私はお節介はしないから、自分で何とかしなさいよね」

「ワカリマシタ……」

 好き勝手に言ってくれる。が、しかし、晃一郎には返す言葉がない上に、ぐうの音も出ない。

「ともかく、考えすぎたって仕方ないし、あんたらしくないわよ。強気でいきなさいよ」

「……そうだな。ちょっと一気に色んなこと起っちゃって、考えすぎてたかもなぁ」

 二十谺や十五谺と出会ってから、本当に一気に色々なことが起こりすぎた。今まで経験したことがなかった感覚や気持ちや事実。そういったものが一気に晃一郎の中に入ってきて、実は処理できていたと思っていたことが、何も処理されずに残ったままなのかもしれない。

 色々な気を回す前につい十五谺のことを考えてしまうのもきっとそうなのだろう。

「そうね」

「サンキュー。ここは奢らせてもらうわ」

 笑顔の二十谺に晃一郎はそう言ったが、二十谺は首を横に振った。

「十五谺に奢んなさいよ」

「お節介しないんだろ」

「……それもそうね」


 第二十話:アリジゴク 終り

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート