「なぬうう!?」
「ちょっと!?」
友梨香の声と、七絵の声が同時に部室に響く。怜はびくっと肩を上げて後ろを振り向く。
「どうした友梨香? 大きな声を出して」
「え、あ、いや~なんでも……ないで……」
段々と尻すぼみになる様子からはどうみても何でもないことはないのだが……。
「アカンぞ。これはアカン過ぎるぞ……。思った以上に怜ちゃんやばいぞ」
友梨香はぶつぶつとギリギリ聞こえるか聞こえないかの声を出す。正直なところ怜との距離はほとんど0距離なので丸聞こえではあるのが……。
「君たちも入部してくれるのかい?」
「そうそう、それだよそれそれ」
話が全く進まないことにやきもきし始めた由貴は椅子から立ち上がり、怜の隣に移動する。
ベリーショートの子は「そうねえ」と言って少し考えた後、
「最初は断ろうかと思ったけど、あなたみたいな人もいるし、そこで一緒に部活をするのって悪くないから入るわ。よろしく。あたしは郡川詩織。一応、中学の時は陸上で短距離やってたわ。で、横にいるこいつは親友の黒木緑。こっちはバドミントンだったけ?」
詩織の質問に緑は目を大きく開く。
「え、ちょっと待ってしおりん。わたしも入るの?」
「当然よ。だって言ってたじゃない。『高校は別の部活入ろうかなー』って」
「それは文化部的なものを言っていて……」
「いいじゃない! 一緒に野球やりましょうよ。今ならこんなイケメン女子と一緒にいられるなんて最高よ! そこら辺の男どもよりかっこいいし」
緑の肩に手を回してそう耳打ちする。
「いや、別にわたしはそんな趣味は……」
観念したのか緑はため息を吐く。
「しおりんは強引だし、いいや。うん、わたしも入るよよろしくね」
「ああ、よろしく頼む。えっと、私は松浦怜、すでに知っていると思うが、彼女が渡辺友梨香、そして……」
「いや、怜ちゃん全員来てから改めて自己紹介した方がええやろ。んで、あんたはどうするん? 大嶺悠ちゃん?」
詩織たちとのやりとりの間、ずっと黙って携帯をいじっていた悠は名前を呼ばれたのでようやくこちらを一瞥すると、前後左右に頭を動かす。
「ここでウチだけ断るとなんか空気悪くしそうだしいいよー別に」
「まさかの3人ちゃんと入ってくれるなんて……」
由貴はあっけにとられた顔で扉近くの面々をみていた。
そこに友梨香がそっと近づいて、
「多分怜ちゃんの効果がでかいわ。まあ、あとは比較的中学時代の部活に未練がない奴をチョイスしたつもりやったし」
「いやいや、そうは言っても話がとんとん拍子に進みすぎじゃないかな?」
「考えてみー仲間集めで話数稼ぐようなことやってみ、週刊少年ジャンプなら打ち切りやぞ」
「えっと、何を言っているの?」
「で、後は2人だっけ?」
七絵が、友梨香に訪ねる。
「せやな。まあ、片っぽはどうやったんやっけ?」
再び友梨香は由貴の方をみる。
「あー、D組の杉山さんだよね? 元ソフトボール部だったから比較的感触はよかったよ」
「よし、それならええわ。あとはじっくり待ちましょ」
友梨香はニコニコ笑顔でベンチに腰掛けた。
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