「失礼します!」
行儀が悪いがお尻を使って保健室の扉を開ける。
中に入ると養護教諭がこちらを向いた。入学式早々にまさか来るとは思わなかっただろう……。
「あら、どうしたの?」
「彼女が気絶? みたいな感じでして……」
あらあらとおっとりした声で怜の元へ近づいてくると、ぐぐっと背伸びをして抱きかかえているクラスメイトの顔を伺う。
「うーん? どうしたのかしら?」
「いや、そのですね……」
怜もなんと言ったものかと考え込む。
ぶつかって倒れそうになったのを助けたらなぜか目を回したと言ってご理解いただけるだろうか?
「私が教室を出たときに彼女にぶつかってしまって、倒れそうになった彼女を助けたのだが……。そこまではよかったのだが、私の顔をみると雄叫びを上げて……それでこんな感じで」
「はあ~なるほどねえ。とりあえずベッドに運びましょうか?」
それで理解できるってさすがは教師だな。彼女の指示に従ってベッドに寝かせる。
横になったら落ち着いたのか呼吸がなんとなく穏やかになったようだ。
「まあまあ、あなたかっこいいからね。そりゃあびっくりしちゃうわよ」
「かっこ……いい?」
「ええ、そうよ。言われたことない?」
「ううむ……。そう言われると……いやどうだったか?」
確かに中学時代妙に奇声を浴びたような気がする。バレンタインデーの時にはなぜだか気合いの入ったチョコを大量にもらったし。
でもあれは友チョコみたいなものだろう? 違うのか?
怜がうむうむと悩んでいる様子に養護教諭はため息をついた。
「はぁ……。無自覚なのも考えものよ。もう高校生なんだからそこはしっかりしないとだめよ」
「は、はあ……。すみま……せん?」
なぜかわからないが咎められた。本気のお説教というわけではないのだが、教師の言葉ということもあってとりあえず謝ってしまった。納得いかない。
ともあれ、このまま放っておくのも具合が悪いだろうし。
「よっと」
近くにあった椅子を彼女を寝かせたベッドの横まで運びゆっくりと座る。
その様子を不思議そうに見ている教師。
「えっと……何をしてるの?」
「何をって彼女が目を覚ますまで近くにいようと……うわっ!」
教師が怜の両肩を持って前後にゆする。あうあうあう……。怜のふくよかなな胸が上下に揺れる。
「ねえねえ! それ何なのよ! 天然なの? 天然なの?」
登場時のおっとり具合が抜けてしまってる。声の感じは癒やし系なのだが……。
「天然って何のことなんですか?」
本当に彼女の言っていることがわからない!
どうしたものかと困っていると、
「ううん……」
運び出したクラスメイトの声が聞こえた。
「あれ? ここは?」
身体を起こし目をこする。
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