乙女白球

~超乙女級の1番センターと女流ライアン~
totoko
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1年目4月 第12話

公開日時: 2020年9月16日(水) 11:00
文字数:1,899

 なんだかんだがあったが放課後となった。

 二年生、三年生はすでに部活動を開始しており、早速見学をしている一年生もいる。

 で、入学式にて過剰なアピールをしてしまった友梨香の女子野球部はというと……。

 運動部の部室棟の中央辺りに女子野球部の部室はある。去年まで三年生がいたということもあり、それなりに整理はされているものの……。


「思った以上やな」


 備品は最低限ほどしかなく、練習用のボールも大分傷んでいる。ここら辺はやはり弱小校というか、後輩がいなかった部の末路と言ったところだろうか。

 友梨香としてはこれは予想はしていたので対策も用意してはいるが、ちょっと足が出そうだ。


「まあ、去年の夏の大会に出た三年生が引退して、その後誰もいなかったみたいだからね」


 由貴は部室の中央にあるベンチに座って足をばたつかせる。

 おそらくだが、大阪桜陽などの強豪校だと部室ももう少し豪華なはずだろう。専用のプレハブ小屋があり、もしかするとウエイトトレーニングができるエリアとかもあるかもしれない。

 そんな設備はそもそも私立高校ならばだけど、ただの公立高校に求めるのは酷というものか。


「で、なんやけど……」


 友梨香は先ほど感じていた苛立ちを部室までお持ち帰りしていたらしく……。


「いつまでくっついてんねん!!」


 怜の左腕に抱きついている七絵を指さす。七絵はべーと舌を出す。


「え? ずっと?」


「はあ~~?? こーろーすーぞ!」


「怜さん、怖いです!」


 友梨香の癪に障るような猫撫で声を出して七絵は怜の背後に隠れる。

 くう~! と友梨香は拳を握る。


「まあまあ、友梨香、落ち着け。君らしくない」


「なななななななな!」


 何か言おうと思ったが、怜の「仕方がないなあ、この子猫ちゃんは」みたいな表情をみて、言葉を失った。


「それよりも、今現在4人しかいないが、果たして来るだろうか?」


「どうやろな? まあ、ぶっちゃけ事前に来るようには言ってはあるねん」


「そうなのか?」


「まあな。さっきうちが飛び出した時に由貴ちゃんにも協力してもらってな」


「うん、その件なんだけど、どうして友梨香ちゃんは私の電話番号知ってたの?」


「そら、LINEだと怪しがって返事ないかもしれへんし」


「それ答えになっていないような……」


 どうやら友梨香は由貴と共に、他のメンバーの元へ声をかけにはいったらしい。


「私たちのクラスが一番授業が終わるの早かったですからね」


「なるほど、では我々が早く集まっただけか」


「とりあえず座って待つとしよう」


 怜が座るとその左側に七絵が、そして右側には友梨香がぴったりとくっつく。


「そんなにくっつかなくとも……」


「「断る!」」


 二人同時に言ったと思うと、キッ! とにらみ合った。

 やれやれどうしたものか……と怜は困惑する。これから共に全国を目指すのだから仲良くしてほしいのだがな……。

 なんてこれからの野球部を憂いていると開けっぱなしの野球部の部室の扉から声が飛んできた。


「ここが、野球部ね。で、入学式であんなこと言ったあんぽんたんは誰かしら?」


「あー? あーそれウチウチ」


 声の方へ目をやると友梨香が軽く手を上げた。

 そこには三人の少女がいた。

 声を出したのは中央にいるベリーショートの子だろうか、もう少し何か言いたげな表情で腕を組む。

 その右側にいる二つ結びの子は、あまり興味がなさそうな表情で携帯をいじっている。左側にいるめがねの子は突然の剣呑な雰囲気をどうしたものかとベリーショートの子と友梨香を交互にみている。

 ベリーショートの子がずんずんと友梨香の前までやってくる。


「あんたね! おかげで恥ずかしい思いしたわよ!」


「せやけど、ちゃんと素直に来てくれたんやな。サンキューな」


「サンキューなじゃないわよ!! あんたが鬼電しまくるからでしょ!」


 ほらあ! と怜たちに携帯の着信履歴を見せつける。そこには同じ番号から怒濤の着信がきていた。


「うっわ……」


 と言ったのは七絵だ。怜もさすがに口は出していないが、これは少し、怖いな……。


「ほう、よーうちってわかったな?」


「なんとなくよ。こんなことするのはあんたみたいなやつぐらいでしょ? 少なくともあたしの周りにはそんなコいないし」


「そらええ友達をお持ちで」


 だめだこりゃ。友梨香は性格だろう、どうも他人をおちょくる癖がある。この間を取り持つのが多分自分の役割なのかもしれないな。

 怜はすっくと立ち上がると二人の間に割って入る。


「彼女は少々強引な子でな、不快な思いをさせてしまったのなら謝る。すまない」


 そう言って軽く頭を下げる。


「はあ? なによあんた。突然やってきて……しかもめちゃくちゃ背高い……やだ、イケメン」


 ベリーショートの子は怜の顔を見ると嬉しそうな声を出した。

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