乙女白球

~超乙女級の1番センターと女流ライアン~
totoko
totoko

1年目4月 第16話

公開日時: 2020年9月28日(月) 13:21
文字数:1,153

 上杉龍紀、越後学院の一年生。超乙女級のサードと四番の両面りゃんめん選手。


「そして、越後学院のキャプテンや」


「はあ!? 一年生でキャプテン!? しかも4月早々から!?」


 七絵が大声を上げるのも無理はない。龍紀を龍紀たらしめるのはその野球選手としての、センスや実力――ではなく、その圧倒的な存在感、もっと言えばカリスマ性にある。これに関しては友梨香が逆立ちしても敵わない能力だ。

 中学時代からそのカリスマ性から生まれるキャプテンシーを遺憾なく発揮し、チームを牽引してきていた。

 そのため他校の選手からも徹底マークされ続けていた。しかし、それさえもはね除け、活躍した姿についたのが『英雄』である。守備も上手く肩も強い。まさに完璧な選手とは彼女のことだろう。


「それで、なんでこの人が四番なのよ?」


「詩織、それに関しては私が答えよう。四番に求められるのは単純に長打を打てるってだけじゃないんだ。四番は言ってしまえばチームの花形。どんなときでも『彼女ならやってくれるはず』とチーム全員が期待をする。だからこそ、長打も打てれば時にはチームバッティングに徹する。つまりそれぐらい『チームの勝利のために貢献できる』選手が求められるんだ」


「そーいうわけや。せやからフリースインガーのバカではどんなに頑張っても英雄様には敵わへんってことや。ぶっちゃけ、龍紀が入ったことで越後学院の評価は変わるやろうな。一応、新潟の名門ではあったが、一気に全国区、それこそ優勝候補と言われるようになるやろな……」


「確か、上杉さんって中学時代のOPSが1.5ぐらいあったんだよね? 学生野球とはいえめちゃくちゃすごいよ!」

 

 由貴の質問に友梨香もうなずく。


「せやで、あのバカが確か0.9ちょいやったし。そこがあいつが四番になれない理由やな」


「ちなみに友梨香さんは?」


 緑の質問に友梨香は珍しいことでもないように答える。


「ウチ? 1.95」


「な……それは本当なのか!?」


「せやでー。そら中学時代通算打率が七割強だったし、大体そんなもんやろ」


「怜さん、そんなにすごいんですか?」


「すごいってもんじゃない。化け物だよ……」


「怜ちゃんひどいなーこんな美少女を化け物扱いなんて……シクシク」


「わざとらしいわよ。あんた」


 七絵がキッと友梨香をにらむ。


「まあまあ、そんなことはさておいて最後の一人や。こいつは『超乙女級のキャッチャー』。神奈川の横浜女子の一年。ぶっちゃけ野球選手ってよりも別の方でみんなは知ってるはずや」


「えっとー横浜女子高校一年、峰務ほうむシャロ? ってあの峰務シャロ!?」


「おー今までダウナー系だった悠ちゃんも驚くよなークケカッカ!」


 友梨香は独特の笑い声を出すとニヤリとする。


「そ、横浜女子、通称浜女の一年生であり、超乙女級のキャッチャーがその峰務シャロ。みんなご存じ『名探偵』や」

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート