上杉龍紀、越後学院の一年生。超乙女級のサードと四番の両面選手。
「そして、越後学院のキャプテンや」
「はあ!? 一年生でキャプテン!? しかも4月早々から!?」
七絵が大声を上げるのも無理はない。龍紀を龍紀たらしめるのはその野球選手としての、センスや実力――ではなく、その圧倒的な存在感、もっと言えばカリスマ性にある。これに関しては友梨香が逆立ちしても敵わない能力だ。
中学時代からそのカリスマ性から生まれるキャプテンシーを遺憾なく発揮し、チームを牽引してきていた。
そのため他校の選手からも徹底マークされ続けていた。しかし、それさえもはね除け、活躍した姿についたのが『英雄』である。守備も上手く肩も強い。まさに完璧な選手とは彼女のことだろう。
「それで、なんでこの人が四番なのよ?」
「詩織、それに関しては私が答えよう。四番に求められるのは単純に長打を打てるってだけじゃないんだ。四番は言ってしまえばチームの花形。どんなときでも『彼女ならやってくれるはず』とチーム全員が期待をする。だからこそ、長打も打てれば時にはチームバッティングに徹する。つまりそれぐらい『チームの勝利のために貢献できる』選手が求められるんだ」
「そーいうわけや。せやからフリースインガーのバカではどんなに頑張っても英雄様には敵わへんってことや。ぶっちゃけ、龍紀が入ったことで越後学院の評価は変わるやろうな。一応、新潟の名門ではあったが、一気に全国区、それこそ優勝候補と言われるようになるやろな……」
「確か、上杉さんって中学時代のOPSが1.5ぐらいあったんだよね? 学生野球とはいえめちゃくちゃすごいよ!」
由貴の質問に友梨香もうなずく。
「せやで、あのバカが確か0.9ちょいやったし。そこがあいつが四番になれない理由やな」
「ちなみに友梨香さんは?」
緑の質問に友梨香は珍しいことでもないように答える。
「ウチ? 1.95」
「な……それは本当なのか!?」
「せやでー。そら中学時代通算打率が七割強だったし、大体そんなもんやろ」
「怜さん、そんなにすごいんですか?」
「すごいってもんじゃない。化け物だよ……」
「怜ちゃんひどいなーこんな美少女を化け物扱いなんて……シクシク」
「わざとらしいわよ。あんた」
七絵がキッと友梨香をにらむ。
「まあまあ、そんなことはさておいて最後の一人や。こいつは『超乙女級のキャッチャー』。神奈川の横浜女子の一年。ぶっちゃけ野球選手ってよりも別の方でみんなは知ってるはずや」
「えっとー横浜女子高校一年、峰務シャロ? ってあの峰務シャロ!?」
「おー今までダウナー系だった悠ちゃんも驚くよなークケカッカ!」
友梨香は独特の笑い声を出すとニヤリとする。
「そ、横浜女子、通称浜女の一年生であり、超乙女級のキャッチャーがその峰務シャロ。みんなご存じ『名探偵』や」
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