アレックスは、自身の城である玉座にて過去に自分が行ってきた破壊と苦痛を思い出していた。
「すまない・・・。」
彼は、隣国であるヨーパの人々を苦しめ、自国であるジャンの国民にも多く犠牲にしてきたことを悔いていた。
「う・・・、凄い傷だな。俺はここで死ぬのか・・・」
彼の胸には、自身の討伐部隊によって受けた致命的な傷がある。
だいぶ出血をしており、このまま生きながらえることはできないことは明白であった。
「エレナ、デイビット・・・。」
彼らは無事であろうか。討伐隊から逃げ延びているだろうか。
もう彼らには危険が及ばない場所で幸せに生きてほしい。それが俺の最後の願いだった。
しかし、今となっては自分の死を悲しむ人など誰もいないだろう。むしろ喜びを感じていることだろうと、自虐的に考える。
「俺の人生とは一体なんだったんだろうな。」
そうつぶやくと、次第に意識が遠のいていく。
(俺は今まで何をしていたんだろうか)
そんなことを考えるが、もはや答えが出るはずもない。
ただ、心の中で自分の人生について後悔するばかりだった。
「せめて最後にもう一度だけお前に会いたかったよ。」
愛しい女性の顔を思い浮かべる。
彼女はとても美しく聡明で気高い人だった。
彼女さえいれば何もいらなかった。
「こんなことならもっと早く告白しておけばよかったな・・・。」
薄れゆく意識の中、最期の力を振り絞り彼女の名を呼ぶ。
「エレナ・・・。」
そして俺は闇の中に溶けていくような不思議な感覚に包まれて、飲み込まれて消えた。
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