シュウゲンさんが祖父だと分かり、サヨさんとの時間を作ってあげたいと思った私は、お礼を兼ねて食事に誘う事にした。
「シュウゲンさん。薙刀のお礼をしたいので、もしこれから時間があれば食事を一緒にしませんか?」
「あぁ、時間ならたっぷりある。お言葉に甘えて良いかの」
「はい、じゃあいきましょう」
シュウゲンさんは、バールさんへ出掛けてくると言い一緒に店を出た。
店の前で待機していた従魔達に少し驚いていた様子だったけど、奏伯父さんと2人で黄金に乗ってもらい、人がいない場所まで移動してからホームへ移転する。
突然場所が変わり、日本と同じ景色を見た祖父が絶句し固まっていた。
これは私の能力で地球ではないと伝えたけど、初めてホーム内を見た人にはよく理解出来ないかも……。
実家へいくと、母はリビングで寛ぎTVを見ている所だった。
「お母さん。お爺ちゃんが見付かったよ!」
そう言って、シュウゲンさんを母に会わせる。
母は私の言葉に直ぐ反応し、別人になっている祖父を見つめた。
「美佐子、お前の事が心配だった。元気そうで安心したよ」
「……お父さんなの?」
母は震える声でそう言うと、ソファーから立ち上がり祖父の方に歩き出す。
目尻を赤くした祖父が、近付いてきた母をしっかり抱き締めた。
「年を取ったな……」
20代の母しか覚えていない祖父が、現在40代になっている姿を見て漏らす。
「これでも、若くなったのよ。本当は78歳だったんですもの」
言われた内容が分からず、祖父が首を傾げていた。
そんな2人の姿を見ながら、サヨさんが涙を零している。
私はそっと、サヨさんの背中を押してあげた。
「あなた……」
気付いた祖父が、母と一緒にサヨさんを抱き締める。
奏伯父さんは照れ臭いのか、その輪には入らず見守っているようだ。
暫くそっとしてあげようと、私達はダイニングへ移る。
祖父は私が小さな頃、亡くなってしまったから記憶にない。
好きな食べ物も分からないけど、和食が良いだろうと食事の準備を始めた。
その間に『手紙』を読んでもらい、父から事情を説明してくれるようお願いする。
さて、私は何を作ろうかな?
異世界では海産物が食べられないから、魚料理がいいだろうか?
鰤の煮付け、鮎の塩焼き、刺身の盛り合わせ、帆立のバター焼き、鰻の蒲焼と肝焼き、法蓮草の胡麻和え、きんぴらごぼう、だし巻きに、あさりの味噌汁。
後は新米が炊きあがれば完成。
奏伯父さんも、自分の家族を紹介している。
娘が日本人の記憶を持ち、前世で産んだ息子と娘がいると聞いた祖父が少し混乱しているみたいね。
同じ年の雫ちゃんと、年上の旭を見たら当然か……。
料理が出来上がり、皆で食事をする。
テーブル一杯に並べられた料理を、シュウゲンさんが「これが食べたかったんじゃ」と言いながら猛然と食べだした。
ご飯を何度もお代わりし、その体格に似合う健啖家ぶりを発揮。
久し振りの日本食に舌鼓を打っていた。
食後のほうじ茶を飲んで一息した頃、気になっていた事を尋ねてみる。
「シュウゲンさんは、何歳なんですか?」
「572歳だ。ドワーフは長命な種族じゃからの。小夜は人族か……」
「あっ、Lv上げをしている所なので長生き出来ますよ!」
あまり長く一緒にいられないと思ったのか、寂しそうな表情をする祖父へ教えてあげた。
「それは良い! Lv100くらいまで上げてくれ!」
いや、それは少し難しいです。
「私は78歳なんですよ。無理を言わないで下さいな。それに、もう充分長生きしました。今の夫との間には息子も孫もいるんです」
「そうか……。そうじゃろうな、儂はずっと独身であったが……」
うん?
「バールさんは、息子じゃないんですか?」
「ありゃ、只の弟子だ」
親父って……、呼び方が紛らわしいわ!
ずっと独身だったと聞き、サヨさんが少し気まずそうになってしまった。
お互い亡くなった後の人生なので、浮気ではないけど……。
元夫婦が再会すると色々ありそう。
奏伯父さんとリュートさんは、もっと複雑だろうなぁ。
既に家族がいれば、一緒になれる訳じゃない。
雫ちゃんのお母さんは、異世界で結婚してなくて良かった。
樹おじさんを召喚しても問題ないからね。
誰か付き合っている人がいたら、修羅場になりそうだったよ。
両親は同時に召喚したし、もう直ぐ香織ちゃんも生まれる。
うちは大丈夫だ。
結婚と言えば……。
「兄も彼と結婚してるんですよ」
まだ知らないかもと思い伝えると、聞いた祖父が口からお茶を吹き出した。
最初が肝心だと、相手が旭であると教え反対されないよう牽制する。
孫同士が結婚しても、血の繋がりはない。
序に私の結婚報告をしておこう。
兄達の結婚の衝撃が薄れるだろう。
「ちなみに私は、もう直ぐ結婚します。相手は再婚なので、5人の子持ちになっちゃいますが……」
それを聞いた祖父が、身を乗り出し相手に会いたいと言う。
ガーグ老に会わせたら、また手合わせが始まりそうだけど……。
父が私の結婚は、アシュカナ帝国の王に狙われているための偽装結婚だと伝え安心させている。
でも帝国の王から9番目の妻へと望まれていると知り、祖父の不安は増したみたいだ。
「やはり、一度会わせてくれ。孫を守れる男か見極めたい」
あ~、それは……。
サヨさんと奏伯父さんと母が苦笑している。
もしかして、祖父も武闘派だったりするのだろうか?
ふと、カエルの子はカエルという言葉を思い出した。
ポイントを押して下さった方、ブックマークを登録して下さった方、作品を応援して下さった方。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。
これからもよろしくお願いします。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!