【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第664話 迷宮都市 武術稽古 セイさんとガーグ老の手合わせ

公開日時: 2024年1月13日(土) 12:05
更新日時: 2024年5月6日(月) 11:53
文字数:2,028

 子供達の演奏を聴いた後、今日は母親達が子供達と残ると言うので私達はガーグ老の工房へ向かう。

 山吹やまぶきには旭とシュウゲンさんが騎乗しているため、セイさんは私と一緒にシルバーへ乗ってもらった。

 パーティーメンバーが1人増えたので、従魔が足りないなぁ。

 稽古が終わったら、兄にセイさんの従魔をテイムする相談をしてみよう。


 工房へ到着し中に入ると、ポチとタマにガルム達が飛んでくる。

 2匹の白ふくろういつきおじさんの両肩に乗り定位置に止まると、ご機嫌な様子で体を揺らしていた。

 体の大きい10匹のガルちゃん達は、私の周囲に群がり良い子にしていたのをめてと言っているみたい。

 1匹ずつ頭をでてあげると交代し下がっていく。


「こんにちは~。今日も、よろしくお願いします」


「おお、サラ……ちゃんが来てくれたか! うむ、昼食は期待出来そうだわ」


 先週は子供達に楽器の演奏を教えていたから稽古に参加出来ず、しずくちゃんのお母さんが作った激甘カレーを食べさせられたガーグ老は、私の姿を見て安心したようだ。


「新しいメンバーを紹介しますね。セイさん、私の結婚相手のガーグ老です」


「えっ! このご老人が?」


 ガーグ老が結婚相手と知りセイさんの目付きが変わる。


「セイと申します。摩天楼まてんろうのダンジョンで冒険者をしていました。是非ぜひ一度、手合わせをお願いします」


「ほう、儂は若い者には負けんぞ」


 私は突然仕合を申し込むセイさんへ、ガーグ老は王族の護衛をしていた騎士だった事を小声で話す。

 普段は魔法メインで攻略をする姿しか見ていないから、心配になったのだ。

 セイさんは大丈夫ですと笑顔で言いマジックバッグから、その小柄な体躯たいくに似合わない大槍を取り出す。

 私は初めて見るセイさんの武器に驚いてしまう。

 まるでケンタウロスが持っている突撃槍のようだ。

 セイさんの得物えものを見たシュウゲンさんとかなで伯父さん、そしてガーグ老が感心したように息を吐く。


 大槍を扱うには相応の体力と腕力が必要になる。

 見た目が華奢きゃしゃなセイさんの武器としては、合わないような気がするんだけど……。

 ガーグ老が三男のキースさんから槍を受け取り、物騒な笑みを浮かべ仕合が始まった。


「では、お相手致そう!」

   

 唐突に始まった仕合を私達は見守る。

 ガーグ老の強さを知っているだけに、ハラハラするよ!

 2人は一度大きく距離を取った後、一気に肉薄し槍を交わす。

 武器同士がぶつかる鈍い音が響き渡った。

 この一撃でセイさんは打ち負けるかと思いきや、その後ガーグ老と何度も槍を交わし続けている。

 思った以上に、セイさんはやるらしい。


 武闘派のシュウゲンさんと奏伯父さんは、2人の様子を興味深く見ているようだ。

 伯父さんと一緒にパーティーを組んでいた時、セイさんは槍を使用しなかったんだろうか?

 10分後、勝負が付かない2人の間に入った長男のゼンさんが、終了の合図を告げる。

 予想とは違い、引き分けとなった結果にメンバー全員が驚いていた。


「セイとやら、お主はシュウゲンと同族か?」


「いえ、私はドワーフではありません」


「人族には有り得ん腕力だな。サラ……ちゃんのパーティーに強い者が入るのは喜ばしい。これからも精進しょうじん致せ」


「はい。手合わせ頂き、ありがとうございました」


 セイさんはガーグ老へ深く一礼し戻ってきた。

 

「セイさん、すごいですね~。ガーグ老と引き分けるなんて驚きました!」


 その技量を素直に称賛すると、


「私は護衛隊長ですから、負ける訳にはいきません」


 にっこり笑って意味不明な返事をされる。

 冒険者なのに、誰かの護衛をしていた経験があるのだろうか?

 日本では父の後輩だと言っていたから銀行マンだったはず

 異世界に転移後は、迷宮都市と摩天楼のダンジョンを攻略していただけだと思う。

 銀行マンだった父と同様、もしかして家族に言えない仕事をしていたの? 再び父の職業に疑問を感じてしまった。


 それから樹おじさんとセイさんが私の稽古相手になり、槍術がLv10になったと伝えると2人が褒めてくれた。

 2人を相手にした稽古は防戦一方になり面白くない。

 こちらも数を増やそう! シルバーを呼んで連携するとすきが生まれた。

 今だ! 樹おじさんに踊り掛かり槍を突き出す。

 勝ちを確信した瞬間、私の槍はかわされ空を切った。


 Lvは私の方が高いのに、樹おじさんの方が速度は上なのか……。

 悔しくなってフォレストと泰雅たいがを追加投入したら、そりゃ反則だと怒られた。

 ちぇっ、たまには勝たせてくれてもいいのに~。

 従魔達は私の戦力だから卑怯ひきょうじゃないよ?

 黄金こがね山吹やまぶきは待機させてるじゃん。

 

 2時間後、ガーグ老が終了の合図を告げ稽古は終了。

 今日もシュウゲンさんとガーグ老、奏伯父さんとゼンさんの勝負は着かなかったらしい。

 奏伯父さんが残念そうにしている。

 私は昼食を作りながら、午後から何の魔物をテイムしようかなと考えていた。

 迷宮タイガーは2匹なので、同じ種族を増やしてあげた方がいいかしら?

 それにしても、おすしかテイム出来ないのは何とかならないものか……。

 これじゃつがいがいないから、子狼も子虎も生まれないよ~。

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